矢野浩三郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
以前、BSでリドリースコット監督がテレビドラマ化したシリーズの原作です。
ドラマも良かったですが、原作も良いです。本好きで有名な故・児玉清さんが、大絶賛していたのを思い出します。
12世紀のイングランドはモード女帝とスティーブン王による内乱の最中にあり、農民や貴族、教会もその勢力争いに巻き込まれ、全土が混乱の中にありました。
そんな中、大聖堂建設を夢見る建築職人トムは、有能で篤信家のフィリップ修道院長が運営するキングスブリッジに放浪の末たどり着きます。そこで出会った森に住む魔女の息子ジャック、そして没落した貴族の娘アリエナとの出会いから大聖堂の建設という壮大な事業が開始されます。しか -
Posted by ブクログ
上中下各巻が600 ページの大作ですが、物語の展開に引き込まれ、その分量を感じさせないところが本当に凄いです。
イギリスの中世を舞台に王と教会の対立、貴族や修道士も暴力が蔓る世界で自分の権勢を高めようと暗躍する中、大聖堂を築きたいともがく、石工のトムとその家族、さらに伯領を治めていた伯爵の娘アリエナ、絞首刑にされた吟遊詩人の妻エリンの家族、自分の教区を豊かにすべく奮闘するフィリップ司祭。
大聖堂建築の専門用語が溢れる文章は殆ど理解できませんでしたが、息を付かせない展開とその筋書きには本当に堪能しました。
社会の力の源泉が軍事力という暴力に支えられている王政と神の救いを信じる民衆の宗教心に支えら -
Posted by ブクログ
短編の『ジョウント』が好きすぎる。『霧』まで辿り着けず何度も返却してきた本書だが、『ジョウント』は飛ばさず何回も読んできた。ラストがホンマに狂ってて…
『カインの末裔』も良い。『ゴールデンボーイ』っぽい、人が怖いキング。
そしてやっと『霧』を読めた。登場人物多くて序盤は読み進めるのになかなか苦労したが、怪奇生物と遭遇以降おもろくて止まらなくなった。鬱エンドということは知ってたから、回想している時点に立ち戻るようになる終盤はもうどんな着地?!とドキムネだったのだが、ちゃんと文字通りのHopelessエンド、虚無だった。不完全燃焼感はない。映画も観るか〜。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『霧』が読みたくて買った短編傑作選だったが、『ノーナ』に不思議と惹かれて読後も印象が強い。
主人公以外誰もノーナの姿を見ていないのなら、主人公の内なる暴力性が他者の形をとって現れたということなのだろうか。孤独な生い立ちでどこにも行き場のなくなった主人公に、ただひとつの指針として女神のように現れている。主人公の認識ではノーナは確かに目の前にいたのだと思うと、この歪みがなぜだか神秘的な出来事のように思えてしまった。
『霧』は映画を観たことがあるはずだが内容をほとんど忘れており、読みながら「そういえばそうだった」と思い出していった。
生きるか死ぬかの状況下で先の見えない不安が人々を締め付けて、思いも