孫崎享のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「日本の領土問題」に引き続き読んでみた。同じ問題について複数の人からの意見を聞くと理解が早まる。保坂氏・東郷氏の日本の領土問題と比べると、圧倒的に本書の方がわかりやすかった。
「国際情報局長時代、…ドイツ議会外交委員長は次のように助言をしてくれた。
『戦後、我々はフランスとの確執を克服した。その我々から見ると、日中関係がどうして改善されないのか不思議だ。独仏には昔から領土問題がある。二回の戦争を戦った。相手の国がいかに非人道的なことを行ったかを指摘しあえばお互いに山のようにある。しかし、我々は二度の戦争を繰り返し、このような犠牲を出す愚行を止める決意をした。憎しみ合いを続ける代わりに、協力をしあうことの方が両国民に利益をもたらすことを示した。そして、これまで戦争の原因にもなった石炭・鉄鋼を共同管理するために、1950年欧州鉄鋼共同体を作った。それが欧州連合に発展した。今や誰もが独仏が戦争することはないと思っている。
しかし、もし、第二次大戦後も相手国がいかに自分たちの国を痛めつけたか、自分たちの本来の権利が今踏みにじられているかを主張しあっていたら、仏独関係は最も緊張ある関係になっていただろう。
こうした経験を経てきたドイツから見ると、日本がどうして日中の間に独仏のような建設的な関係を作れないのか疑問に思う。安定した関係を作るには力の強い方が譲歩しなければならない。我々はフランスに譲歩した。今経済力では日本が中国に対して優位にある。この時期こそ日本が中国に譲歩し、安定した日中関係の基礎を作るべきである。』」 -
Posted by ブクログ
著者が外務省勤務時代に感じた、日本のインテリジェンスが抱える問題や力不足を、ニクソン・ショックや湾岸戦争など各時代の背景を交えつつ語っていく。
やや難しい内容でとっつきにくかった。
それでも、情報に基づいて政策が立案されていくべきものを、日本においては日米同盟ありきの政策が先に来て、それを支援する情報のみが選別されていく、さらには誤った政策が露見した場合でも、担当部署の人間の責任は曖昧にされていく、という件は面白かった。
著者がリベラル、かつ脱米国主義であることを念頭に起きつつ読んだが、国益という軸が定まらず、国家としての自立がなされていない以上、インテリジェンスという部署自体が必要とされない、という論も納得させられた。
外交の話だけに限らず、とかく関心のない話題、不利な情報は過小評価してしまう傾向があるので気をつけたい。 -
Posted by ブクログ
元外交官の筆者が、世界で見てきた国境問題について、そして日本の抱える領土問題について、アメリカと日本の協力体制として考えられることなど、最新の状況についてまとめている。
我が国は、第二次世界大戦敗戦後、領土に対し毅然とした主張をしないことで、ゆるやかに国土にたいする権利を失ってきた。
その上辺だけを踏襲した、先の民主党政権によって、さらに我が国は国境問題について主権を放棄していることを内外に知らしめた。
安倍総理は、国内に対する勇ましい発言を繰り返すだけではなく、周辺の海賊国家に対し理性的に、論理的に正しく、我が国の権利を主張し、また、場合によっては国際司法裁判所を活用し、国連の精神に則って、わが国土の主権を回復しなければならない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ尖閣は歴史的には誰も住んでおらず琉球で領有を主張した事もない。台湾所属とする資料の方が多い。戦後から所属が決着していない。
北方四島は、ポツダム宣言・サンフランシスコ条約で基本的に主権外とされている。正確には「竹島、千島列島、歯舞群島、色丹島を除く四主要島・対馬・琉球が日本の範囲」とされている。択捉、国後が名前では上げられていないが、古くから南千島と呼ばれており、上記で名を上げられていないと主張するのは難しい。
竹島はポツダム宣言で日本領外とされているが、サンフランシスコ条約では明確に記載されていない。
つまり上記全て明確に日本領だなんて言えたものでは無い係争中のものだ。
