乗代雄介のレビュー一覧
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本書は、2015年にデビューした新鋭による2冊目の書物である。2018年本作「本物の読書家」で野間文芸新人賞受賞。2019年、2021年芥川賞候補。
表題作「本物の読書家」では、語り手の「わたし」が、独り身の大叔父を茨城県の高萩にある老人ホームに入居させるため、上野から電車で同行する。車中で二人はあやしげな大阪弁の男と出会う。この男が開陳する文学関連のマニアックな知識に反応する読書家の「わたし」と大叔父。やがて大叔父の口から、信じがたい秘密が告げられる。
川端康成の名作「片腕」を本当に書いたのは自分だ、という大叔父の主張を、小説外の事実として認める読者はいないだろう。文豪川端康成の伝説から実際に起こり得そうな設定で、川端作品「片腕」の虚構性と作品制作上の伝説と作者乗代雄介のこの小説「本物の読書家」の虚構が混ざって少し複雑な構造になっている。
大阪弁の男が冒頭から千原ジュニアが話しているような錯覚に陥る。文学があり、文学知識があり、お笑いがありで楽しい。
後半の作品「未熟な同感者」も文学論を戦わせる。しかしながら、作家のサリンジャーを中心に展開される文学論がわかりづらい。中心となる文学論と並行してサブストーリーとして大学三年生のゼミでの人間模様が描かれる。主人公の阿佐美、超美人の間村季那、男の野津田慎吾、野津田のことが好きな道中あかり、変態かもしれないと描かれるゼミの准教授が登場する。主人公が女性だと判明した瞬間意表を突かれた。また間村のビンタの描写も圧巻。
小説のジャンルではエンタメ小説ではなく純文学になるけれども、純文学ではこういう楽しみ方があるよということを示してくれる本作品は貴重だと思う。有名な文豪の引用が出てくる本書は本好きな人には好まれるのではないか。乗代雄介の他の作品を読んでみたくなった。 -
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ネタバレ「本物の読書家」と「未熟な同感者」の二篇収録。
相変わらず難解。でも個人的には「読んでて分からないけれど楽しい」作家さんでもあります。話として面白かったのは「本物の読書家」で好きなのは「未熟な同感者」でした。「未熟な同感者」は少し百合ですね。
「本物の読書家」
老人ホームに入る大叔父上に最寄り駅まで同行する主人公は大阪弁の読書家と相席になる。川端康成の『片腕』が出てきます。既読で良かった…。
主人公の自意識過剰っぷりに「ちょっと落ち着いて」と言いたくなりました(笑)
『ロリータ』を2月に読む予定なので楽しみです。
「未熟な同感者」
こちらは頻繁に引用されるサリンジャーをまったく読んでいないので内容理解は今ひとつどころではなかったです(汗)大学生4人の仲いいんだか良くないんだかあやふやな関係性が良かったです。
書くことと読むこと、書き手と読み手の在り方が書かれている部分が難解ながらも面白かった。
著者の『皆のあらばしり』と今回の「本物の読書家」に出てくるコテコテの大阪弁口調のおっさんというのが私はどうにも苦手で…。関西に生まれ育ち、50年近く生きていてここまでコテコテの関西弁を使う人に出会ったのは2回だけ。呼びかけに「あんさん」を使う人には出会ったことがないです。漫才っぽく聞こえてしまいます(;´∀`) -
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「皆のあらばしり」で今年気になる作家NO.1になった乗代雄介。次は「旅する練習」を開こうと思いつつ目の前に文庫が次々現れてたどり着けません。前回は「十七八より」。今回は「本物の読書家」。今度の文庫は「本物の読書家」と「未熟な同感者」の二編が収録されていました。単行本の時も同じ構成かな?先ずは「本物の読書家」。登場人物の関西弁の饒舌な男、これ「皆のあらばしり」のあの男の再登場?とびっくり!いや「本物の読書家」の方が先に書かれているので「皆のあらばしり」の方が再登場か…さらには「未熟な同感者」の一人称の女子も「十七八より」の高校生が大学生になった感じ。アセチレン・ランプ、スカンク草井などのような手塚治虫スターシステムをこの作家は小説にも援用しているのでは、と思いました。そして扱うテーマも「本物の読書家」の偽書とか、「未熟な同感者」の読むことと書くことの一体化とかだったり、前に読んだ主題を繰り返しているよう。物語を読むってこと物語を書くってことの不思議な関係にこだわりまくっているのが乗代雄介なのかな、と3冊目でうっすら感じました。そういう意味では「本物の読書家」「未熟な同感者」って小説のタイトルというより作者の2大アンセムなのでは?他の誰からも得られない読書体験を得ています。
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「ミック・エイバリーのアンダーパンツ」で果てしのない饒舌さに挫折し、「皆のあらしばり」を会話の応酬の末のストーリを堪能し、なんだか知らないうちに気になる作家No.1になってしまった乗代雄介。次なるターゲットは「旅する練習」と決めていましたが、文庫でデビュー作を見つけ、途中下車読書しました。第58回群像新人文学賞受賞の作品ということです。デビュー作には、その作家の特質がすべて込められている、と誰かが言っていたような、言っていなかったような…しかし、この「十七八より」には乗代雄介の作家としての文学観が決意表明として表されているような気がしました。(すいません、読み始めたばっかりなのに、すべてを知っているような言い方、まずいですね…)感じたのは「ミック・エイボリーのアンダーパンツ」と「皆のあらしぼり」の真ん中に位置する小説であるということ。世の中での自分の置き方を持て余している若者と、独特な自分を社会の中で飼いならして来た年長者とのスペシャルな関係。答えの用意されていない溢れ変える感情。そして、その感情の入れ物になったり、物差しになったりする文学作品。これ、今のところの乗代フォーマット。たぶん、作者はこうやって文学や文章と付合って来たのかもしれません。「あの少女」は作者です、きっと。
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ブログの方のミック・エイヴォリーのアンダーパンツの方を過去に時折読んでおり、素っ頓狂な発想と文章に感心していた。
その著者の小説デビュー作が文庫になったので読んでみたのだが、これまた内容よりも文章主体の一風変わった作品。巻末の評にある通り衒学的でもってまわった表現、ともすれば読みにくい翻訳小説の如き文体で彩られている。やたらめったら描写の細かい挿入エピソードや作中作などは先のブログから引っ張ってきたかのよう。
小説に結末を期待する人には受け入れにくいかもしれないが、文体を愉しむという点では申し分なし。「あの少女」の振舞を自らに当て嵌めたり、考察したりなど野暮なことはするまい。
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ネタバレ第58回群像新人文学賞受賞作。デビュー作。
芥川賞候補『旅する練習』は既読、『皆のあらばしり』は冒頭10頁既読、で本作にいざ挑戦!
