平山瑞穂のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
日本ファンタジーノベル大賞受賞作。ガルシア・マルケスを代表としてた、いわゆるマジック・リアリズムといわれるジャンルに類する作品らしい。確かにリアルなんだが夢なんだか、此岸と彼岸の合間を行き来しているような、浮き足立った物語である。よって非常にあらすじが書きにくい。長編作品なのだが、ひとつひとつの章の独立性が高く、連作短編としても成立している。全体をものすごくざっくりまとめると、主人公とその家族の転落を描いたファンタジー作品である。だがこれだとものすごく誤解を招くと思われるので、一応章ごとに簡単にまとめておく。第一章 畳の兄主人公は、父母姉兄との五人家族であるが、兄は"アレ"と呼ばれるいわゆるキチガイ。異臭を放つ"陸魚"を日夜もてあそび、家中を散らかしていくが、一家は見てみぬ振りを決め込んでいる。そんなある日、アレが性的興奮をもって姉にのしかかった瞬間、主人公は我慢の限界を超え、アレを撲殺してしまう。「我慢」は父に刷り込まれ続けた倫理であり、主人公の座右の銘となっている。第二章 混血劇場施設(おそらく少年院)に入れられた主人公は、出所後、教室を改装して作られたレストラン、リトル・ホープで働き始める。ある日、リトル・ホープを訪れたチンピラ二人に、ウェイトレスが悪質な嫌がらせを受け、我慢ならなかった主人公は、ちょっとした口撃に出てしまう。すると、それまで黙っていた客たちが一斉に賛同し始め、気づくと狂気的な暴動状態になっていた。嫌われていた主人公はその責任を取らされ、職を失う。父の知りあいである芸術家の小嶋さんのツテで、遠方の職を紹介してもらったが、そこへ行くついでに家族でフェリーに乗って、映画を見ることになった。その映画の名は『ラス・マンチャス』。ラ・マンチャの複数形であり、身体に黒い染みが浮き出る呪われた一族の話だという。第三章 次の奴が棲む町越してきたのは灰が降り止まない町だった。主人公の勤める「有限会社・株式会社イナガワ」は家屋の通気構からその灰を取り除く清掃業者で、従業員は社長の稲垣さんと、先輩の箕浦さんと三人しかいなかった。童貞であることが露見した主人公は、稲垣に女を紹介されるが、それは箕浦の彼女由紀子であった。稲垣は由紀子の父の弱みを握り、由紀子を良いようにしていたのだ。その事情を知りながら由紀子を抱いた主人公は、やり場のない怒りに駆られ、稲垣を叱責した後、行く当てもなく走り出す。そして辿りついたのが四つ辻の先、森の端、"次の奴"が棲む中澤家だった。次の奴は俗に言う吸血鬼だが、糸を巻きつけ、仮死状態のまま餌付けし、何十年も血液タンクとして獲物を生かしておくという。主人公は気づいた時には"次の奴"に襲われ、血を吸い取られていたが、稲垣さんの猟銃に助けられるのだった。第四章 鬼たちの黄昏あの町から稲垣、由紀子と三人で逃げ出した主人公は、町を転々としながら稲垣の指示で投資詐欺の営業を行っていた。アパートの一室に三人で同居しているため、稲垣は主人公の真横で由紀子を貪り続け(主人公はこっそり布団の中で手淫して我慢)、由紀子は昼に主人公を罵倒しながら犯すことでその鬱屈を発散していた。そんなある日、主人公は稲垣に、小嶋さんの個展に行ってついでにその周辺で営業をしてくるよう言われる。姉のくれたネクタイを締め、一張羅で個展に向かうが、稲垣本人でないということで取りつく島もなく追い返され、主人公は不本意ながら営業に向かう。そしてその一軒目で偶然にも嫁いだと風の便りに聞いていた姉と遭遇するが、どうも姉は薄幸である。話を聞くと、前の旦那とは別れ、今の男とは結婚もしていないという。なぜならその男は、人と姿は変わらないが、人とでは繁殖のできない食人鬼で、それゆえに戸籍も国籍もないからだった。姉はその男のために、月に一度だけ子供を誘拐し、男に差し出していることを聞き、主人公は「逃げよう」と持ちかけるが、鬼の帰還を察知した姉に急かされ、鬼の顔も見ないまま逃げ帰る。第五章 無毛の覇者由紀子を寝取っていたことが発覚した罰なのか、主人公は小嶋のアトリエに詰めるよう稲垣に命じられる。断食儀式中の小嶋は全く姿を現さず、その弟子である越智に仕事を与えられて生活することになる。その仕事とは、肥料槽の中の滋養液を毎日一回取り替えるというだけのものだった。当然暇をもてあましていた主人公は、小嶋のコレクションが並ぶ不気味な人形部屋を避けながら、図書室に通って時間を潰していた。ある夜、ふと館の一回に飾ってあった絵の少女が、幼き頃の姉であったことに気づく。越智を問い詰めると、少女時代の姉は小嶋の憧れそのものであったことを告白する。そして人形部屋に案内され、人形の一体の顔をこちらへ向けると、それはまさしく"生きた"姉であった。