大久保康雄のレビュー一覧
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ロマンティシズムとリアリズムの境目の時期に描かれた小説と解説を読んで納得。
ジェーンの思考、言葉の選び方、すべて私の感性に一致した。
イギリスの田舎の風景描写がとても美しい。表現力に驚かされた。
ロチェスター氏との愛の深め方が、よかった。もちろんロマンチックラブの要素はたくさんあり、嫉妬や燃え盛るような激しい感情に身を任せている描写も多いけれど。それ以上に性別や身分、障害などあらゆるものを超えていくような深いつながりをみた。今の時代ですばらしいとされるものと、1800年代と、さほど変わらない気がする。
感情がなさすぎると味気ないけど、理性がないのも話にならないみたいな表現が上巻にあって…
感情と理性のバランスが人間に面白みをもたらし深みも出るのだなぁと。 -
Posted by ブクログ
息子エイドリアンが、ヘスキス・ピアソンの伝記(『コナン・ドイル : シャーロック・ホームズの代理人』)がきにいらなかったためにカーにすべての未公開文書を見せて書かせたという伝記。ジョセフ・ベルがシャーロック・ホームズのモデルかもしれないとしつつも、一番ホームズに反映されているのはドイル自身なのだとしているあたりに、遺族から依頼されて書かれた伝記というところがにじんでいる。
とはいえ、捕鯨船に乗りこんで航海したり、ホームズで成功をおさめたのちにボーア戦争に軍医として従軍し、腸チフスでバタバタと人々が倒れる修羅場のなかで医療班を統率したりと、そのすさまじいまでのダイナミックさには圧倒されるものがある。
シャーロック・ホームズに支配されるのがいやで、ライヘンバッハでホームズを殺してしまい、どんなに懇願されてもなかなか再開にうんといわなかったこと、それでも何年かしていよいよホームズが帰ってきたとき、「ストランド」誌がたいへんな売れ行きを見せたことなどやはりおもしろい。『ロストワールド』や『毒ガス帯』は、はるか昔に読んだきりで忘れてしまったので、また読んでみたくなった。 -
Posted by ブクログ
やはりシャーロック・ホームズと言う人物は探偵の代名詞と成りうるほどの逸材。エルキュール・ポアロやファイロ・ヴァンスも良いには良いのだが、彼らを探偵の代名詞として紹介しようとした時どうしても違和感が拭えない。やはり名探偵と言ったら、ホームズが地面の痕跡を調べただけで得意げに犯人の特徴を当てると言う姿を思い浮かべてしまうのだ。これは私の思い入れによるものかもしれないが。
この本を読んで何よりも驚いた事はホームズの事件解決までのスピードである。事件発生から僅か三日ほどで犯人を逮捕している。更に言うならばホームズがこの事件での行動は、まず現場を見る→アメリカに電話をかける→新聞に広告を出す→子供たちを走らせる。僅かこの程度しかやっていない。解決後にホームズは事件は単純だったと言うが、死体が発見されたばかりの頃や第二の死体が発見された時、挙句の果てにはホームズが突然犯人を検挙した時などは大概の読者があまりに謎な展開に頭を抱え次の展開をワクワクしながら読んだのではないだろうか。私もその一人であった。 -
Posted by ブクログ
これに収録されている話はホームズが失踪する話を書いてから十年経ってから執筆された訳だが、そのせいか『冒険』や『回想』とは随分趣の異なる作品が載っていたように思える。
ホームズが以前よりもワトスンに事件内容を発表されるのを嫌がるようになり、『第二の血痕』を最後に発表を止めてくれと発言しているほど。他にもホームズは事件の真相を見抜いても犯人に十分同情するだけの余地があると、庇い立てするような行動に出ている(数えてみたら13編中6編がそうだった)
これだけ充分ドラマ性に富んだ物語を当時月刊連載していたという話には本当に驚かされる。
本作で気に入った短編は『金縁の鼻眼鏡』かな。この事件では下手すれば動機すら不明と思われるような事件をホームズは現場に残されていた鼻眼鏡だけで真相に辿り着いてしまう。話の流れ、事件の真相、犯人の犯行動機。どれをとっても読み応えのある内容となっている -
Posted by ブクログ
この中に収録されている幾つかは昔に一度読んだことがあるはずなのだが、何故か読んでみるまで思い出せず話の途中で「ああ、これ読んだことあるな」と感じたりもした
ホームズシリーズは事件の推理過程よりも、事件の特異性や冒険性を優先していると思う。実際、依頼人が長々と自分の体験したことを話し、ホームズが残り数ページで解決法を示すというやり方も珍しくないし。
この中で気に入った短編は『ボスコム渓谷の謎』かな。この話は推理や物語性、更にはホームズ特有の調べ方「事件現場の床や地面を徹底的に調べ尽くす」という捜査方法も披露されている。冤罪で追いつめられる息子や驚きの真犯人などミステリとして必要な要素をしっかりと備えている。 -
Posted by ブクログ
これで本当にホームズシリーズは最後の作品になる。この頃にはドイルはただの推理小説作家ではなく、国際的に見ても有名な人物になっていたようだから、あまりの忙しさにホームズを書く暇がなくなっていたらしいですね。しかし、その合間に素晴らしい発想を有した物語を書くことができるのは彼のひとかどの才能によるものなのでしょう。
収録内容はどちらかというと不可思議な事件に対し、ホームズが解決策や光明を照らすといった作品が多い。初期の様な悪意ある犯罪者に対しホームズが正義を下す、というような描写が少なくなっている。何故そのような変化が起きたのかは判りませんが、長く世情を観察するようになって以来考え方に何かしらの影響があったのかもしれませんね。
私が今回気に入った短編は『サセックスの吸血鬼』と『ソア・ブリッジ』です。迷った挙句一つに決めることはできなかった。前者はイギリスの片田舎に吸血鬼の仕業としか思えないような事件が起き、最初は馬鹿にして相手にしなかったホームズも詳しい話を聞くうちに進んで事件解決に乗り出すという話である。この話で特徴的なのは、最近の作家に良く見られる異常心理に頼らないで、しっかりとした論理と証言で物語が成り立ち、不快な点がないことである。後者は悪人としか思えない金鉱王からとある女性の無実を証明して欲しいといわれ、当初は彼女を犯人と思い敵視していたホームズが、最後にはとても小さな事実から真犯人を突き止める事件である。ホームズシリーズには珍しく殺人に関して明確な「物理的トリック」が使われている点は印象に残るだろう。
今作を読んで心に深く残った印象は、確かにドイルの絶頂期は過ぎたかもしれない。だが、けして作品を書くのに飽きたとかもう話が思い付かなくなったとかそういう兆候は一切見られなかったことだ。