孫崎享のレビュー一覧
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孫崎享さんに対しては、最近、著書『戦後史の正体』が「陰謀史観に過ぎる」というような批判も少なくないようだが、少なくともこの本で書かれていることは至極真っ当な指摘であり論であると感じる。
曰く「不愉快な現実」とは、
1. 日本の隣国中国は、経済・軍事両面で米国と肩を並べる大国になる。
2. この中、米国は中国を東アジアで最も重要な国と位置づける。
3. 日中の国防費支出の差は拡大し、日本が中国に軍事的に対抗することは出来ない。
4. 軍事力が米中接近した中で、米国が日本を守るために中国と軍事的に対決することはない。
という「現実」である。
(「来るべき現実」という意味も含めて)
こ -
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外交政策を立案するにあたっては、情勢判断を基礎とすべきである。情勢判断は事実をみることから始まる。しかしながら、日本の外交においては、「何をしたいか」という願望が常に先行し、都合のよい情報ばかりが集められるという倒錯した政策立案が繰り返されてきた。
われわれは、「いつかきた道」を再びたどらないためにも、願望に身を任せて事実から目を背けるのではなく、客観的な事実をしっかりと見つめて、慎重に対外戦略を構築していかなくてはならない。
今日の分析は今日のもの。明日は豹変する
アメリカ 軍事と関係ない、普通の都市を壊滅。戦意を消失させるてめでなく、資源を非軍事の復興に集中させるため
MI6 現場に行 -
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最近、出版物が多い元外務官僚で、戦略論の著書もある孫崎氏の本。
これまでの著書は、日米同盟や日本の領土問題などの問題を扱ってきたが、この本では中国の経済的・軍事的な台頭、中国に対してアメリカはどのような関係を今、築こうとしているか、またロシアなどの国々はどのような意図を持ってきているのかなどを取り上げながら、感情論やナショナリズムではない、現実的な対処法の検討を行っている。
ドイツとフランスの戦争後の関係の築き方など、まだまだ歴史に学ぶ点は多い。脱亜論を説いた福沢諭吉の考えに私たちは非常に多く染まっているが、中国の新の狙いや国益を考えながら、来るべき時代(新しいパラダイム)でどのように振る -
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日米関係はソ連を封じ込めるために始まり、今日においては中国との距離感でその価値が語られるのもやむを得ない。米国から見れば、2010年代においては日米よりも米中かもしれないし、 日本はオフショアバランシングの駒の一つに過ぎないのかもしれない。日米同盟を金科玉条と奉じる人々に対し、筆者はそんな不愉快な現実を突きつける。
もう一つの不愉快な現実、それは日本には中国との軍事紛争を戦う力はないということ。福沢諭吉以来の脱亜入欧の時代はもう終わり、しかし日本人の心の底に残る中国蔑視感。それでも経済でも国際政治でも軍事力でも、最早中国には敵わない。そんな中領土問題で一方的に敵がい心を燃やす危うさ。
筆者 -
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「スーパー301条」という言葉を覚えているだろうか?
戦後アメリカ追随で進んできた日本だったが、アメリカから制裁を受ける事態を日本人はどのようにうけとめようとしていただろうか?自分を守ってくれる親でもあり、親友でもあるアメリカが日本を敵視する事実に動転して慌ててすり寄ってしまった。
多くの日本人が疑問をもたずに思い込んでいることがある。
「民主主義国アメリカは共産主義国の中国よりも同じ民主主義の日本の仲間」
「これまでのやりかたでこれからもうまく行く。今の不調はこれまでのやり方が正しい路線からずれているため。」
著者の孫崎亨氏これらが幻想であることから話をひもといてゆく。
「中国がアメリカを -
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個人的に軍事や外交関係の理論を構築する際に、孫崎氏の主張は大変参考にしている。
以前読んだ『日米同盟の正体』とも合わせ、日本がこれから構築すべき外交戦略をしっかりと道筋立てて述べている。
結論を先に述べると、日本は中国や北朝鮮、ロシアなどの隣国と過度な敵対的態度を取らず、相手側の主張や言い分も理解したうえで、建設的に外交努力を目指すべきとしている。そして、最終的には米国追従一辺倒だけでなく、東アジア経済圏の中でプレゼンスを発揮すべきと主張する。
米国追従では、日本は極めて危険な状態に置かれる理由は複数ある。
(1)日本の経済の将来性は、対米から対中へと一層シフトし、外交で対立しても全くメ -
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孫崎さんは外交官OBで、するどい分析だなと思っていた。
職場の本屋の棚から新刊を購入。
不愉快な現実。
(1)米国はアジアの交渉の中心を日本から中国に移した。
(2)アメリカは、日本のために本土がやられるため、日本に核の傘をかけることはない。
(3)自衛隊だけでは現時点ですでに中国軍に対抗できない。
この不愉快な現実の中で、日米同盟でアメリカの尻にくっついていた日本は、外交戦略を練り直さなければならない。
まず、自分にできることとしては、中国だけでなく、地政学上重要なベトナム、タイ、インドネシア、オーストリアなどの太平洋諸国との連携を強めていくことだと思う。 -
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元外交官であり、その後防衛大学校教授をされていた孫崎さんの著書。
日本の安全保障に対する考え方、米国の戦略思考、イラク戦争開始の理由、核戦略についてが面白かった。何より、米国の陰謀・謀略行動に衝撃を受けすぎて半信半疑。でも偽旗工作って国際法で容認されてるんだって...!割りきれないことがたくさんまかりとおっている世界なんだと、合理主義な私は教えられました。
何はともあれ、巻末にある「安全保障関係の文献紹介」を読むだけでも面白いと思う。徹底して文献を読むことの大切さ。印象論にのみ頼っていた今までの姿勢を反省した。核兵器、戦略論あたり、もう少し勉強したい!