坂爪真吾のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
現代社会の構造や、その裏側にある見えにくい現実、そして社会の境界領域でしか働くことができなくなった女性たちの物語が描かれている。
日中の一般的な社会生活の中では、こうした現実はほとんど意識されることがなく、多くの人が目を背け、あえて見ないようにしている世界である。表面的な華やかさだけが強調され、その実態に触れる機会は少ない。
多くの人がその世界に関わることなく生きているからこそ、第三者として情報を知ることはできても、実感を伴って理解することは難しい。しかし、その実態は非常に過酷で残酷な側面を持っている。
その世界に入る背景には「自ら選んだ」という側面も一部には存在するが、実際にはやむを得ない事情によって足を踏み入れているケースが多い。昼の社会で受け入れられなかった人、適応できなかった人が、夜の世界へと流れ込み、自らの身体を資本として生きていく構造がある。
そこは常にリスクと隣り合わせのグレーな世界であり、一歩間違えれば安全や尊厳が容易に損なわれる環境である。決して安定した世界ではなく、かといって満足できる世界でもない。
現代社会において、自分の置かれている状況や経済状態に満足できている人は決して多くない。不満や不安に押しつぶされ、自分自身の存在価値すら見失いかけている人も存在する。そのような状態では、人生を楽しむことは難しい。
だからこそ、このような世界に対して無関心でいるのではなく、理解しようとする姿勢が重要である。偏見や先入観を持たず、一人ひとりの背景に目を向け、適切な距離感で関わることが求められる。
また、人は信頼できる他者とのつながりの中でこそ幸福を感じる存在である。自分自身を肯定し、他者からも肯定されることで、「ここに生きている」という実感を得ることができる。
あまり知られていない世界だからこそ、目を背けるのではなく、その実態と向き合い、そこに生きる女性たちがどのような背景を抱えているのかを受け止めることが重要である。その上で、偏見を持たず、再出発や立ち直りに焦点を当てる視点が求められる。
そして何よりも、自分自身の人生を大切にすることの重要性を強く実感させられる一冊であった。 -
Posted by ブクログ
2018年に読んだ上野千鶴子の『情報生産者になる 』のアンサー新書です。上野ゼミの卒業生たちがいかにゼミでインプットし、いかにアウトプットしていったか?という記録です。いや、インプット、アウトプットというより、どんな「問い」を自らに立て、どんな動機で、どんな行動で、上野千鶴子に鍛えられていったか、を自ら振り返る「学び」のデコン集です。『情報生産者になる 』は出版されてすぐ読んで大きく刺激を受けましたが、『情報生産者になってみた』の存在は知らず、本屋さんの店頭で発見しました。前著にも影響受けましたが、この本もじわじわ効いてきそうです。この本棚にも入れている『「育休世代」のジレンマ』の著者の中野円佳も上野門下生であることがわかり社会学という学問のリレーも感じることができました。同時に付け焼き刃の読書では辿り着けない学問の厳しさも十分に伝わりました。それでも、いつ触れるかわかりませんが上野チルドレンたちの知らなかった著書をこの本棚に登録します。永遠の積読になるかもしれませんが…
-
Posted by ブクログ
以前、駅のプラットフォームで、電車に轢き殺されたハトの死骸を、カラスが無感情に淡々と貪っていた光景を目撃したことがある。ただ立ち尽くし、まばたきすら忘れるほど見入ってしまった。目の前で起きている現実に、恐怖と同時に「新しい何か」が自分の中で静かに芽生えるのを感じた——あの感覚に、少し似ている。
この本『風俗嬢のその後』を読んで感じたのは、まさにその「既知の輪郭が崩れていく」ような感覚だった。これまで私が生きてきた日常の延長線上には、絶対に存在しないであろう現実。風俗という世界の中で働いた女性たちの、その後の人生——家庭を持った者、風俗に戻った者、起業した者、孤独に生きる者。どれもが一様ではなく、“風俗嬢”というレッテルでは到底括れないほど多様で、苦しく、美しく、そして強く生きていた。彼女たちの語る言葉には、どんな美辞麗句も入り込む隙がないほどの切実さと、剥き出しのリアルがあった。
読んでいるうちに、気づけば私は彼女たちの”その後”を追いかけながら、自分自身のこれからを照らしていたように思う。言葉にならなかった感情、名前のない憧れや不安——そんなものに触れるたび、自分の輪郭が少しずつ広がっていくのを感じた。
また、この読書体験は、例えるなら「本という媒体が、私の経験値の限界をあっさり飛び越えさせてくれた」ような感覚でもあった。現実の私は、彼女たちのような人生を生きたこともなければ、その業界に触れたこともない。でも、本を通してその内側に深く潜っていくことで、自分の手の届かないはずの”経験”を疑似的に体験することができた。ゲームで言うならば、自分のレベルでは到底太刀打ちできない敵を、一冊の本によって倒し、その経験値を自分の中に取り込んだような、そんな感覚だった。
