矢野浩三郎のレビュー一覧
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中巻はさらに勢いを増し怒濤の展開に。
トムの元で大聖堂建設がスタートし、フィリップによる街作りで繁栄していくキングスブリッジ。
領土を追われた伯爵令嬢・アリエナは羊毛商として身をたてる。
順風満帆と思いきや、ウィリアムの暴挙で街は火の海に。
そして愛を深めていくジャックとアリエナも嫉妬に燃えるアルフレッドによって引き裂かれ…。
本作の面白さはきっちり敵役が悪い奴に仕上がっているところだろう。ウィリアム・ウォールラン・リチャード。転んでも只では起きない曲者揃い。
大聖堂の完成は?ジャックとアリエナは?
どんな結末を迎えるか、最終巻も楽しみ。 -
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三部作の最終巻。物語の主人公たちは二世代目に。話はイギリスから飛び出てフランス、スペインへを経て再びイギリスへ。数十年にわたる物語は、当初のなぞを明かして完結。ストーリーの初期に姿を消していたウザキャラが、終盤に再登場するも最後はハッピーエンドに至る。イギリスの無政府時代の国内政治の状況が物語の基盤にある。スティーブン王とヘンリー王のいさかいには相当ページを割いている。行政組織が不在ななかで、教会が行政や自治体としての機能を果たすことにも多くの説明がされる。イギリス人ならおそらく誰もが知っている歴史にのっとって進行する話なのだが、そこに関する予備知識が全くないことがもどかしかった。
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(六章)
ウィリアムに襲撃され没落したバーソロミュー家。アリエナと弟のリチャードは王に会うためシャーリングからウィンチェスターへ向かうが、王は別の地にいることを知らされる。次の手段として、父の助言をもらいたく、投獄されている牢屋に会いに行くと そこにいたのは骸骨同然の変わり果てた父だった。そこでリチャードはシャーリング伯になることをアリエナはそれを実現させるため弟を支えることを誓う。父と最後の会見の後、父が金を預けていた修道院を訪れるが、金はほとんど使われていた。金を稼ぐため仕事を探す二人だったが、身分もなく後ろ盾もないため、なかなか見つからず。叔父のサイモンのところにも行くが、匿ってもらえず。しかし、そこの村で偶然目にした羊の煎毛からアリエナが何かを閃く。羊毛を運ぶ仕事をしようというのである。
(七章)
シャーリング伯領地の採石場へ行ったトムと石工たちだったが、なぜか先客がいる。戻ってきたトムからその話を聞いたフィリップはハムレイ夫人の仕業と思い、撃退するためある一計を施す。
ウォールランの謀略がキングズブリッジを襲う。
ヘンリー司教にキングズブリッジの大聖堂建築が遅々として進んでいないことを見てもらって、シャーリングに大聖堂を建築させることを企んでいた。しかし、修道院総出で、働きにくれば罪が赦されるということを信者たちに説いてまわり、その結果一千人もの人々ご集まり作業は捗る。視察当日、前評判とは打って変わって、活気のある現場を目にしたヘンリーを驚かせた。
(八章)
前章から三年後。ウィリアムの父パーシー・ハムレイ死去。シャーリングが潤わない原因はキングズブリッジにあると知ったウィリアムは、石切場に赴き、殺戮を始める。
(九章)
「内戦によって最初に犠牲にされるもの、それは正義なのだ、とフィリップは悟った」(p.273)
石切場の事件の報告を聞き胸を痛めたフィリップは王に直訴するためリンカンに出向く。リンカンでは内戦(リンカンの戦い)の最中だった。その戦争にマティルダ(ヘンリーⅠ世の娘)軍が勝利したのだが、戦闘に巻き込まれたフィリップは一時投獄されたが、一夜の後突如として解放される。いきなりのことに訝るフィリップだったが、案内されるままについていくと、そこには女王の書記官となった弟フランシスがいた。
石切場の権利を女王に願い出ていたフィリップだったが、その権利はウィリアムに渡り、その代わりキングズブリッジで市を開いてよいことになった。100ポンドの上納金を納めるという条件付きだったが。財政難に悩んでいるフィリップだったが、羊毛商となったアリエナ、キングズブリッジで羊毛市を開けばよいという弟の助言によって、打開策を見いだす。
(十章)
p.414アリエナがアルフレッド(トムの息子)に「かってにほざけ」とゆっくり言う場面笑った。
ジャックの章とでもいうべき章。アリエナとの逢い引き。アルフレッドとの兄弟喧嘩。罰としてジャックは修道士になる。アリエナとの疎遠。
ウィリアムによるキングズブリッジ焼き討ち。大事な人が命を落とす。
(十一章)
ウィリアムによる焼き討ちによって全財産を失ったアリエナ。弟をシャーリング伯にするという父との誓いを守るため、アルフレッドがリチャードを金銭面でサポートするという条件をのみ、アルフレッドの妻になることを決意する。結婚式当日、「服従の間」に放り込まれていたジャックだったが、母から助けられ、アリエナの家を訪ねる。そこで二人は愛を交わすが、アリエナにアルフレッドとの結婚を取りやめさせることはできず、ジャックはキングズブリッジを去っていく。
おもしろかった。尻上がりにグングン引き込まれていく。 -
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権謀術数蠢く権力闘争。二転三転する物語。最後は民衆の総意が権力を凌駕して大団円を迎える。
著者が描く登場人物はなんと魅力的なことか。悪の限りを尽くすウィリアム。寛容でありながらも姦淫を許さぬフィリップ。後半の主役であるジャックも天才肌ながら一癖も二癖もある性格で描かれる。癖のある登場人物たちが織り成す出来事が物語に深みを与えている。
当初、時代考証が甘いのではないか?と感じていたが、あとがきにて著者は敢えて先の時代の事柄を盛り込んだ理由に納得した。
それにしても著者はアリエナに厳しすぎる。次から次に悲劇が襲う。もうちょっと優しくしてあげて欲しかった。それに負けないアリエナは、文学史上に残るカッコいい女性だ。 -
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上中下というボリュームに加えて、中身が濃い! 親子、夫婦、恋人、師弟やライバルなどのぐちゃぐちゃな人間関係に絡むようにして、陰謀、謀略、殺人、破壊、権力闘争に復讐劇などのこてこてのプロットが幾重にも重なってストーリーを肉付けしている。ドラマに目が行くかと思いきや、大聖堂建設にまつわる現場の息遣いや、信仰に対する独自のスタンスなど、ディテールが細かく、内幕モノとしても読める部分が土台を支えているので、全体的にバランスがいい。
ストーリーは潔く展開し、キャラクター造形もわかりやすい。長い物語ではあるが、大まかな流れは、敵対グループの非情な策略を経て、村と人々が着実に成長していくというもの。登場人物の環境や立場がその都度変化するので、同じパターンの繰り返しという感覚はない。これだけの物語を読まされると、読者も登場人物のひとりなのかなあ、という気もする。キングズブリッジの中に溶け込み、住民と同じ不安や希望を感じる。ある人物には共感し、またある人物には殺意すら抱く(笑)
謎解きだトリックだ、という作品もいいけど、時折こういう大河ドラマに身を任せてどっぷり浸りたいと願うのは年をとった証拠かしら。早いうちに続編を読むぞ。