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奈良時代、二度の皇位についた偉大な女帝、孝謙称徳。彼女は生涯独身を貫き、民のため、国のため、平和な世のために、全力をつくした。大仏開眼供養、遣唐使の派遣。逆臣たちの内乱を抑え、僧道鏡を重用し、九州の民・隼人を侍童として置いた――女帝の突然の死と遺詔の行方、秘められた愛の謎を追い、一人の人間として、そして女性としての人生を求めた女帝の真の姿を描く、感動の歴史小説。(解説・島内景二)
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Posted by ブクログ
どこで気になったのか不明。でも手元にあって、先だって読んだ不比等の後日談として楽しめるかも、と思って着手。でも本作に流れる時代は、なんと称徳天皇亡き後がメインで、同天皇については回想の対象という設定。馳作品同様、いわゆる一般的歴史認識に対して、違った可能性を問うといった内容で、ミステリ的な結構も盛り...続きを読む込まれていて、スリリングな味わい。でも人物造形はこっちの方がずっとリアルで、深い。それにしても、単純に”奈良時代”として記憶しているこの8世紀、何とまあ激動の時代だったのですね。更に興味は深まるばかり。他の作品にもあたってみたい。
孝謙称徳天皇の時代は恵美押勝の乱があったり道鏡事件があったり、つまり女帝が特定の家臣を極度に愛してしまいそのため政治が混乱をきわめるという、そんな歴史的イメージを持つ天皇である。 しかしながらこの小説ではそんな悪いイメージを払拭してくれるばかりか、なぜ後世に女帝の悪い印象が残されたのかその理由も...続きを読む明確に示してくれている。 孝謙女帝が主人公だが、女帝が崩御されるところから話が始まる。女帝に仕えた女官の和気広虫の視点でストーリーが語られていく。光明皇后に引き立てられ絶大な権力を握った藤原仲麻呂がどのような生涯を送ったのか、道鏡がどのように女帝を救ってどう寵愛されたのか、女帝亡きあと誰によるどんな力で皇太子が定められたのか。あの時代に起こったさまざまなできごとの流れとその背景が解き明かされる。 もちろんこれは小説なので作者の脚色もあり、話に花を添えている。広虫に届いた飾り緒が誰からの贈り物なのか最後にわかる場面があり、思わず涙が出てしまった。 残念なのは、女帝の政治を通して作者は現代における男女平等社会の推進を強く主張しているように見える点である。男女平等はよいのだが「男の社会は悪、女の社会は善」と決めつけたような話の流れがやや鼻につくのと、皇室にも女性・女系天皇を容認すべきという主張が見え隠れしているようで、そこは少し不満を感じた。 最後まで読んだあとでもう一度冒頭の部分を読んでみると話の伏線がいくつか張られていることに気づく。ペルシャ猫が最初から登場しているではないか。
広虫の女帝に仕えた回想を女嬬の質問などを通して現在と過去を織り交ぜて話が進んでいく。 女帝は結婚は禁止とされ重い責任の中、寄りかかる人も女帝の権威を取り込むため近づき、優しく接する。 この時代の小説はまやかしなどが多いけど、そういうのが重きを置いてなく、心情を優先させた小説。
広虫(狭虫)視点、弟が糺した宇佐神託に一文加えたがために女帝の信頼を損なう。女帝死後許され都に戻るが、女帝をめぐる死の謎を解く過程で奈良朝政争の歴史が語られる。 言葉の力を信じる女帝。名は体を表す、文字は魂を宿す。 罪に落とす前に道祖王=麻度比(惑う)、黄文王=久奈多夫禮(愚か)、和気清麻呂(別部穢...続きを読む麻呂) 女帝は唐に憧れる(則天武后かも)元号が4文字、官職が唐風改称(言葉にこだわる) 作品では母と愛を競った仲麻呂の権力の元は光明子の宮職(749紫微中台)の長官となり、兵を掌握し、詔勅を独力で実施できる、新羅征討も計画、新天皇(淳仁天皇=淡路廃帝)も私邸で囲うなど権力を集中していたが、光明皇后死後、権力の根底を失う。新天皇と保良宮行幸の時に病の孝謙上皇を看病した道鏡(看病禅師)は呪術と最新知識で信頼を得て、藤原氏私欲のための政治を行う仲麻呂と淳仁天皇から政治を取り上げる決意を固めた孝謙上皇を吉備真備と共に支える。(作中解釈) 面白い!
女性天皇がどれほど良い治世を治めていても、死後に貶められるという怖さと史実の限界を思い知る。やはり小説はノンフィクションよりフィクションの方が安心して読める。
女帝に仕える高級女官、和気広虫の目線で物語が語られる珍しい形態。 主人公である孝謙天皇(称徳天皇)は死語である。 この時代の話は初めてなので新鮮。
再読。歴史は勝者によって書き残される。という視点からの裏物語。「男も女もなく、力を合わせ、生きるべきだ」という女帝の最後の詔は、千年後にはかなえられたのか、二千年後には実現できるのか。やはり闇に葬られたままなのか。「今度生まれ変わるなら、やはり女に生まれたい。そのときこの世は、きっと、もっと生きやす...続きを読むくなっていることであろうから。」という女帝の願いの純粋さに泣ける。解説の『源氏物語』への重ねが興味深かった。
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天平の女帝 孝謙称徳―皇王の遺し文―(新潮文庫)
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