久坂部羊のレビュー一覧
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ネタバレいわゆるクオリティ・オブ・ライフがテーマでしょうか。同作者の「神の手」「廃用身」も似たようなテーマだったように記憶していますが、病気との向き合い方を他人に決められてしまうことの嫌悪感を「希望の御旗」にて同じように感じました。
対して「ミンナ死ヌノダ」の覚馬は、検査も治療もしないことを自ら選んで死んでいったわけですが、その様子はとても満足そうに映ります。
本書はこうした終末期医療に対する問題定義がメインかと思いますが、ラスト直前に出てきた誤診と医師の労働環境に関する問題についても作者は訴えたかったのかな、という気がしました。どちらの点についても、いろいろ考えさせられたり興味を持って調べたりするきっかけになったことは、良かったと思っています。 -
Posted by ブクログ
芥川の小説を再構成した医療エンターテイメントに続く、名作のパロディー医療エンタメ(解説者によると正確にはパスティーシュというそうだ)。
名作をちょっとひねった題名にシニカルさを、その内容にブラックさを味わうことができる。原作をしっかり読み込んで理解したうえでないと、このような作品は書けないのでは。
その一編『アルジャーノンにギロチンを』は、日記形式で構成されている。高慢な医者すぁる主人公は、認知症を恐れ、日記をつけているが、その進行と共に徐々に文章が乱れてくる。
既視感があると思ったら、著者の『老乱』でも、主人公にあたる老人の日記で、認知症の進行具合が迫力満点に描かれていた。
いずれも、現役の医師である著者にしか書きえない、力作だろう。 -
Posted by ブクログ
久坂部羊『カネと共に去りぬ』新潮文庫。
世界文学のパスティーシュ医療ブラックユーモア短編集。世界の名作小説を連想させるようなタイトルの『医呆人』『地下室のカルテ』『予告された安楽死の記録』『アルジャーノンにギロチンを』『吾輩はイヌである』『変心』『カネと共に去りぬ』の7編を収録。
最近の久坂部羊の作品はシリアス路線ではなく、ブラックユーモア路線の作品が目立つ。本作に収録されたいずれの短編もブラックでユーモラスな一面を持つのだが、シリアス路線の方が好きだな。
『医呆人』。アルベール・カミュの『異邦人』のパスティーシュ。村壮はムルソーのパロディだし、基本的なプロットも元ネタのパロディだ。主人公の村壮は社会の望む医師像であることを拒否し続けている変わり者の若手医師だった。病院の中で医療に幻想を抱かぬ唯一の医師である村壮は担当したがん患者の死に際して、不穏な発言をしたことから糾弾される。一種のサイコパスのような村壮の抱える秘密とは……
『地下室のカルテ』。元ネタは、フョードル・ドストエフスキーの『地下室の手記』。得をするのは世渡り上手というのは医療の世界も一般企業も同じようだ。そんなことは解り切っているので、一時の損得に一喜一憂する必要も無いのだが。がん患者の手術と抗がん剤治療の選択に失敗した主人公の割崎英男は抑うつ状態に陥り、院内を徘徊する……
『予告された安楽死の記録』。元ネタはガルシア・マルケスの『予告された殺人の記録』。治癒の見込みの無い白血病により安楽死を選択した櫻子と夫の真一を巡る物語。櫻子が死に際に母親の政子に託した遺言とは……
『アルジャーノンにギロチンを』。元ネタはダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』。68歳の郷田智有の書く日記でストーリーが展開する。知らぬ間に認知症となった郷田は……ブラック。
『吾輩はイヌである』。元ネタは言わずと知れた夏目漱石の『吾輩は猫である』。実験動物として大学病院に送り込まれたビーグル犬の吾輩。名前は『マダナイ』という。憐れ、実験動物の最後……
『変心』。元ネタはフランツ・カフカの『変身』。主人公の名前は寒座久礼子。グレゴール・ザムザのパロディだ。大昔読んだ本に『水凍る寒さ』というのがあったが、あれは何というタイトルだったろう。サイコ気味の寒座は研修医からSMの女王に転身……
『カネと共に去りぬ』。元ネタはマーガレット・ミッシェルの『風と共に去りぬ』。物語の舞台は富裕層向け介護付有料老人ホーム『アトランティス奥多摩』。そして登場人物が列戸馬虎と小原紅子、入楠明日礼というから笑える。
本体価格670円
★★★