矢野浩三郎のレビュー一覧
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情景描写がくっきりと脳裏に焼きつかれるような臨場感と共に、その時の時代を鮮やかに表現しているケンフォレットの書き方は、これまでの長大スケール連続小説初心者の自分としては度肝を抜かれた! 上巻から読み始める時、大聖堂なんぞという興味もわかないような内容の本を、如何ぞここまで長く書くことができようかとは思ったものだが、ただの素晴らしい人間物語だった。まさに人間の全てが巧妙に描かれていた作品であった。人との繋がり、愛、憎悪。今のように簡単に人と連絡をとることができない時代だからこそ、すべてのことに情が入り、決定的な一分一秒を逃さない人間の一面を垣間見れた。 レビューを書こうとした際に、ただ、「ありが
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ネタバレこの物語の悪党は何といってもウィリアム。女性を暴行しないと満足感を得る変態で、1人の女性をしつこく追い掛け回しなんとか絶望させてやろうとする。しかしそのウィリアムが歳を取り、たかが1人の女性を貶めたい欲望に狂って人生を棒に振ったのでは?と自問自答する。これは最大の復讐だなと思った。
全体のストーリーは、大聖堂を建立することに人生をかける修道院長と大工が、支配や暴力に屈しそうになりながらも立ち向かうというもの。最後に、もう立ち上がれないのでは?という絶望から道が開ける場面が圧巻。読後は、自分が人生の終わりに何を想うのかと考えざるを得ない。 -
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ネタバレ悪童ウィリアムによって城を追われたアリエナとリチャードの姉弟。放浪の末、牢獄の父と再会し、再起を誓う。アリエナはフィリップ院長の庇護のもと、羊毛商として成功し、弟は騎士へ。
大聖堂建立は、ウィリアム伯の嫌がらせで挫折しかかる。フィリップもただの坊さんでなく、市場で金稼ぎを考える。ある意味、政治家の手腕がある。
ジャックは建築職人としての才能を開花させつつ、アリエナに急接近。しかし、義兄アルフレッドの嫉妬心と、またしてもウイリアムの横暴によって、二人の命運が急転してしまう。
前半部のトムからのあっけない世代交代。
直前にジョナサンを救った場面は、おそらくこの少年が下巻で活躍を見せるための布 -
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ネタバレ12世紀のイングランドが舞台。
大聖堂の建築を夢みる職人トムは、雇われ仕事を追われ、家族を連れて流浪の身。一家は糧を失い、身重だった妻を失い、やがて、トムは森に棲む美貌の未亡人親子と出会う。
その頃、キングスブレッジ修道院長に就任したフィリップは、修道院の経済改革に着手するが、大聖堂が火災によって消失する。
大建築を仕上げたい芸術家肌の職人と、崇高な理想に燃える改革者の宗教家。二人の夢に、時のイングランド国王の後継ぎ問題が絡む。
登場人物のすべてが善人ではなく、癖のある者たちばかりだが、彼らの信念が玉突き事故のように物語を突き動かしていく。歴史ってあんがい、こんなふうに行き当たりばったり -
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多くの人に推薦された本。噂にたがわぬ面白さで、隙間時間全てを費やしてもまだ時間が足りない。ひとことでいうと【12世紀のイングランドを舞台にして、教会の大聖堂を建立する物語】だが、聖職者・職人・貴族という異なる社会階層の複数の登場人物たちの視点で進行する物語は全く飽きない。
上巻では、建築職人のトム一家の物語に多くのページを割いている。この時代は技能を得ることが生存に直結する一方で、失業して冬を迎えると飢餓に直面することがトム一家の苦難の中で語られる。
また、肝心の大聖堂を建設する修道院に関しての詳細な記述を通じて、よく教科書に書かれる「国民国家が成立する以前には教会こそが社会制度であった」 -
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ようやく最終章に辿り着き、ある種の幸福感の中で読み終える。
読者は、長い長い道程を登場人物と共に歩き、
年齢を重ね、喜び、哀しみ、怒り、人間としてのあらゆる感情の発露と類稀なる経験を通して、成長し老いていく。
この長大な物語を著わしたケン・フォレットの鬼気迫る意気込みと、情熱の高さは、著者からのメッセージを読むまでもなく、作品の隅々から匂い立つ。無論、フォレットならではのロマンと官能もたっぷりと堪能できる。
娯楽小説として傑作であるばかりでなく、ヒューマニズムを高らかに謳いあげた名作として読み継がれていくだろう。
蛇足だが、養老某という名の稚拙な解説者は、
興醒めも甚だしい。 -
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ネタバレ3巻、一気に読んでしまった。
まず、ネタ(題材)が面白い。
中世12世紀のヨーロッパ、「大聖堂の建築」を中心に話が展開していく。時代背景といい、今まで自分の中では馴染みがなかった「大聖堂」といい、好奇心を非常にかきたてられる。
そして人物描写やストーリー展開も素晴らしい。
個性的な登場人物の人物描写がとても良い。個人的には苦手な翻訳小説。なぜなら名前からキャラクターのイメージができないから。。。でもこの『大聖堂』の登場人物はそれぞれが個性的に描かれていて魅力的。
ストーリーも何十年にわたる物語とは思えない展開の見事さ。あきることなく最後まで読み切ってしまった。
ケン・フォレット、他 -
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ネタバレルパンが、バーネット探偵社をやっていた頃の話。
相談、調査が無料で、どうやって金儲けしているのか。
相談者(コンサルタント)の仕事の仕方の基本が分かる。
相手の弱みにつけ込むのではなく、
あくまでも問題を除去することによって稼ぐ。
うまい。
調査は無料なのに、なぜ商売が成り立つのか。
世の中の仕組みの中で、不正、公開できないもの、公開できないこと、
をお金に換える巧みな技を知ることができる。
用意周到な準備や、準備のために必要な情報をどうやって正確に知ることができるのだろう。
本書では、怪盗はバーネットといい、警部はベジュー。
2人の掛け合い漫才のような振舞いに、喝采したくなったり、事 -
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前半は1巻同様苦難の連続。
主人公たちはみんな苦労する。
ようやく苦労が報われて落ち着いた中盤に恋愛パート。
ほのぼの。
しかし、羊毛市のあたりでフラグが立ちまくる。
やばいやばいと思いながらページをめくる。
羊毛市の朝を迎え、ここまでくれば大丈夫かと
胸をなで下ろしていたら・・・きゃー!
ウィリアムの野郎、そこまでするか!
そして終盤。
2転3転する恋の結末。
読者たるこちらは、ここまで読み進めた経験で、この小説はBADエンドを
用意しかねないとわかっている。
おかげで、必死にジャックを応援し、絶望したり、喜んだり一喜一憂。
まさに作者の思い通りだが、どうしようもない。
そしてラスト・・・。