孫崎享のレビュー一覧
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元外交官、防衛大学校の 孫崎亨の最新の書だった。
日米同盟や戦略的思考の本もあるが、今回は2010年にいろいろと問題が起こった、尖閣諸島、竹島、北方領土の問題を、中国の軍事大国化、アメリカの思惑などもからめながら、歴史的検証もいれて書いている。
ドイツの敗戦国としての戦略を例に出しながら、強い者ほど譲らなければならないということで、イラン・イラク戦争、中ソの問題を提起しながら、領土問題(国境問題)を世界がどのように解決してきたか、また、歴史的に検証をしっかりしたうえで、議論を成り立たせることが必要だと書いている。
紛争解決の交渉として、国益論や一般的な交渉としてできる方法論、個々の事例で -
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民主党政権になって混乱する沖縄の基地問題。だが、ひとつ良かったことをあげるとすれば、日米安保の現状と今後のあり方についての関心が高まったことだと思う。
本書は基本的にアメリカが自国の利益のため、日米安保の位置づけ、内容を自国の思うがままに変えてきたという認識のもと、アメリカの軍事戦略の変遷を紹介する。さらには、東アジアにおける中国、ロシア、北朝鮮と日本との軍事戦略の現状と今後の日本の進むべき方向性までを論じている。
日本が米国追従で独自戦略がなかったのは事実としても、それでも過去には米国との一定の距離を保とうとしていた事実と、それと比較した現在の日本の戦略欠如の惨状の対比は鮮烈だった。
また、 -
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ネタバレ戦後以来の日米の安全保障の実態と展望について論じた本。「戦術は戦略に、戦略は政治に、政治は経済に従属する」(byヤン・ウェンリー)という格言通り、安全保障を経済の面からも語るという視点が新鮮である。そもそも私が安全保障について不勉強なのもあるだろうが。
興味深い点
・アメリカはサンフランシスコ平和条約の権利の留保をちらつかせることで冷戦体制下で北方領土の日本への返還を阻止し続けてきた。これは日本とソ連の接近を警戒し、日本を西側の資本主義陣営に組み込むためであった。
・「米軍に駐留してもらっている以上、日本もアメリカに何かしなくては」という意見があるが、日本が負担する米軍駐留費は額、率と -
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ネタバレ日米同盟を主題にしつつ、日米の外交戦略を考察しています。その中で、2005年以降日米安全保障協力の範囲が極東から世界に拡大していることを指摘し、日本は安全保障問題を再度考えるべき時期に来ていると論じています。
全般的に興味深い話も多く、勉強になりました。よく聞く日米の同盟の非対称性についても不公平なものではないことがよくわかります。グローバリズムや経済発展が戦争抑止に繋がっていることも。
1点、日本の安全保障は戦略的思考に欠けているとの記載があり、外国支配(米国占領期除く)の経験がなくその悲惨さを知らないことが最大の理由とされていますが、個人的には先の大戦以降この分野に対して思考停止になってい -
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[ 内容 ]
アメリカ一辺倒では国益を損なう大きな理由。
インテリジェンスのプロだからこそ書けた、日本の外交と安全保障の「危機」。
[ 目次 ]
第1章 戦略思考に弱い日本
第2章 二一世紀の真珠湾攻撃
第3章 米国の新戦略と変わる日米関係
第4章 日本外交の変質
第5章 イラク戦争はなぜ継続されたか
第6章 米国の新たな戦い
第7章 二一世紀の核戦略
第8章 日本の進むべき道
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
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日米安保~日米同盟へ
私は本当になにも知らなかったのだと、改めて気づかされました。
歴史が好きで、鎌倉時代から明治前までのものは多種多様な文献を読んだり、神社・仏閣を訪ね廻ったりしてきましたが、こと近代史のこととなると「プツン」と本を読もうという気力がなくなっていたり、史跡を訪ねようともあまり思いませんでした。どこか戦争から逃げていた自分がいたのだと思います。
