あらすじ
わずか数千円で遊べる激安店、妊婦や母乳を売りにするホテヘル、40から50代の熟女をそろえたデリヘルなど、店舗型風俗が衰退して以降、風俗はより生々しく、過激な世界へとシフトしています。一方、参入するハードルが下がり、多くの女性が働けるようになった反面、大半の現場では、必ずしも高収入にはならない仕事になっているのが実態です。それでは、これから風俗はどこへ向かっていくのでしょうか? 様々な現場での取材・分析を通して、表面的なルポルタージュを超えて、風俗に画期的な意味を見出した一冊です。
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Posted by ブクログ
他の方のレビューで興味を持って読んでみた。
仕事上支援していく中で風俗関係の勤務をされている方の対応に戸惑うことがあった。解決策が見出せたわけではないが、こちらの姿勢を見直すきっかけになった。
覚書
何らかの形で既につながっている行政福祉との関わり方が課題
ソーシャルワークと風俗の連携のモデル
風俗は社会福祉の敵ではなく味方として社会問題としての貧困と戦う
否認でも黙認でも公認でもない「容認」を目指せ
Posted by ブクログ
セーフティーネットとして激安やニッチな風俗店を容認するという事を分かりやすく展開。上辺だけの話でなくしかるべく対象に合わせて進めているので現実的である。無くなりはしない業界だがVRとか進化した場合取り分が減るからセーフティーネットとしての機能に若干不安が残る。
本筋からズレるがおかあさんのオーナーは人材を集めるために待機場所に配慮したりデッドボールの総監督のように肯定も否定もしないからまずは見てくれと懐を示したりと成功しているところはキチンとしているなと感じた。
Posted by ブクログ
若い生きのいい社会学者が書かれた風俗の現場の社会学的考察。単なるルポではなく、解決に向けた方向性も考察されているところが好ましい。少し肩に力が入っている部分も否めないが類書が少ない分だけ許されるところだと思う。風俗を「社会問題としての貧困と闘うための、最前線の防衛拠点にして情報発信・収集基地」として活用していくこと、著者の主張はこれに尽きる。貧困問題を扱っているものとしては、風俗は避けて通れない問題であり、勉強になった。
Posted by ブクログ
風俗店やその経営者、店で働く女性への取材等を通して、日本の風俗が抱える問題の一端を具体的に示した上で、福祉との連携による解決策を示す。
「(性)風俗とは何なのか」をそもそもよく知らないような人(私もそうであるが)にとっては特に、各章で描かれる具体的エピソードに、驚きや衝撃を覚え、興味をかき立てられるだろう。
「加害者(=店や男性)と被害者(=女性)」「健全化か撲滅か」といった二項対立的な捉え方では、多様な要素が絡み合ってできている風俗について、理解することも問題を解決することもできないという著者の指摘は、至極的を射たものというほかない。
単に悲劇的な女性を描くわけでも、風俗を断罪して切り捨てるわけでもない、社会が抱える問題の「現実的で妥当な解決」を目指す意欲作。
ぜひご一読を。
Posted by ブクログ
妊婦・母乳専門店、激安デリヘル、地雷専門店、超熟女店など、風俗の辺境で働く女性と、それに福祉制度はどう関わっていくべきなのかを真面目に考察し、ケースワーカーや法律家を巻き込んで相談会を開催した記録までを含む、真面目なルポ。興味本位で読み始めたが、目が覚める思い。名著。
Posted by ブクログ
●最近は貧困と風俗関係の本をよく読むが、かなり読み応えのある一冊。
●風俗と聞くと反射的にダメだとなる人もいるが、人類とは切っても切れない職業。しかし、風俗店で働くことの出来る人はまだ選ばれた人だからましという冷たい事実。
●ほんとは風俗がセーフティーネットにならずに済むようになればいいけれど、世の中綺麗事だけじゃやっていけない…見ないようにしているのか、単に見ないのか、こういう本でも読まない限り知らない世界
●丹念に取材をしている真摯さが見える。
●最貧困女子を読んだ時もそうだけど、とにかく生きようともがいている人がこれだけいるわけだから、もっと支援のメニューやら方法が広がってほしいと切に思いますね。