姉は手足をもがれ、胃腸も切除されながら、人形の身体をつけられ、チューブに流れる滋養液によって自失状態で生かされていた。すべてを理解した主人公は、我慢の余地もなく、小嶋をゴルフクラブで滅多打ちに撲殺したあと、つながったチューブを切断し、姉と一緒に逃げる決意をするのだった。最後の場面、主人公は車の中で姉の遺骨を抱え、小嶋の屋敷を後にする。屋敷から見える後始末の煙は、いつまでもどこまでも消えそうになかった。以上。物語全体を通して、というか終盤特にだが「帰る」という言葉に重きを置いている。というのも、「帰る」べき場所、つまり家族を失ってしまっているからである。これはタイトルにもあるとおり、呪われた一族、一家の物語だからだろう。とにかく幻想的でグロテスクで素敵な小説であった。パーフェクト。
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Posted by ブクログ
ネタバレどれもよかったけど、小路幸也さんの「イッツ・ア・スモールワールド」と、碧野圭さんの「わずか四分間の輝き」がよかったな。
自信を持てていた過去の自分と比較して落ち込むことってあるけど、今あるものだって別に捨てたもんじゃないし、それより大切なのは『自分が何をしたいか?』だよなって。
青井夏美さんの『金環日食を見よう』もよかったけど、プラネタリウム泊まるの羨ましい反面、確かに市の持ち物かつ大切な資料が沢山あることを考えると、親が同伴であっても小学生が泊まるのは怖いかも…って思っちゃった。逆に資料館じゃないプラネタリウムでお泊り企画あったら参加したいのにな。地元に子どもの頃よく連れて行ってもらったプラネタリウムがあったなあ、など。 -
Posted by ブクログ
この作家さん知りませんでした。なんか色々大変だったんですね…。
様々な恨みつらみが文章のあちこちから滲み出て、なかなかにホラーだけど読みやすいので蕎麦すするみたいにつるつるっと読める不思議な本(笑)
本のレビューなんて私のような素人が勝手に書いているだけなので、そこまで気にしなくても…と思うんですが、売れ行きを左右することを考えるとそうも言っていられないんですね。これまで無責任に好き勝手なこと書いていてすみませんでした(汗)
思うにこの作家さん、デビュー作路線で爆走したら「一部の人に熱狂的に支持されるカリスマ作家」になれたんじゃないかと思うんですが。
人の好みも同じだと思うんですけど、超メジャーが大好きな人もいれば、超マイナーにしか興味が向かない人もいるように、超エンタメ系が向いている作家さんもいれば、一部の人にしか理解できない作品しか作れない作家さんもいると思うんです。(例えば小川勝己さんてそのタイプだと思うんです)
ジャンルに捕らわれない「これ以上先はない」系のぶっ飛んだ話の方が好きな人間に、ぐさぐさと刺さる作品を生み出す作家さんになれたのでは…(ご本人がそれを望んでいないんですけども)
とりあえず「ラス・マンチャス通信」と「桃の向こう」を読んでみたいと思います←という気持ちを呼び起こしたという点で、この本は成功したのでは?と思います。 -
Posted by ブクログ
先日読んだ「2週間で小説を書く!」が徹底したハウツー本としたら、本書は実体験に基づいた小説家業の失敗学本だ。
本書で初めて著者のことを知ったが、文章表現が的確で、一気に読み進めた。新書だがミステリ系の読後感を得た。
著者は専業作家になる前は会社員を経験している。だからこそ会社員である編集者の立場を理解し、寄り添っている。しかし、そこに落とし穴があったのだ。(編集者への恨み節満載だけど...笑)
内容は自著を例に失敗した経緯を語るスタイル。その中で気になったのは「シュガーな俺」。著者は1型糖尿病患者で、この小説は糖尿病の経験を基にしたもので読んでみたくなった。
印象に残った一文
丹精込めて一度生み出した文章を、「ここはどう描けば最も効果的だろうか」と逐一心を悩ませて絞り出していった描写の数々を容赦なく削り取り、かなぐり捨てるのは、腕や足をもがれるほどつらい作業だった。 -
Posted by ブクログ
何ともやるせない恨み・辛みの羅列だな~…ってちょっと引きかけたけど、これがまたかなり的確な後悔論で(って何かよく分からん表現になってるけど)、実に楽しめる。少なくとも、前に読んだ”~億を稼ごう”とかよりよほど現実味があるし、創作と真摯に向き合う姿勢を強く感じる。そして、個人的にどちらの小説が読みたいかというと、間違いなくこちら。そういえば、どちらも小説作品を読んだことはないから、読み比べてみるのも一興かも。とはいえ、まずは平山瑞穂作品から。書評で気になった作品が2つ手元に積読(つんで)あり、近いうちに読んでみよう。ちなみにそれは”ラスマンチャス”と”3.15”。本書でも特に重点的に述べられていた作品だし、ちょうど良かった。