孫崎享のレビュー一覧
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「自主」か「追随」か。米国からの圧力に対する2つの路線を軸に、日本戦後史を総括しようとする。
日本が8月15日を「終戦記念日」と定めていることの欺瞞から、著者は筆を起こしている。本当に戦争が終わったのは降伏文書に署名した1945年9月2日。つまり、日本人は「敗戦記念日」に向き合ってこなかったのだ。日本は戦争に負けた、アメリカに無条件降伏したという厳しい現実から、ずっと目をそらし続けるための「終戦記念日」なのだと。
巻末に、戦後の歴代首相を「自主派」「対米追随派」「一部抵抗派」で分類しているが、長期政権となったのは見事に「対米追随」グループというのが面白い。おおまかにみればアメリカに都合の悪 -
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以前出版されたハードカバー「情報と外交」の新書版。あらためて一読したが、外務省での国際情報局長、分析課長、ソ連・イラン・イラク大使館での勤務経験を踏まえたインテリジェンス経験論には、説得力抜群です。
国内のインテリジェンス機関の拡充に関しても、単に拡充するのではなく、国益を考えて目的を明確にすることが大事というご意見にも賛同です。
イラク戦争への是非に異議を唱えた故に、外務省から遠ざけられた著者の無念にも共感。故に、最近多数の著書出版やTwitterでの積極的なツイートをなされているのでしょう。
巻末に示している"場の空気"論。正論を述べても、その場の空気が支配してしまう日 -
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外務省国際情報局局長、防衛大学校人文社会科学群学群長等を歴任した元外交官が、戦後史を「自主」vs「対米追従」という二つの外交路線のせめぎ合いという観点からまとめた本。読者を高校生まで広げて書かれているので、分かり易い内容となっている。
かつて存在した「自主」外交路線は、今や死に絶えた。「日本を取り戻す」と発言しつつ、米国からの要求に応えることに躍起となっている背景が理解できる。
米国により、日本が周辺諸国と友好関係を結べないタネが撒かれている。
同じ敗戦国ではあるが、EUのリーダーとして、エネルギー政策の先進国として存在感を発揮しているドイツとの圧倒的な差を感がさせられる一冊。 -
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前々から読まなくてはならないと思っていた本です。
敗戦後の米国と日本の関係を正しく理解するためには必読です。
日本という国は未だに米国に占領されていることが良く分かります。
この本を読めば、今の戦争法案とかTPP、原発推進だとか、誰のために何をやろうとしているのか、わかってくると思います。
日本という国を知りたければ必読の本だと思います。
レベル:524
命を賭けないと一般国民のための政治ができないのは、実は米国も同じなんだろうけどね。所詮、彼らにとっては、国民は家畜のようなもんだし。国民には、柵の中の自由を本物の自由だと思わせておけばいい。彼らはそう考えている。
もういい加減に目覚めても -
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『領土問題の重要なポイントは、領土問題をできるだけナショナリズムと結びつけないことである。
……私たちは、政治家が領土問題で強硬発言をする時、彼はこれで何を達成しようとしているかを見極める必要がある。』
日本の言い分と相手国の言い分をきちんと整理した良書。ただし、その整理の正統性は留保が必要であることは言うまでもない。
領土問題への“留保”が極めて高度な外交手段の帰結であることを学んだのは大きな収穫であるが、人間の歴史を考えるにあたってこの留保の先に解決の糸口があるのか、それはここで論ずることではない。
それにしても、国家と所有の問題については、想像の共同体と実体としての土地が言葉と論 -
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気になった言葉のメモ
中国は大国化する
アメリカは日本よりも中国を重視する
それを見極め日本としてどうするかを考えるのがこの本の目的。
日本の課題は日本人が厳しさを認識できるか。
日本の最も適切な戦略とは。
国際情勢への関心の低さ。
自身への関心が高く
他者への関心が低い
2011年末に書かれた本書の予言は、2015年の今も生きているように見える。
中国のバブル崩壊などと煽っていたメディアの論調もすでに見られない。むしろ、中国経済は大きく成長し続けている。
日本は経済も人口もジリ貧状態。
こういう中で中国とどう付き合っていくか。
戦略的な思考が必要なことは不愉快なほどによーくわかった。 -
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キッシンジャーによると、「日本人は論理的ではなく、長期的視野もなく、彼らと関係を持つのは難しい、経済的な観点からものごとを考える」
ある米国人学者「日本人と安全保障の話をするのはやめよう。彼らは安全保障の本質を全く理解していない。」
真珠湾攻撃は南北戦争と似ている。リンカーンは独立しようとしている南部に対して、南北統一には戦争が必要と考えていた。
キッシンジャーは並大抵でない努力により戦争に参戦できたと回顧している。
軍事力強化には議会の反対もあり大変だが、戦争が起こればその体制を作れる。
ノースウッド作戦は米国軍部がキューバへの攻撃のために米国内でテロ行為を演出するためのもの。ケネディ政権 -
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孫崎の日頃の主張通り。ただツイッターを最近フォローし始めてTPP反対とか東アジア共同体についていろいろ言ってる背景を初めて知れたかも。
中国が大国化するなかで米国も東アジアで日本より中国を優先していくだろう、その中で日本はどうやって生き抜くかを考えるとゆう本。
地政学において軍事力の重要性が弱まっていること、今までは金、技術を欲しがっていた中国がマネジメントを欲しがっていること、中国にとってEUや米国との関係が重要であるほど、日本との問題が悪い影響を与えないようにと日本にとっても都合がよくなること、逼迫する財政で手が回らないところを日本の自衛隊との共同を深めていくことで補おうとする米国、中国と -
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カナダの教訓
超大国に屈しない外交
「日本外交の目指すべき道が見えてくる。」
「国力は10分の1以下。それでもアメリカの言いなりはならない」とのキャッチフレーズがつけられているが、本書は単に外交だけでなく、
「圧倒的なパワーに対峙する際の個人としての身の処し方」という点でも大いに示唆的。
「都合の悪い正論は、圧力をかけて黙らせる」というのが強者アメリカの姿勢。
それに対し、盲従ではなく、
「多少のコスト負担に妥協はしながらも、自己の信念を貫徹する」のがカナダの姿勢。貫徹の姿勢をブレずに堅持すれば、それに敬意を払う良識派が、必ずアメリカの中から出てきて、力を恃んだ暴走にブレーキをかける作用を