乗代雄介のレビュー一覧

  • 旅する練習
    練習の対義語は本番という言葉になると思うけど、僕たちの毎日、おおさげに云うと人生には、練習と本番なんていう区別はないのだと思う。
    もちろん大切な一日、重要な決定をする局面というのはあると思うけど、何をしても時計の針は戻らないしセーブポイントからリスタートできるわけもなく、僕たちが常に1回きりの時間を...続きを読む
  • それは誠
    溺れている人がいたら、一緒に溺れてやろう。
    一緒に溺れてやろうって考えながら生きることは、どういう意味があるのか。
    溺れゆく1人に、一緒に溺れてやろうって6人。
    そこにあるのは優しさ?友情?
    そんなたいそうなものじゃなくて、ちょっとした相手への興味と、自分への興味なだけかもしれない。
  • それは誠
    共に旅する友達でも他人でもない絶妙な距離感のクラスメイトたち。甘くて酸っぱいひそやかな恋心。家族と社会への諦観などなど、田舎の高校の空気感だったり、思春期の心の機微なんかが一人称の繊細な筆致で鮮やかに描き出されていて、ほうっと溜息が出た。たくさん小説を読んでいるわけでない自分でも、「上手いっ!!」と...続きを読む
  • 旅する練習
    王道の感動もの。
    歩いて鹿島まで行くという、夜のピクニックと似た話ではあるものの中身は完全な別物。
    小学生の姪の天真爛漫で子供から色々を学ぶ大人の構図や、鳥にまつわる数々のエピソード。
    文章が全体としてまとまってつながりがあり、とても読みやすかった。文量もちょうどいい。
    途中からシリアス感もあり、気...続きを読む
  • それは誠
    素敵!!爽やか!!
    登場人物みんながとても素敵であんなクラスがあったら幸せだろうなぁ。3班のらみんなも先生もなんて素敵なんやろう。
    一緒に修学旅行に行って一緒におじさんを待ってる気持ちになる位引き込まれる。
    松くんがまた素敵で、松くんのお母さんも素敵。
    落ち葉の描写が綺麗過ぎて、本を読みながらもキラ...続きを読む
  • それは誠
    冴えない立場の高校生がちょっとした冒険で友情を見つける物語。ラインは交換しなくても少しづつ友達になっていく感覚が愛おしい。
  • それは誠
    たった1日の冒険。離婚して離れてしまったおじさんに会いにいく。東京への修学旅行のグループ自由行動の1日、主人公の誠の計画はちょっとずつ固まっていく。グループ行動となるため、GPS携帯を支給される中で1人だけ抜けるという計画は、いつしか、男友達2人が参加し、さらに女子の協力も得て、みんなのプロジェクト...続きを読む
  • それは誠
    とてもよかった!!世間を少し斜めから構えて見ている青年。本当に日常のやり取りの描写、東京修学旅行の思い出。忘れられない一日。
  • それは誠
    乗代さん、やっぱりめちゃくちゃ好きかも…
    去年読んだ『パパイヤ・ママイヤ』は、実は去年のベスト3として本屋大賞に応募したんだけど、この作品も、青春のまばゆさが溢れていてすごく好き。

    高2の佐田くんの、東京への修学旅行の手記。
    もったいをつけるような、照れ隠しのような、本当はとても大事に思っているこ...続きを読む
  • それは誠
    修学旅行の思い出を綴る誠の文章を通して
    冒頭のただの文字の羅列だった7人の名前が、自分の友人の如く圧倒的に其々の色を持つようになる。書き手の筆力の凄まじさを感じるとともに、書く行為が自己と向き合う究極の手段となった誠の生い立ちの切実さを感じました。
  • パパイヤ・ママイヤ
    いまここにいる相手が、自分と一緒にいない時の姿を想像する。

    もしくは、

    いまここにいない相手が、自分と一緒にいる時の姿を想像する。

    または、

    かつてはいて、いまはもういなくて、おそらくこれから先も会うことのない相手の姿を想像する。
  • それは誠
    スリルある冒険譚に緊張感が張り詰める場面もある中、青春真っ只中に感情の機微にほっこりと感動もさせられ、色んな感情が湧き出てきた。あくまで主人公が「書くこと」を通じて物語が語られる乗代雄介らしさも凄く良い味を出してして、余韻の残る読後感も爽やかで凄く心地よかった。名作。
  • 十七八より
    そういえば、私も少女だった!いまもなお、ふとした時にあらわれて、平凡なおばさんになった私を苦しめます(笑)読んでいて気持ち良すぎてびっくりした。とてもすき。ありがとう。
  • 皆のあらばしり
    学者の精神はもちろん最後の青年と謎の男の関係性に心打たれる。そして最初の1文から読み終わる最後まで、乗代さんの文章は心地良い。
  • パパイヤ・ママイヤ
    奇跡みたいに出会って
    奇跡みたいな時間を過ごすひと夏
    17の2人がすごく生々しく描かれていて
    私の周りにもこんな子いたかもと思ってしまうけど
    彼女たちはそれぞれ重いものを抱えている
    それでも軽やかに生きるふたりが
    すごく眩しかった
  • パパイヤ・ママイヤ
    時間だけが途方もなくあったあの頃。
    学校でも親の前でも見せない、ここだけの自分。 17歳の彼女たちの夏が、まるで自分の記憶のように立ち昇ってきました。

    ああ、私にも、誰にもきっと、こんな永遠みたいな夏があった。
    大人になる前に越えていかないといけない、自分を知る時間。
    美しい小櫃川河口干潟を背景に...続きを読む
  • 皆のあらばしり
    歴史の隙間に落っこちてしまっている様な物に調査と推理で迫っていく過程はとんでもなくスリリング。
    ラストも痛快。
    ゆかりのある地名も多く、より楽しめた。
  • 皆のあらばしり
    スィングする「会話」は、いつだって「未知との遭遇」であり「終わりのない振幅運動」であり、「自分自身ドライバー」である、と思いました。謎の饒舌な大阪弁中年男と地元史に興味のある高校生という不思議な組み合わせの二人の会話で、ほぼほぼ進行していく物語です。二人は、先生と生徒であり、師匠と弟子であり、ホーム...続きを読む
  • 皆のあらばしり
    栃木の歴史を辿りながら、謎の本、皆のあらばしり、の跡を追うストーリー。歴史研究部に所属する高校生の主人公に、ある日皆川城址で変な中年のおじさんに出会う。異常なほど史実に精通し、酒造がもつ世に出ていない幻の書物の存在を知っている。怪しげなおじさんを疑いながらも、少しずつ距離を縮めながら、そのプロジェク...続きを読む
  • 皆のあらばしり
    随分と昔に読んだ井沢元彦の「猿丸幻視行」のことを思い出した。正史には上がらない秘された柿本人麻呂の死と猿丸太夫の関係、その隠された謎を連綿と守り続ける人々、そしてもちろんその謎を追う主人公、という話。史実と創作の巧みな交錯に嵌まった記憶がある。何故そんな昔のことを引き合いに出すかと言えば、この「皆の...続きを読む