あれ?これは乗代さん?文体が既読の作品と全然違って翻訳の直訳文のような文章…という戸惑いを隠せないまま読み進める。
文学好きのある少女(阿佐美景子)の、叔母とのやり取りを軸に置いた他愛のない日常。「少女」は、弟の「姉」であり、叔母の「姪」であり、主語が場面によって変わる上に、文章自体もなかなか独特かつ難解。
家族の前では茶目っ気もあり、教師とのやり取りでは時に大人びていたり、病院の待合では不可解な大人に怯えたり…。少女の日常はありふれた事が次々に起こって時間が過ぎていく。
太宰の『女生徒』を思い出しました。いつの時代も女子の頭の中ではくるくると言葉が生まれるんですね。
高橋源一郎さん、多和田葉子さん、辻原登さんの選評が掲載されています。特に辻原さんの
「この中身のない小説を受賞作として強く推した」というのはとても理解できます。一文読むたびに「才能の塊や…」と感じるんですが、その塊が延々と置いてあってそれを拾っているうちに道に迷わされている読書体験でした。読む人を選ぶ作品ではあると思いますが、面白かったです。
#十七八より #NetGalleyJP -
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「本物の読書家」
自分の「徒党」の中に居る好かない奴ほど始末に困るものはない。それは一生、自分を憂鬱にする種だということを私は知っているのである。
新しい徒党の形式、それは仲間同士、公然と裏切るところからはじまるかもしれない。
友情。信頼。私は、それを「徒党」の中に見たことが無い。
作中にも引用される太宰によって紡がれた言葉。
この言葉や、その元の文を知れたことだけでも、この本を読んだ価値がある。読書とはそういうものだと思う。何か一つでも自分の中に残り続けるようなものを探しに行く旅である。それは孤の旅でないといけないとも思う。
しかしながら本作からの恵みが、それだけで終わるはずもない。本作を読む私は、全てが、乗代雄介さんの思惑通りに動きをやめないデッサン人形であっただろう。その構成に、その文章に、その結末に、私は全ての罠という罠に引っ掛かった。だからこそ私は本作が最高であると言い続ける。そして、全てに引っ掛かることができたという如何にも傲慢な思考と認識を、再度読み返した暁には、語り手に、歴代の文豪の言葉に刺される。そこまでが私の好み。
そんな私は、「息苦しさ、呼吸が速くなる、胸部の圧迫感、パニックになる」などなどの症状をもたらされた。周りに人がいる学内の憩いのスペースにて。1人用の席に腰掛け本を開いていた。 -
購入済み
第40回織田作之助賞、第74回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。第169回芥川賞候補作。「青春小説の新たな名作」とのことですが、私には最初は作者の文体に慣れなくて読み難い作品でした。
修学旅行の自由行動の日の冒険というか、ささやかな行動を青年の目で書いたストーリーです。 -
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乗代雄介『それは誠』文春文庫。
第40回織田作之助賞、第74回芸術選奨文部科学大臣賞のW受賞作にして、第169回芥川賞候補作にもなった作品のようだ。
表題作の『それは誠』の他に『Sに』という掌編が収録されている。
乗代雄介の作品は過去に『本物の読書家』『旅する練習』の2作を読んでいる。『本物の読書家』は自分にはしっくり来なかったが、『旅する練習』は不思議な魅力のある作品だった。
さて、まずは表題作の『それは誠』である。高校2年生の佐田誠が修学旅行で東京に行くのだが、二日目の自由行動を使って、過去に生き別れとなった大好きなおじさんに会いに行くというストーリーであった。どこか『旅する練習』にも通じるところのある青春小説なのだが、『旅する練習』のラストのような衝撃も無く、また、心を揺さぶられることもなく、サラリとした感触しか残らなかった。
『Sに』という掌編は、サリンジャーの小説に言及すると見せ掛けて、『それは誠』の主人公である佐田誠が修学旅行について書いた小説に触れていくという構成であった。確かに『それは誠』の冒頭で佐田誠が修学旅行を題材にした小説を書くという描写があったが、本編ではそれについては何も語られていないので、『Sに』は『それは誠』の解決編と言っても良いのかも知れない。
乗代雄介は不思議な作家である。
本体価格720円
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