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Posted by ブクログ
⚫︎受け取ったメッセージ、感想
「旅する練習」が比較的評価が高い印象の作者だが、私はなんとなく好きになれないままだったが、こちらの「本物の読書家」を読んで、著者の考えがわかったような気がして、「旅する練習」の結末があのような形なのも、なんとなく理解でき、読んで良かったと思った。
著者は、書くこととは?読むこととは?を丁寧に探っていることが伺えた。書かれた作品がうまれた背景(事実)、著者を通して書かれる本物(真実)とのバランスについて思いを馳せることができた。
「本物の読書家」「未熟な同感者」ともに、書かれた作品を通して、事実と真実の乖離の間にこそ、作品は生まれるのだということを改めて思った。
「本物の読書家」では、ミステリー仕立てで読者を引き込みつつ、種明かしの推察あり、主人公は作者なのか?いや、ここに書いてあること自体すでに創作物だし…と何十もの入れ子状態で、なんとも面白い作品だった。
「本物の読書家」キーフレーズ
・「事実は小説より奇なり」
・ナボコフの引用 狼が来た
・カフカの引用 彼女を愛していて、話すことができない。彼女を待ち伏せるのも、彼女と出会わないためである。
・マーク・トウェインの引用 たしかに、事実は小説より奇なり、である。だが、それは小説というものが、本当にそんなことがあり得るかどうかを無視できないからである。その点、事実は違う、ありえるかどうかなど問題ではない。実際に起こっているのだから。
⚫︎本概要より転載
老人ホームに向かう独り身の大叔父に同行しての数時間の旅。大叔父には川端康成からの手紙を持っているという噂があった。同じ車両に乗り合わせた謎の男に、私の心は掻き乱されていく。大変な読書家らしい男にのせられ、大叔父が明かした驚くべき秘密とは。――「本物の読書家」
なりゆきで入った「先生」のゼミで、私は美少女・間村季那と知り合う。サリンジャー、フローベール、宮沢賢治らを巡る先生の文学講義、季那との関係、そして先生には奇妙な噂が……。たくらみに満ちた引用のコラージュとストーリーが交錯する意欲作。――「未熟な同感者」
Posted by ブクログ
本書は、2015年にデビューした新鋭による2冊目の書物である。2018年本作「本物の読書家」で野間文芸新人賞受賞。2019年、2021年芥川賞候補。
表題作「本物の読書家」では、語り手の「わたし」が、独り身の大叔父を茨城県の高萩にある老人ホームに入居させるため、上野から電車で同行する。車中で二人はあやしげな大阪弁の男と出会う。この男が開陳する文学関連のマニアックな知識に反応する読書家の「わたし」と大叔父。やがて大叔父の口から、信じがたい秘密が告げられる。
川端康成の名作「片腕」を本当に書いたのは自分だ、という大叔父の主張を、小説外の事実として認める読者はいないだろう。文豪川端康成の伝説から実際に起こり得そうな設定で、川端作品「片腕」の虚構性と作品制作上の伝説と作者乗代雄介のこの小説「本物の読書家」の虚構が混ざって少し複雑な構造になっている。
大阪弁の男が冒頭から千原ジュニアが話しているような錯覚に陥る。文学があり、文学知識があり、お笑いがありで楽しい。
後半の作品「未熟な同感者」も文学論を戦わせる。しかしながら、作家のサリンジャーを中心に展開される文学論がわかりづらい。中心となる文学論と並行してサブストーリーとして大学三年生のゼミでの人間模様が描かれる。主人公の阿佐美、超美人の間村季那、男の野津田慎吾、野津田のことが好きな道中あかり、変態かもしれないと描かれるゼミの准教授が登場する。主人公が女性だと判明した瞬間意表を突かれた。また間村のビンタの描写も圧巻。
小説のジャンルではエンタメ小説ではなく純文学になるけれども、純文学ではこういう楽しみ方があるよということを示してくれる本作品は貴重だと思う。有名な文豪の引用が出てくる本書は本好きな人には好まれるのではないか。乗代雄介の他の作品を読んでみたくなった。
Posted by ブクログ