この本は第二次世界大戦後、アメリカの占領~現在に至るまでの安保や同盟のことを色んな文献を紹介するかたちで紹介してくれています。
もちろん筆者である孫崎享さんの考えも述べられております。
まだ何が正しく、何が間違っているのかを正確に判 -
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中国は必ず発展する、というかもうしつつある。中国を軽んじたら痛い目にあうよ。そして、中国と米国が二大国となる可能性が高いけど、その過程で考えなしに米国について行ったら、対中国のかませ犬にされちゃうよ。不愉快な現実とは中国の発展であり、日本の没落ということ。簡単にまとめるとこういうことかな。
ただ、これを不愉快な現実と捉えるのか、まぁ現実ってそういうものでしょと捉えるのかは、近代日本をどう考えるのかに依るのでしょう。私は不愉快に思わないし。その意味で、日本のような小国がですよ、中国のような大国に対して(一時期は欧米に対しても)上から目線ができたって、19世紀半ばから20世紀後半にかけて敗戦を挟 -
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米国では忘れ去られた戦争とも呼ばれる朝鮮戦争。日本も公的に参加していたが、その事実すら多くの日本人には知られていない。そんな朝鮮戦争とは何だったのかをまとめた本。朝鮮戦争は米軍が常に戦う軍隊となり、軍産複合体が米国を動かすきっかけとなった。金日成も李承晩も外国が外国から連れてきた人間で、どちらも真に現地の朝鮮人の思いを代表するものではなかった。義勇兵を送った中国は事前に相談を受けておらず、台湾解放はこれをきっかけに遅れた。日本の降伏後、日本の総督の呼びかけのもと朝鮮人民共和国という統一政権が樹立されたのに米ソの思惑で潰されて分断された。
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ネタバレ政治寄りの内容。
アメリカに従わざるを得ず、不平等でありながらも強く指摘することが出来ない日本。反対に、守ってもらっている恩恵もある。
建前上、アメリカに楯突いても日本に力が無いので上手く従順さを見せる必要はあるが、内部では国力をつけ、本当の意味でアメリカと肩を並べられるだけの外交力は必要。
その国力アップで先頭を切るのは、日本の企業であると考える。日本国民もアホではないので、きちんと心を掴むビジネスで国民の気持ちをまとめ、生産性を高め、本質・真実を学び、他国に対して自分の意見が言えるようにならなければならない。
その上で、政治家がクリーンになり無駄話を辞め、本当に国のため、日本国民の為に動 -
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【ノート】
・「正直言うと、どんな美味しい酒より、この(ウォッカで)ただれる感覚が一番良かったと思う(P67)」
・現代では、少しの手間で入手できる情報により、情報マフィア予備軍ぐらいの情報を得ることができる。「『フォーリン・アフェアーズ』を読むことは、米国国務省政策企画部マフィアの準構成員レベルに行けることである。(P88」
・東西ドイツの壁崩壊につながる動きの端緒はハンガリーからだったが、その動きを画策したのはアメリカのパパ・ブッシュ。だが、CIA長官も務めたブッシュは「『成功は人に告げることなし』のモラルをもっていた人物である((P117)」
・「重要なことは、世界の情勢を見るとき -
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「日本の領土問題」に引き続き読んでみた。同じ問題について複数の人からの意見を聞くと理解が早まる。保坂氏・東郷氏の日本の領土問題と比べると、圧倒的に本書の方がわかりやすかった。
「国際情報局長時代、…ドイツ議会外交委員長は次のように助言をしてくれた。
『戦後、我々はフランスとの確執を克服した。その我々から見ると、日中関係がどうして改善されないのか不思議だ。独仏には昔から領土問題がある。二回の戦争を戦った。相手の国がいかに非人道的なことを行ったかを指摘しあえばお互いに山のようにある。しかし、我々は二度の戦争を繰り返し、このような犠牲を出す愚行を止める決意をした。憎しみ合いを続ける代わりに、協力