孫崎享のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『戦後史の正体』の著者の近著。著者はあくまで実証に徹する。チャーチルは、指導者として米国を参戦させることで英国を守り、日本陸軍は挑発に乗って日本を滅ぼしたというのがゾルゲ事件の本質。
ゾルゲの情報をモスクワが軽視していたというのは、議論の余地があるかもしれない。ゾルゲ情報により、スターリンが満州国境から戦車部隊を独ソ戦に振り向けて、戦況を逆転できたという説もあるので。
陸軍がそれまで北方戦の準備はしていたが南方戦の準備はしておらず、ためにあたら多くの将兵をマラリアで亡くしたという指摘、御前会議の出席者の中で駐米経験のある陸軍関係者はいなかったという指摘は、容易に検証可能であり誰も否定しえないと -
Posted by ブクログ
(2015/11/13)
つい先日読んだ「大日本帝国の興亡」をなぞるような本。
歴史的事実に新しい発見はなかったが、
これもつい先日読んだばかりの「ネット私刑」との共通点に驚く。
誰が勝つ見込みのない、国の資源が10倍も違うアメリカに戦争をしかけたか。
戦犯と思しき人たちが皆「自分は騙された。」と他者のせいにする。
他者のせいにはするが、戦争を否定することはなく、むしろ喝采を浴びせる。応援する。
無鉄砲な、勢いのいいだけの、考えなしの意見に同調する。
無責任極まりない。
少なくとも日本人は、いやもしかしたら人類共通の課題かもしれないが、全く進化していない。
私が敬愛する小説家吉川英治ですら、 -
Posted by ブクログ
外務省で各国に駐在し大使まで務めた、外交の専門家が著した書。
正直、驚きの連続だった。僕の学生の頃なんて遥か昔だが、日本近現代史はさらっとしか触れなかった。当然朝鮮戦争も本の数分のレベルの知識しかなく、此処まで掘り下げた知識はなかった。
日本がポツダム宣言を受諾し降伏したその日の夜に「日本人の要請で」建国準備委員会が設立され、20日後には「(統一)朝鮮人民共和国」樹立が宣言されたこと。それが米ソ両大国の思惑で承認されず、南北の分割統治になったこと。だが米ソどちらも決して統一のための戦争は望んでいなかったこと。朝鮮戦争勃発にともない、秘密裏に日本人が参加していたこと、法律ではなく政令で警察予 -
Posted by ブクログ
久し振りに本を読んで興奮し、そしてショックを受ける経験をした。
戦後の日本が歩んだ歴史における"タブー"に真っ向から挑んだ著者である孫崎氏には敬意を抱かざるを得ない。
本書における多くの書評にあるように、筆者は日本の戦後から2012年現在の野田政権までの歴史について、戦後の首相と外相を主人公として、様々な公式文書、論文、記事等を客観的証拠としながら、米国との外交を舞台に「対米追随路線」と「対米自主路線」という相反する対立軸を用いることで、「戦後日本史」というひとつの物語を展開している。
そこには我々日本人がこれまで教えられたり、聞いてきたり、抱いてきた戦後歴史観とは全く -
Posted by ブクログ
2012年の創元社のベストセラー。2017月10月の衆議院選のころ読む。
日本の戦後政治と米国米軍との関係について、元外務省官僚の視点から叙述。
気づいたこと。
1、自民党結党時からの綱領の「改憲」とは、鳩山一郎総裁の「自主外交」とセットだったこと。自主外交とは、米軍に出ていってもらうこと、その上で防衛力を備えるための改憲のことだった。同じ憲法のまま、今の自衛隊は世界7位の軍隊になっているので、もはや、改憲は必要ないことになると思う。「自主外交」はいまだ達成されていない。
2、著者は岸内閣の再評価が必要という。著者のいう反安保デモCIA陰謀説はいかがかと思うが、日米安保条約の内容は評価すべきと