●なんだろう…結局こういう本を読むのも、何なる怖いもの見たさ、好奇心に過ぎないよな、とか思ってしまい、読後たまに自己嫌悪に陥りますね…
Posted by ブクログ
熟女、地雷系風俗などは貧困女性のセーフティーネットとして機能しており、一度は福祉と繋がった経験のある女性が多いというのが興味深かった。(福祉に頼りたくない・福祉との繋がり方がわからない女性が多いイメージを持っていた)
また、夜の職業から抜け出そうにも、昼職に転職するには少なくとも1か月は給与が支払われなくても生活できる貯金が必要だが、それを用意できない為抜け出せない女性が多くいる、というのは福祉制度を改善すべき点だと思った。(夜の職業だけに関わらず、1か月穴があくのは厳しい)
Posted by ブクログ
興味本位で購入したが、論旨明快で、読みやすい。普段なじみのない特殊性風俗の実態もわかりやすかった。
行政管理のない産業であるため、著者の個人取材の限界を感じる部分もあった。
しかし、取材から導き出された、『性風俗は絶対になくならないと同時に、「否認の無効性」「沈黙の有害性」「公認の不可能性」という事実がある』、というのは的を射た観察結果で、社会は性風俗を容認し、きちんと向き合って社会をより良くする方法を考えましょう、というのは非常に現実的な解であるように感じた。
第二章の母乳風俗で、どんなに嬢との関係が良くても、母乳が出なくなると3か月目には絶対男が来なくなる…というエピソードで、性癖ってこういうことなんだろうな…とおもった。理屈ではどうにもならない世界。
Posted by ブクログ
妊婦・母乳専門店に地雷専門店、そして熟女専門店。
この特殊な「専門店」。
そういった需要があることにも驚いた。
男性の欲望はあまりに単純で、細分化されすぎていてめまいがする。
供給もまた同じようにあり、その供給者の多くが根深い問題を抱えている。
性風俗、というと多くの人は蔑みの目を向けるだろう。
男性ならば利用して医療がいまいが、単純に女性を貶めるような考えのもと、女性ならば女の価値を下げるものとして、従事者ならばデリヘルより、ソープより、私の方がまだまし、とランク付けを行う。
しかしそんな単純な図式で性風俗は語れるのだろうか?
ひっそりとあることをないことにして、見ないようにして、悪の巣窟のように捉えて絵、それで物事の本質を見ていると、社会を知っていると言えるのだろうか?
見えない弱者、セーフティネット(日本のそれは脆弱だけれど)から漏れたものがそこにはいる。
彼女たちが抱える問題はまさに現代の問題そのものだ。
精神疾患(発達障害も含む)、貧困、DV、シングルマザー、教育格差、肥満。
なぜ彼女たちは搾取されるのか、なぜ貯金できないのか、なぜ行政につながっていても彼女たちは風俗を選ばざるをえないのか。
そこを知らずに単純に善悪の問題と捉えては、彼女たちの抱える本当の問題の解決には至らない。
著者は福祉や司法に、風俗と共闘せよ、支援を行うならあえて風俗を通せと主張する。
それは非常に難しいとは思うが、納得できる部分もある。
私個人の感想を付け加えるなら、教育面からのアプローチも必要だと思う。
無知による恐れは搾取につながる。
自己責任と放置するより先に、知識を与えなければ、社会は疲弊し、成り立たなくなってしまう。
最後に一点、239ページの最後の二行は著者の決意表明でもあるのだろうが、はっきり言って蛇足だ。
これまでの真剣さを「厨二病」的な安っぽさで台無しにしている。
改訂版、続編等出すのであれば再考を願いたい。
Posted by ブクログ
対象となった性風俗従事者と我々の生活がそうとう離れているため、実感としてピンとこないところがある。
でも、実際に性風俗店にいってみれば、相手のなかには、そのような辛い生活を強いられている人もいるだろう。
風俗産業が福祉の最後の砦になっていることが社会悪として認めることも駆除すべきことでもない、中庸なアプローチが必要で、風俗業は仕事の多様性の1つとして認知され、もっと十分な支援が得られられるべきことであることがわかった。
Posted by ブクログ
タイトルに興味を持ったので購入してみた。
内容は、デリヘルを起業した障害者、妊婦。母乳専門店、激安店、地雷専門店、熟女専門店というデリヘルでもどちらかというと美人高級店とは対照的な立ち位置にある店舗の実態現場レポートと、そこに働く女性たちを救うには行政側の福祉との関わり合いが必要であるという筆者の考えをまとめたもの。
