玉岡かおるのレビュー一覧
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激動の幕末期から明治にかけて。
日本の都の象徴、天皇は京から去り東京へ。家業の呉服ばかりでなく、京都の産業は市場の急激な縮小、変化にさらされる。その中で、新たなニーズを見出し、新技術を取り入れ、更に持ち前の美意識を活かして家業を、地場産業を護り盛り立てた寡婦の奮闘。
男尊女卑の風潮、開国と不平等条約の理不尽など、ダイバシティ、グローバル化の現代的な要素をも強く感じさせる物語です。
主人公雅の胸のすく活躍の陰にも、性別や出自、植民地主義などによる差別が度々顔を出し、時代背景からさも有りなんとは思いますが、才能溢れる姪の富美に対する仕打ちには思わず怒りに身が震えてしまいます。
世の中、変えなく -
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東京国立博物館を訪れると松方コレクションに出合える。彼の家族は,なぜ、これほどまでに高価な散在をしてまでも美術品を集めまくったかは理解できていない。
この小説は光次郎こと松方正義とみさおことクーデンホーフ伯爵夫人の秘められたロマンを前面に打ち出したロマンス大河小説として完成されている。
大河ドラマでも紹介された一部の内容を遥かに超え、日本、欧州を股に掛けた壮大なスケールは真に、浪漫の世界。
松方に関しては資料も多いがみさおのモデルに関して筆者は資料を駆使して想像の世界を飛翔した様だ。
日本は言うに及ばず、当時の米英仏独にも女性の身辺路を記した記録が無く、腕の見せどころだったと感じる。
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孝謙称徳天皇の時代は恵美押勝の乱があったり道鏡事件があったり、つまり女帝が特定の家臣を極度に愛してしまいそのため政治が混乱をきわめるという、そんな歴史的イメージを持つ天皇である。
しかしながらこの小説ではそんな悪いイメージを払拭してくれるばかりか、なぜ後世に女帝の悪い印象が残されたのかその理由も明確に示してくれている。
孝謙女帝が主人公だが、女帝が崩御されるところから話が始まる。女帝に仕えた女官の和気広虫の視点でストーリーが語られていく。光明皇后に引き立てられ絶大な権力を握った藤原仲麻呂がどのような生涯を送ったのか、道鏡がどのように女帝を救ってどう寵愛されたのか、女帝亡きあと誰によるどん -
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おマキさまは本当にこれで幸せだったんだ…というのが率直な感想。私は佑之進の胸の内がせつなくて、佑之進への気持ちを超えるメレルへのおマキさまの思いがつかみかねた。絹代さえ気づいていた思いに、当の本人が気づかないはずはないのでは…?それを押し殺してもなお余りある幸せをメレルは与えたというのか?国籍を奪われ、日本人でありながらメレルの妻となれたにもかかわらず近江八幡の民に受け入れられず、最後は兄弟と信じた者たちからも追放され、逃れた軽井沢で結局病を得たメレルの看病に明け暮れた…苦難に向かえば向かうほど、負けんときと自分を奮い立たせて自分の気持ちで乗り越えていきながら、これが望んだ幸せだと言う。共感で
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様々なゴタゴタが落ち着き、鈴木商店も過去最高益をたたき出して安定したところ、焼打ちに合う。米が国内で余り価格が下落したために海外に売った結果、今度は不足に陥り、値上がりを見越して売り渋る商店がでた。その筆頭が鈴木商店とみなされたためだ。大阪朝日新聞による扇動的な記事の影響も大きかったようだ(当時は反社会的だが、この後、トップが交代して国に迎合し始める)。当時の新聞の力を感じる。この本を読んで強く感じたことは、日本人の視点ではなく、広い眼で見て書かれていることだ。日清戦争後に台湾を併合した際、日本では台湾の衛生向上・教育推進・産業振興に努めて良いことをしたと言われる。その良い面がある一方で、日本