「皆のあらばしり」で今年気になる作家NO.1になった乗代雄介。次は「旅する練習」を開こうと思いつつ目の前に文庫が次々現れてたどり着けません。前回は「十七八より」。今回は「本物の読書家」。今度の文庫は「本物の読書家」と「未熟な同感者」の二編が収録されていました。単行本の時も同じ構成かな?先ずは「本物の読書家」。登場人物の関西弁の饒舌な男、これ「皆のあらばしり」のあの男の再登場?とびっくり!いや「本物の読書家」の方が先に書かれているので「皆のあらばしり」の方が再登場か…さらには「未熟な同感者」の一人称の女子も「十七八より」の高校生が大学生になった感じ。アセチレン・ランプ、スカンク草井などのような手塚治虫スターシステムをこの作家は小説にも援用しているのでは、と思いました。そして扱うテーマも「本物の読書家」の偽書とか、「未熟な同感者」の読むことと書くことの一体化とかだったり、前に読んだ主題を繰り返しているよう。物語を読むってこと物語を書くってことの不思議な関係にこだわりまくっているのが乗代雄介なのかな、と3冊目でうっすら感じました。そういう意味では「本物の読書家」「未熟な同感者」って小説のタイトルというより作者の2大アンセムなのでは?他の誰からも得られない読書体験を得ています。
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「本物の読書家」
自分の「徒党」の中に居る好かない奴ほど始末に困るものはない。それは一生、自分を憂鬱にする種だということを私は知っているのである。
新しい徒党の形式、それは仲間同士、公然と裏切るところからはじまるかもしれない。
友情。信頼。私は、それを「徒党」の中に見たことが無い。
作中にも引用される太宰によって紡がれた言葉。
この言葉や、その元の文を知れたことだけでも、この本を読んだ価値がある。読書とはそういうものだと思う。何か一つでも自分の中に残り続けるようなものを探しに行く旅である。それは孤の旅でないといけないとも思う。
しかしながら本作からの恵みが、それだけで終わるはずもない。本作を読む私は、全てが、乗代雄介さんの思惑通りに動きをやめないデッサン人形であっただろう。その構成に、その文章に、その結末に、私は全ての罠という罠に引っ掛かった。だからこそ私は本作が最高であると言い続ける。そして、全てに引っ掛かることができたという如何にも傲慢な思考と認識を、再度読み返した暁には、語り手に、歴代の文豪の言葉に刺される。そこまでが私の好み。
そんな私は、「息苦しさ、呼吸が速くなる、胸部の圧迫感、パニックになる」などなどの症状をもたらされた。周りに人がいる学内の憩いのスペースにて。1人用の席に腰掛け本を開いていた。
Posted by ブクログ
難しながらも面白かった。謎の男と大叔父が最後帰ってっこなかったとなったときは普通に「えっ!?」て声が出た。この「えっ」の出方は『旅をする練習』のときにもあった。どんな意味があったんだろ?てきなことを考えるのも楽しい。
続く「未熟な同感者」では言ってることが難しい部分も多く(引用が多くある)いったりきたりを繰り返すもやっぱり分からないことも。でも今はそのままにしてもよくて、後で読み返したときに少し近づけるかもしれないという期待もありつつ、再読しつづけたい作品だなと思った。読むことと書くことが一緒になることを完全な同感者というなら自分はずっと未熟な同感者だ。そもそも完全な同感者になりえるのか?という疑問ももちつつ・・・。とにかく読み終わった後この作品について色々と考えてしまう読み応えのある一冊でした。
Posted by ブクログ
乗代雄介『本物の読書家』講談社文庫。
表題作と『未熟な同感者』を収録した純文学中編小説集。古今東西の文学からの引用の数珠つなぎと知識の洪水。表題作は辛うじてストーリーを辿ることが出来るのだが、『未熟な同感者』はギブアップせざるを得ない。
『本物の読書家』。古今東西の作家や文学に関する豊富な知識の渦とその中に隠された川端康成からの手紙を巡るミステリーという面白さ。川端康成からの手紙を後生大事に持っていると言われる大叔父上を老人ホームに送り届ける役目を任された主人公。高萩に向かう常磐線の車内で関西弁で話し掛けて来た奇妙な男と遭遇する。読書家を自認する主人公と読書に関する様々な知識をひけらかす関西弁の男の知と知の激闘の行方は……★★★★
『未熟な同感者』。こちらも古今東西の文学が数珠つなぎに描かれるが、大学を舞台にしたストーリーが今一つ掴めない。宮沢賢治に二葉亭四迷、サリンジャー、夏目漱石、カフカ、ナボコフ……名だたる作家の作品の引用と知識の洪水。ある意味、読者を煙に巻いたような作品。頭の悪い自分には理解不能。★★
定価748円
★★★
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