【感想・ネタバレ】それは誠のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

たった1日の冒険。離婚して離れてしまったおじさんに会いにいく。東京への修学旅行のグループ自由行動の1日、主人公の誠の計画はちょっとずつ固まっていく。グループ行動となるため、GPS携帯を支給される中で1人だけ抜けるという計画は、いつしか、男友達2人が参加し、さらに女子の協力も得て、みんなのプロジェクトになっていく。
友情を知らない、愛を知らない、そういう孤独な子供の心と、どこかで友達が欲しい、でも近づけば傷付く、そんな微妙な感情が入り混じる。青春の一幕は、そういう愛憎も交えながら進んでいくものだ。
 最後に出会えたおじさんには、女がいた。それでも伝えたいメッセージは、ありがとうだったんだと思う。色々辛いことがあったけど、大好きなんだということを伝えたかったんだと。そして、おじさんからのメッセージは、友達経由できく事になるのだけれど、すごくあったかくて、でも絶望的で、友達との友情が何よりの戦利品だったということだ。
 自分自身の修学旅行でも、その当時の彼女とTシャツをこっそり合わせてみたりとか、2人で抜け出したりとか、そういうことってしたけれど、そのスリルが最高に青春だったんだと思い出した。本筋とは異なるが、甘酸っぱい思い出を改めて思い起こさせてくれて、ありがとうと言いたい。
 読者にはちょっと難しいリズム感なのが特徴で、文体は少しねっとりした、テンポを変えながら進んでいく。イライラだったり、熱くなったり、そういう感情がないような日記のような進め方に違和感を感じていたが、最後はなんで文章に認めることにしたんだろうか、そんな疑問を爽やかにまとめてくれる良作。

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2023年09月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ずっと青春が襲ってきて苦しくなる本だった。
あの時のどうにもならなくて、狭い社会でやりくりして、クラスメイトと仲良くなる瞬間。
クラス、ってすごく不思議で社会に出ると同い年の人と出会う方が珍しい。同じクラスにいるってだけで、一生話しかけなかった人と仲良くなる運命みたいな出来事のことを思い出した。読んでよかったー!と心から思える話。あとキャッチャーインザライも、読まず嫌いせずに頑張ろうかなと思えた。

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2024年06月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

芥川賞ものだけに導入部分が、ああ、文学小説だなと読もうというエンジンがかからなかったが、内容は難しいながらも文面は知的な表現で癪に障ることなく登場人物の生活感を感じさせてくれた。主人公の設定がよくわからず、文中の登場人物も、”お前こんな奴だっけ?”みたいなことを言われており、ほんとそうだと思った。ちょっとぶっ飛んでない?
日常の中のちょっとした非日常を活き活きと描写される高校生の姿がまぶしい作品だった。
で、実際内容はどうかと聞かれたら、”やっぱり芥川賞はこんなもんなんでしょう”と締めくくる。エンターテイメントではない。

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2023年12月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すごく優しい高校生たちの話だった。
両親のいない僕は、かつて自分を引き取ろうとしていた叔父に会うため、修学旅行の班別行動で一人抜け出して日野へ向かうことを画策する。同じ班の男子たちが行動を共にし、女子たちの協力も得て、先生にバレずに叔父との再会を果たす。というのが筋だけれど、社会的には弱者と呼ばれる人々に、過度な気遣いをせずに接することのできるこの高校生たちはすばらしい。この、というより、一般に大人よりも、弱い人々の友であるのは子どもたちだと思った。吃音の松や叔父を労わりつつ差別せずに扱ったり、孤児である僕を変に哀れまずにフラットに接したり。自分の特待が解除されないかばかり気にしているような蔵並も、知恵を駆使して僕が叔父を待つ時間を捻り出す。そのチームプレイの積み重ねが胸熱だし、この旅行中できるだけたくさん僕の笑顔の写真を撮った方が勝ち、というこの三班の隠れたゲームも、優しさあふれたものじゃなかろうか。吃音で結婚できないから誠を引き取ろうとしてると邪推されて家を出た叔父にも彼女がいてよかった。その叔父が、来てくれてありがとうと言っていたというのは本当なのか、三班メンバーの優しいフォローなような気もする。
高村先生と話した、もし子どもが溺れたら助けてやることはできないけど一緒に溺れる、っていう宮沢賢治の話は象徴的で、溺れている僕に同行して叔父に会いについてきてくれる男子たちは一緒に溺れているのだし、そして一緒に集合時間に遅れて一芝居打つ三班メンバーも一緒に溺れているのだし、それによって誠は助けられているのだ。とにかく優しい話。
「本物の読書家」や「未熟な同感者」でも、書くということの形而上的意味を考察していた感じがしたけれど、今回も易しい形で所々触れられていた。

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2023年08月02日

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