西研のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
物理学とは、世界が合理的な法則によって貫かれているという(それ自体としては証明できない)前提のもとに、私たちの経験するさまざまな事実から法則を解読し取り出そうとする一種の「ゲーム」なのである。
しかしそのさい、その過去が「いまでも嫌なこと」だとなつかしくはなれない。とても辛かった経験であっても、それをいまの時点から「ゆるしている」場合にだけ、人はそれをなつかしむことができる。多くの人がなつかしさには「安らぎ」の感覚があると指摘するが、安らぎとは、ゆるして受け入れるということを意味しているのだろう。
自分のこれまで生きてきた過程やそこでのいくつかの経験の核心を確かめ、そうすることで、自分が生 -
Posted by ブクログ
ようやく、『精神現象学』のあらましが分かりました。人類の「精神」の成長の歴史を俯瞰し、人類思想史の流れを追う、というような壮大なプロットを(猛烈に難解な言葉で。。)語っている、ということのようです。ようやく『精神現象学』が読み進められそうだ。。
気に入ったのは「行動する良心」。ちょっと引用。
「「良心の人」は、生活のなかのさまざまな場面で、そのつどどういう態度や行為を取るのがもっとも「良心的」だろうか、と考える。彼は、もはや宗教的権威も、習俗のルールの権威も善の基準足りえないことをよく知っている。・・・しかし、にもかかわらず、結局正しいことの基準などないのだとは考えず、いかに判断し、行動する -
Posted by ブクログ
これは、意識が絶対知に至るまでの物語。
人類の歴史が、個人の精神的成長過程に重なって見える。
だからだろうか、私には成長記録あるいは観察日記に近い印象を受けた。
意識が辿る道を追体験できる感覚が面白い。
ただ、「どうすべきか」という問いへの「応え」を示してくれているようには感じなかった。
以下、印象に残った文章を抜粋
人間の欲望の本質は、「自己価値欲望」という点にある。したがって、「自己の欲望」はまた、本質的に他社による「承認の欲望」を含む。さらに、人間は社会生活を営んでいるため、どんなことであれ、「他社の承認」なしに実現する欲望は存在しない。このため、人間社会は、まずは「承認をめぐる闘争 -
Posted by ブクログ
自分で言うのもあれですが、大学受験の小論は結構得意な方だった。その時は何かの本で読んだ「型」(起承転結みたいな)ばかりに意識を集中させて、内容よりも「型」にこだわって書いていたのを覚えている(それでも高得点は取れていた)。論文の意味は相手にわかりやすく書くのは勿論だが、何より、中身が無ければ全く意味はない。
つまり、「考える」ことが前提にあって、まさしくそれが最も論文を書く意味である・・・当たり前だけど。でもね、変に慣れると、意外とその本質を理解してなかったり、忘れてたりするんだよね。
この本は小論文を書くための技術や知識ではなく、自ら考えて書くということへ意識の重点を置いているように思う。そ