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Posted by ブクログ
『領土問題の重要なポイントは、領土問題をできるだけナショナリズムと結びつけないことである。
……私たちは、政治家が領土問題で強硬発言をする時、彼はこれで何を達成しようとしているかを見極める必要がある。』
日本の言い分と相手国の言い分をきちんと整理した良書。ただし、その整理の正統性は留保が必要であることは言うまでもない。
領土問題への“留保”が極めて高度な外交手段の帰結であることを学んだのは大きな収穫であるが、人間の歴史を考えるにあたってこの留保の先に解決の糸口があるのか、それはここで論ずることではない。
それにしても、国家と所有の問題については、想像の共同体と実体としての土地が言葉と論理によってどうしようもなく人間的な悲劇を生み出してしまったとしか思えない。
もはや、言葉と論理なしには人間は生きられないのだが。
Posted by ブクログ
孫崎享(1943年~)氏は、駐ウズベキスタン大使、外務省国際情報局局長、駐イラン大使、防衛大学校人文社会科学群学群長などを歴任した、元外交官、評論家。一般向けの著書も多数。
著者は本書について、「北方領土、尖閣諸島、竹島について、日本の帰属を考えるに際して、どうしても知っておいて欲しい事実を伝えることを主眼とした。少なくともこの本を読まれ、「そんな事実があったのか」と思われることは間違いない。その意味でこの本は領土問題を扱った本としては大変新鮮な本である。」といい、それぞれの国境問題についての歴史的背景、それぞれの立場・主張などを様々な角度から説明している。
そして、最終章では、国家目標のうち最も重要なものは「国民が平和で繁栄する環境を整えること」であり、それを踏まえて、領土問題を扱うことが大事であるとし、領土問題における双方の主張は折り合わないことを前提として、(例えば)日中間の問題は、以下のような方策を組み合わせるべきと述べる。①相手の主張を知り、自分の言い分との間で各々がどれだけ客観的に言い分があるかを理解し、不要な摩擦はさけること。②紛争を避けるための具体的な取り決めを行うこと。③国際司法裁判所に提訴するなど、解決に第三者をできるだけ介入させること。④緊密な「多角的相互依存関係」を構築すること。➄「国連の原則」を全面に出していくこと。⑥日中間で軍事力を使わないことを共通の原則とし、それをしばしば言及することにより、お互いに遵守の機運を醸成すること。➆係争地の周辺で、紛争を招きやすい事業につき、紛争を未然に防ぐメカニズムを作ること。⑧現在の世代で解決できないものは、実質的に棚上げし、対立を避けること。あわせて、棚上げ期間は双方がこの問題の解決のために武力を利用しないことを約束すること。➈係争になりそうな場合、いくつかの要素に分割し、各々個別に解決策を見出すこと。
そして、最後にこう述べている。「領土問題の重要なポイントは、領土問題をできるだけナショナリズムと結びつけないことである。」と。
私は強硬なナショナリストではないが、こと領土問題等に関しては、対立する国の主張に首肯することはなかなか難しいし、多くの日本人は同じような気持ちなのではないかと思う。(もちろん、もっとはっきりした見解を持つ人も少なくないであろうが)
そうした中で、領土問題にどう向き合って行ったらいいのか。。。著者の各々の領土問題についての分析、主張には批判も少なくないが、「国民が平和で繁栄する環境を整えること」が最も重要という、(元・外交官というキャリアならではの)リアリスティックな考え方は共感できるものであり、本書がひとつの考え方を示してくれているとは言えるのだろう。
領土問題についての自分の立ち位置を考えるための一助になる一冊であろう。
(2011年6月了)
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