私はこの本を読まなければ、一生知ることのなかった人生に触れ、一生交わることのなかった視点を得た。たとえば、風俗嬢という仕事に就いた理由、そこから離れる決意、また戻ってくる葛藤。それぞれの背景には、家庭環境、恋愛、金銭、自己肯定感といった複雑な事情が絡み合っていて、それがまるで、「人間の生」に対して正面から向き合うための問いかけのようにも感じた。
何かを強く批判するでも、美化するでもない。むしろ、こうした人生も確かにここにある、という事実を突きつけられたとき、自分の価値観や倫理観が問われるような気がした。そんな風に、読後しばらく私は静かに何かを見つめていた。言葉にするのが難しいけれど、確実に何かが自分の中で変わった。それは、自分の輪郭がもう一段階広がった瞬間でもあった。
この本は、「知る」ということが、いかに人間を豊かに、そして静かに変えていくかを教えてくれた一冊だった。
-
Posted by ブクログ
さっき書いたのが消えたので手短に。元風俗嬢へのインタビュー集です。
僕のイメージ、精神病の人で、多数とセックスしても大丈夫な人しか務まらない職業と思っていた。まあ実際にそういう人も居るのだけど。両親が医者で(成功者で)、家庭で愛されてなくて、中学生からパパ活して、そのおじさんが『やさしい人』と表現したりとか。ボーダーっぽい人。自分が男性の性欲でしか価値が無いとか書いてた気がする。自傷のついでにお金をもらいたいっとかもね。
でも他のタイプの人も居た。留学費用溜めて博士課程取ったり、大学の学費の分だけ働いて止めたりとか。それで精神的なトラウマもない。こういう人にとってはただの割のいい仕事なんだろう。
あとは、男性を見ると性器が思い浮かぶようになったとか、好きな人とセックスできなくなったとか副作用も書いてあった。
衝撃的だけど面白い本だった。でも何か読んだあと傷ついた感があるかな。 -
Posted by ブクログ
この本には障害者の性とどう向き合っていくか、現場で戦ってきた支援者たちの様々な知見が書き込まれている。
だが、それを参考とし障害者の性を実際に支援していくにあたって避けられない問題がある。それは、まずとりもなおさず自分自身の性との向き合い方を問い正していく必要があるということなのだ。
それなしには結局全て、本質から目をそらしたきれい事にとどまってしまう。
支援が見て見ぬふりや目先の対処のままとなることに、つながってしまう。
そして、そうこうしているうちに障害を持たれた方の人生があっという間に過ぎていき、やがて死を迎えてしまうことになる。
おそろしいことだ。
何度も読み返しつつ、とりあえず自らへの問いかけを続けている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレひとことでは片づけられんなー
>福祉は「最後の砦」の機能を、性風俗に奪われている。
世の中の政治や行政はあまりに現実の理解が浅いのではないか。
母乳プレイ、とかあるのか、、
P81 「ホームレス」は、特定の人間や集団を指す言葉ではなく、 「住まいのない状態」にある。同じように考えると、「風俗嬢」とは、特定の職種や集団内にいる女性を指す言葉では なく、「多重化した困難を一気に解決するために、自らの身体や感情を分単位で切り売りする(せざるをえない)状態」にあることを指す言葉だと言える。
P85 母親がうつ病で実家に戻れない、父親が生活保護を受給しており経済的に頼ることがで きないなど、家族による助け合い(共助)が期待できないため、あるいは家族を助けるた めに、性風俗の仕事を選ぶ女性は少なくない。
085 日本の社会福祉制度は、家族の負担を前提にして設計されていると言われている。生活保護や介護保険制度をはじめ、家族による共助だけではカバーしきれない部分を公助で補う、という発想が根底にある。
そのため、家族のいない女性、及び何らかの事情で家族から弾かれた女性は、制度の恩 恵を受けることが難しくなる。たとえ家族があっても、家族内での助け合いがうまく機能 していない場合、経済的・精神的に苦しい状態に追い込まれがちである。
P110 「性風俗で働く メンタルを病む」のではない
彼女たちの抱えている障害は、必ずしも先天的なものばかりではない。
昼の仕事における長時間労働によるストレス、上司からのパワハラやセクハラでメンタ ルを壊して精神疾患を抱えてしまい、結果として性風俗以外に働く場所がなくなってしまった、という女性もいる。
一般的には、「性風俗で働くからメンタルを病む」と考えられているが、それは正確で はない。「メンタルを病んだ結果、性風俗で働かざるを なくなった」と る。