・米国にとって日本の米軍基地全体は極めて重要である。米軍は海外米軍基地の価値を計る指標にPRV(property replacement value、財産代替価値)を使っているが、この指標に基づけば、日本の基地は全世界の約30%である。さらに米軍基地の受入国の基地支援では日本の基地は全NATO諸国の1.6倍、全世界の50%にものぼっている。普天間基地は在日米軍基地全体の1/20にも満たない。1/20がうまくいかなくて、残りの19/20をおかしくすることは、米国は絶対できない。
・尖閣諸島は安保条約の対象になる。しかし、安保条約第5条は「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続きに従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」としている。
米国憲法上の規定では大統領が軍最高司令官で、戦争の際にはできる限り議会の承諾を得るようにする、となっている。
つまり、自動的に米軍が尖閣を守るために出動するとは限らない。 -
Posted by ブクログ
元々ドイツの文化圏だったアルザス・ロレーヌ地方はドイツ、フランス間で長年領土紛争が行われて来たが第二次大戦後の後その原因となった資源石炭、鉄鋼を共同管理する欧州石炭鉄鋼共同体を作り後にEUへと発展した。日本も大国化する中国との付き合い方でお互いの利益となるような体制を作ると言うのが本書の主張のようだ。
前半では日米関係、日中関係、中米関係に関する分析がなされている。
冷戦下でアメリカの方針として対ロシアの防御線として日本の復興を後押ししたアメリカは80年代以降は経済的な脅威として日本を捉え逆に弱体化をはかる。それが銀行のBIS規制で当時世界の銀行の内ベスト10に7行あったのがBIS規制がもとで置いて行かれたと言う。しかしこれは元々資産バブルで膨らんだ価値だったので過大評価されていただけだったと思うのだが・・・とは言え日米貿易戦争でアメリカが日本を脅威として捉えていたのは事実。
現在のアメリカがアジアで最も重視しているのは日本ではなくて中国であり、中国が強くなりすぎないように日本を対抗させると言うのがアメリカでは一つの常識的な考え方だと言う。まあそれは有るかもね、筆者も書いてるがリチャード・アーミテージ、マイケル・グリーン、ジョセフ・ナイは日米同盟強化路線で裏には軍産複合体がいて日本にF−35なんかを売りつけようとしていると。一方金融、産業を代表するグループは中国との関係を重視し、またG2米中が国際問題を協議、解決すると言うことを目標とする勢力も有る。(個人的にはGゼロ説に1票w)筆者は日米関係強化路線にはむしろ反対の立場のようだが多くの日本人の感覚としては日米関係の強化は対中関係でアメリカのパワーを当てにしていると言うことだとの理解で日米関係さえ安泰なら何もかも大丈夫と言うほどのんきな人はあまり以内と思うのだが。
中国と尖閣で軍事対立が起こったらどうなるかについても中国軍事力が部分的には日本を圧倒し、米軍は日本が前にたたない限り全面にはたたない。中国のミサイルは日本の米軍基地を破壊する能力が有る。などなど列挙しているがさすがに米軍基地が攻撃されたらアメリカは反撃すると思うよ。尖閣諸島の帰属についてアメリカはノーコメントなのは事実なのですがやや意図的にミスリードしているように見える。
尖閣諸島が中国領であると言う根拠をいくつか示しているが、同様に尖閣諸島が日本領であると中国が認めた根拠もいくつかあるのにそちらには全く触れていない。北方4島についても日本が放棄した根拠のみを述べロシアが条約に参加していない部分は触れていないなど、相手方の見方はこうだという説明をするのはいいとしてもかなり一方的な主張に見える。
他にも中国は2002年にアセアンとの間で南シナ海の行動宣言で「現在占領されていない島や岩礁上への居住などの行為を控え、領有権争いを紛糾、拡大させる行為を自制する」の項目が有ることを元に中国は武力的な解決を行わないだろうとしているが、元々島を勝手に占領したのは中国でこの宣言はある意味やっちゃったのは仕方ないがもうしません、だから取り返しにくるなと言ってる様な物なのでそう素直に信じられないと言うのが普通の感覚だと思う。
紛争を避けて経済的にお互いに利益のある関係を作りましょうと言う主張は理解できるのだが、やったもん勝ちの中国の行為を責めずに日本政府の対応のみを問題視し平和的な解決をしましょうと言ってもねえ。最後は中国をどれだけ信用できるかと言う話になるし、それこそ中国人だってそれほど中国政府を信用していない。まあ経済的な結びつきを強くすることからですかね、EUの例に習うのであれば。