いわゆる風俗業を「存在は悪であってなくすべきであり、そこで働く女性たちも業界から救い出す」という考えではなく、風俗は世の中から無くならない職業であり、是認はしないが容認し、働き続けることを前提に女性が精神的にも経時的にも自立するにはどうしたらよいかという問題に一定の解決策を提言している。
デリヘルでも下層に位置する店舗の実態を知るという上では貴重なレポートではある。特に、女性たちに生活保護者や程度の知的障害者が多く存在していること、女性たちが嫌々働いているのではなく、むしろ体調さえ良ければ出勤日以外でも待機室に出向いてくるという実態は、もっと世間に知られるべきであろう。
そうした女性たちを救うというか助けになるのが公的や私的(つまりNPOなどの機関)な福祉のシステムだというのだが、実態レポートを読む限りそうそう女性たちの救いの切り札になり得るかどうかは釈然としない。
ただ、いわゆる低層風俗業を肯定的に見てのレポートという点で、筆者の姿勢は一定の評価はできると思う。こうした問題は、社会悪だとか風俗業の全面否定からでな何も解決しないからだ。ただ、何をどう解決すべきなのか、風俗業全体を一括して語ることはできない。しかし、だからといって業界でも下層に位置する業種だけを観るなら、これまた偏った問題解決しか見いだせない。本書はそうした問題の解決策の糸口をつかむきっかけにはなるだろう。
Posted by ブクログ
性風俗のリアルを描き、その現状分析、問題・課題の抽出、さらに解決策の提案まで行うという意欲作。
・新しい視点の提供
風俗は粋な文化、
風俗は夜のライフワークバランスをとるためのツール、
社会のグレーな部分を吸収してくれる社会的装置、
風俗は貧乏な女性たちにとってこそ必要、
支援としての性風俗、労働の場の提供
・妊娠、母乳専門の風俗
妊娠前後の働き口のない女性たちの、稼ぎ場所になっている。しかし、実際はここではたらくことのできる女性たちが少ない。
なぜって、倍率がめちゃ高い。店は10の応募に対し1,2まで絞り込む。美人でなければ売れないからだ。他にも、勤務態度が良くなければ困る。だから厳選するのだ。
・排除、不可視化、公認ではなく、「容認」
風俗の果たす役割を考えれば、完全に排除するのは難しい。かといって見て見ぬふりをすると、性感染症、社会の乱れに繋がる。だが倫理的な観点から、これを社会全体で公認することもできない。必要なのは、社会がこのグレーな部分を受け入れる容認だ。
Posted by ブクログ
正直読む前は、単にいろんな風俗店の紹介本だろうと思っていたが、違った。風俗と福祉、社会をつなぐためにどうしたらいいのか著者の問題意識を感じされる本。
最後のクイズの答えは何だろうか。
おそらく〇〇〇の三文字ではないか。なぜなら若い女性だけではないからだ。
Posted by ブクログ
読みたかった本。前半は確かに現場ルポの体裁をとっていますが、後半は12年の歳月を経た斬新な提言の書です。あらてめて、メディアによる偏見の産物や私的な思い込みに惑わされないようにしなければと思いました。
Posted by ブクログ
丁寧に風俗の現場にあたり調査研究し、非常に上手い文章と構成力で描かれた良書。本書内にあるようにこれまで風俗は「ネタ」としてサブカル領域において、人々の好奇心を刺激するものとして扱われてきた傾向が強いが、本書は調査研究分析を行うだけでなくソーシャルワークと風俗を繋げる実践活動を行い、それを書いている。熟女専門風俗店における母親がいない30代若者の客のエピソードはなんともいえない気持ちになった。
Posted by ブクログ
そういえばちょっと前にTwitterで風俗は福祉であるとか言って炎上した人がいたな。
それと似たようなことを言っている気もするけど、視点がちょっと違う気もする。
風俗で働く女の人も行政や福祉の支援を受けながら働いていたり、妊婦専門店や授乳してくれる店、他の店舗で門前払いされた人を働かせる地雷専門店があったり、その店が抱えるジレンマだったり...知らない世界がちょっとだけ垣間見えた。
あとがきで「この本では風俗関係書籍で必ず使われる"ある言葉"が使われていないが、それはなんでしょう」とクイズを出したが、何だろう?