P124 性風俗=労働という概念が欠落していた自分もみつけた。同時に、性風俗 のあり方について自身の考えが曖昧であることにも気づかされた。 性風俗の世界がど うあるべきかはいまだに分からない。 しかし、いつしか労働として捉えるのであれば、 労働条件が整えられてしかるべきではないか、という考えを巡らせるようになった。 労働者であれば当然に守られる権利がある。 彼女たちのそれは守られているのであろ うか。生活が立ちいかなくなっている人には、 本人が望めば生活保護受給の手続きを一緒 に進める。申請の窓口に同行することもある。 そこで、「性風俗をやめないと生活保 一護は受けられないよ」といって窓口で追い返すケースワーカーに何回か出会った。 自 立しようと性風俗で懸命に働き、それでも月数万円しか収入がない人が最後の砦とし て訪れたセーフティーネットであるべきはずの窓口で、職業を理由に追い返される。 果たしてこれに正当性はあるのであろうか。職業に貴賤はないのではないか。その前 に健康で文化的な最低限度の生活を営めていない人は、国が無差別平等に救済すると されているではないか。命をつなぐための、生活保護である。この制度はすべての 人々の最後の砦に成り得ているのであろうか。福祉は「最後の砦」の機能を、性風俗に奪われてしまっていないだろうか。
P216 若さ、時間、人間関係、金銭感覚、風俗で働いていたという事実、ネット上で半永久的に残る画像や動画の数々。 いずれも容易に元に戻せないものばかりだ。
女性にまつわるあらゆる行為や物質、イメージを現金化できる世界では、自らの未来す 現金化できてしまう。 人生における将来利益 「正常な金銭感覚を保ちながら、安定した社会生活を営む権利」を現在価値で換金できるわけだ。
性風俗の仕事で得られる高収入は、クレジットカードのキャッシング枠を使い切った人 ショッピング枠の現金化に手を出すことと同様に、将来の「セカンドキャリア枠」を現金化した結果として得られるものなのかもしれない。
限度を超えた現金化の果てに待っているのは、奈落しかない。
P224
社会的に丸裸にされ るよりも、仕事で裸になる方がマシ
性風俗 には、「過去を問わない」という不文律がある。脛に傷を持つ人たちが多 (まる世界であるため、誰もが過去を問わない 問われないという作法が徹底されている。一方福祉は、利用にあたって徹底的に過去を問われる世界だ。 所得証明、扶養照会、医 師による診断書や初診日証明、家族関係や離婚歴まで、それまでの全ての視化することが要求される。
生活保護を申請すると、資力調査や扶養照会が行われ、個人の収入や預貯金、資産、家 族関係 就労能力まで全てが丸裸にされる。
「いびつな共助」の中で、世間から見えないように繭で守られ、過去を問われないことに慣れている彼女たちにとって、過去を徹底的に問われる世界との相性は極めて悪 社会的に丸裸にされるよりも、性風俗の仕事で物理的に裸になり続ける方がマシだと考 -
Posted by ブクログ
「情報生産者になる」が思いの外良かったので、続けてこの本も読む。
坂爪さんの研究には流石に引くが、この本を完成させてくれたことには感謝。
最後の座談会がすごくいい。
正直な物言いに、驚いた。
「女性学ってやっぱり運動だったのよ。」
アカデミズムの場で、「運動」を行うことを意識的にやっていたのだなと、その姿勢に感動。アカデミズムが後進を育てることができなかったこと、一人も上野ゼミに希望者がいなかった年がショックだったこと、そこから指導法を変えたこと。お茶の水の原ひろ子先生を尊敬していること。立命館で原さんがやったことを自分もやろうと思い実践したこと。自分の一生を賭けて一作書く人たちをサポートしたこと。
改めて上野千鶴子のすごさを痛感。
なんだか私もやる気出たな。 -
Posted by ブクログ
性被害を受けやすいのが女性ということもあって女性への支援に多く言及しているけど、そもそも“診断基準が男子を基準に作られているので女性の発達障害が見えづらい”というジェンダーギャップがあることに驚き。
この本で紹介されている障害者に対して行われている性教育のプログラム、普通学級でもこういうしっかりした性教育必要だなぁと思った。“障害のない人なら大学進学してその人間関係の中で恋愛やセックスについて学ぶ機会もあるけど”と書いてあるけど、大学って別にそういうこと学ぶためにいくのでもないし、そんな曖昧なものに任せてるから日本の性教育ってダメなんじゃないの?と。 -
Posted by ブクログ
一見セックスについて書いてある本と嫌厭されがちですが、僕はテクノロジーの進歩について書いてある非常に興味深い良著だと思います。
テクノロジーは線形的ではなく幾何学的に進歩していくなかで、今後20年後の2040年頃にはひと昔までは夢物語(例えていうならドラえもんの不思議道具)が一部実現しているようです。たった20年後、です。
技術革新についての本を読むたびに、今のうちにチームビルディングを徹底的にやっておく重要性をヒシヒシと感じます。今ある仕事がAIに置き換わられた時に残る仕事は何なのか。「10年後の仕事図鑑」でも書いてあるとおり、「あなただから」と言われるような、自分をブランディングしていく時代はもう来ています。
この本を読んで、人や本からのインプット以上に、ブログなどをとおして情報発信を継続していくことを決めて実行していきます。