Posted by ブクログ
風俗で働けることも才能だ。そうだなー。メディア露出が多いから、知ってはいるけど身を運んだことのない世界。ピンからキリまであるランクの最下層に焦点。確かに、日雇いの高額の仕事ってない。妊娠や病気のリスク半端ないけど。
Posted by ブクログ
貧困でどうにも生活が成り立たなくなった母親が、子どもを道連れに心中した事件があった。それに比べたら、風俗という最終的な選択肢はマシなのかもしれない。
風俗は否認でも公認でも黙認でもなく容認が良いという言い回しにはなるほどと思った。
究極、死を選ぶくらいなら風俗もありかもしれない。生きるために。が、本当ならその前に福祉の手で救えるならそれが一番いい。
それが難しい現状、風俗と福祉の連携というのはとても意義があると思った。
Posted by ブクログ
性風俗の「生活困窮者のセーフティネット」という側面を捉えたルポルタージュ。特殊性風俗とそこで働く女性達の実態・問題点を分かりやすく解説している。文章も論理的で読みやすい。
性風俗をいくら否認しても撲滅することはできない。黙認することも内情が不透明化する危険性を孕む。かといって法律的・社会的に公認することもできない。
社会の一部として容認しうまく付き合っていくこと。すなわち、福祉や社会と繋ぎ風俗に関わる当事者の不幸を減らすことを目標にすべきであるという主張には説得力があるように感じた。
興味があるなら手に取ってみて損はしない一冊。
Posted by ブクログ
筆者は鶯谷デッドボールの取材で店が女性に寄り添えばブスやデブを訴求するジレンマがあると知りそこから風俗店による訳あり女性の貧困問題などを解決できないかと提言。母乳風俗や愛人クラブにデッドボールと色々巡ったようだが裏モノJapanの方が面白いと思う。
Posted by ブクログ
本書でいう風俗は、「合法的」なものに限る。ほとんどがデリヘリだな。ただし、いわゆるキワモノが中心だ。
そこで生きている男女の生の状況を考える。
男については、極めて真っ当というか、イイヒトなので、一般論として語るのは無理なのだが、福祉と現実との狭間を問題提起する。最後には、きちんと弁護士も入ったやりとりもあったりする。
何冊かこういう本を読んだが、割り切っていていい。
性風俗は、否認はできないし黙認は危ない、公認するものではなく容認がよかろうという提案は、なるほどと思う。
Posted by ブクログ
性風俗と聞くと、眉を顰める方が多いだろうか。
いつだったかに読んだ『セックスボランティア』を思い起こす。
本書は、福祉と風俗による貧困救済が趣旨。
根拠なき正義論で社会悪として、風俗に従事する者を断じるべきではないな。
行政、司法、医療、福祉。
今後、貧困に喘ぐ者が救われる社会であることを願ってやみません。
知らない世界に対し、いかにステレオタイプを持っていたかと気付かされる一冊でした。
Posted by ブクログ
悪とは思わないけれど、社会通念上は認められない存在である性風俗関連特殊営業に関する考察。
経営者、働く人、ブラック環境、社会環境・・と様々な側面からのルポで、
至って真面目な切り口です。
日本は勿論、万国にある夜のマーケット。事情は皆共通なのだろうか?
Posted by ブクログ
扇情的なタイトル
アイキャッチはうまい
営業の現場からのインタビュー
著者の意図が明確になるのは中頃過ぎ
社会的な弱者と福祉を結びつける意図が明確に見え隠れする
その筋の人たち
グレーのままが良いこともある
Posted by ブクログ
貧困女性のセーフティネットの一つに風俗産業がある。しかもジャンルが細分化し、若さや容姿を求める訳でないニッチなニーズ(もはやニッチでないボリュームだったりする)にマッチすべく、熟女から地雷系まで「女性」というだけで受け皿が用意されるご時世。
女性側も簡単に足を踏み入れられ、もはやひと昔前の「苦界」でもないような感覚すら覚える。
ただ問題はそのニッチでさえ適合できない女性がいて、そこにセーフティネットとして風俗産業だけに任せ切りにできない難点もある。
この手の風俗を社会学的見地から論じたものは資料として読むことか多いが。著者のこの論点は上段からの物言いでなく腑に落ちるものである。
(以下引用)
『彼女たちを「社会的弱者」「性的搾取の犠牲者」といったレッテルを貼って審判するのではなく、私たちと地続きの世界で、誰もがぶつかる可能性のある問題と戦っている「最前線の隣人」とみなして、対等な立場に立った上で(以下略)』
対岸の火事ではないのだ。