望月諒子のレビュー一覧
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オランダのデン・ハーグにあるマウリッツハウス美術館が改修工事のために休館となるタイミングで、フェルメールの代表作品の「真珠の耳飾りの少女」と「ディアナとニンフたち」が来日している。自宅の玄関に複製画を飾るくらいのフェルメールファンである私が、この時期にこの小説を読むにあたり気にしたことは、フェルメールとその作品を丁寧に扱って欲しいということだった。
読み終えた今、その思いは杞憂どころかやり過ぎという感じがしている。文庫本の中頃にはフェルメールの37作品の写真が挟まれている。主人公の1人であるイアン・ノースウィッグは美術愛好家だからフェルメールの蘊蓄を語るのはまあいいとしても、全作品を解説のように語るくだりはどうなんだろう。その辺りを知りたければ、世にはたくさんの書籍、雑誌があり、うちでもそれらを読んできたから知っている話がほとんど。ストーリーの鍵としてフェルメールの作品の真贋や来歴がポイントではあるけど、それを全部知らなくてもこの詐欺師や画商たちの会話にはついていけるだろう。
美術ミステリーにつきものなのは、作品の真贋、絵の裏に潜む下書きや修正、世に出た後の保管や修復か。それらは美術ファンにはワクワクさせてくれることでもあり、いろいろと逸話や噂話も尽きない。そういう点では少し今回物足りないところもあった。フェルメール愛に溢れた美術愛好家ならではの推理なんかもあって欲しいし、日本の画廊での会話もフェルメール自身の裏話にまで飛んで行って欲しかったし。
でも深く入り込みすぎて学術書になっても面白くないし、どこら辺でバランスを取るか、そうなると読み手の期待や前提知識にも左右されるだろうなぁとか。
解説を読んで初めてこれがこの作家の美術ミステリーの2作目と知った。前の作品に行ってみるか。まあそれはないかな、と思ったのは今月アムステルダムのゴッホ美術館で見た絵画の数々で感動したことと関係なくはない。
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ネタバレ重厚なミステリ。貧困、格差、犯罪など重たいテーマが続き、なかなかしんどい境遇の人たちばかりが登場する。
最後にどんでん返し的なことが待っているが、こういのって、個人的に冷めてしまうことがある。どうだ!っていう押し付けがあったり、どんでん返しをするために強引に物語に手を入れたりされると嫌だ。
だが本書は物語全体のディテールが丁寧なため、ラストのどんでん返しにも嫌な感じはしなかった。というか、どんでん返しのために読む物語ではなく、そこに至るまでもちゃんとおもしろい。
以下、最後まですべてネタバレする。
主要登場人物は以下。
・雑誌記者の木部美智子(主人公)
・貧困と犯罪と借金の中生きる、吉沢末男
・医者の息子ながら犯罪とギャンブルに身を染める長谷川翼
・食品工場の工場長、植村誠
・捜査一課の秋月薫
など。
雑誌フロンティアの看板記者である木部美智子は、食品工場への恐喝事件を長年調べている。
あるとき、風俗嬢2人が立て続けに射殺される事件が発生。美智子は調査を開始する。
続いて、食品工場への恐喝はエスカレートしていき、さらに大企業への恐喝、テレビ局への怪文書投書などが続く。次第に、恐喝事件と射殺事件の関連が現れはじめる。
恐喝の手口はどう見ても幼稚で大雑把である。工場長ははじめ、自分の後ろ暗い部分を言い当てられていると思い自費で金を振り込んでいたが、あるとき「さんにんめのぎせいを出したくなければ2000まんえんを用いしろ」との投書が届く。3人目とは?射殺事件と食品工場は、一見何の関係もなく、食品会社の本社はばかじゃないのか、とつっぱねる。
美智子は、懇意の警部補秋月や、テレビ製作会社の浜口、フロンティアの編集長真鍋らと互いに協力および利用しあって、調査を進める。まだ詳細を知っているものはほとんどおらず、フロンティアによる独占記事だ。
そして別の大企業に恐喝が届く。裸で俯いている女性の写真が届き、そのあとは裸の女性が殴られている映像まで届く。しかもそれらはテレビ局宛にも届けられた。そのテレビ局は、視聴率欲しさに放送を決めた。警察への連絡は直前にるだけだ。日本中がこのニュースに注目しだす。
また、別の撲殺事件とも関連が見えはじめ、射殺事件、恐喝事件、撲殺事件の三つがどうやら同じものたちによる犯行だとわかる。
その後、警察も捜査を進め、2人の容疑者を確保した。吉沢末男と長谷川翼。2人とも、多額の借金を抱えている。どちらも事件に関わっていることは確かだが、果たしてどちらが2人の風俗嬢を射殺したか?
こんな感じで進む。この、2人のうちだれがなぜ殺したか?を突き詰めていくことが、終盤の最大の盛り上がりである。
で、取り調べの結果、医者のドラ息子である長谷川翼が逮捕される。おそらく極刑である。
吉沢末男は、殺人には関与せず恐喝等を手伝っただけとして比較的軽い刑に服することになる。
数ヶ月後、美智子は吉沢末男のもとを訪ねる。
そこで、彼に対して、本当はあなたが2人を殺したのだと推理をしてみせる。末男は、美智子の調査および洞察の深さに驚き、認める。
だがもう、長谷川翼で犯人は決まってしまっている。ここでの会話を秋月警部補に伝えたところで、結局は証拠不十分でどん詰まりである。
美智子は、末男がなぜそのような行動に走ったかを考え、確信をもち、本人に確かめたかったのだろう。
録音アプリは起動していたが、2人が別れたあと、美智子は録画データを消去した。
という話である。
だけども、なぜ殺したか?をちゃんと書こうとするともっと長くなる。そしてそこの長くなる部分こそが、この小説の読みどころだと思う。本当は末男が犯人だったのだ、というどんでん返しは、おまけにすぎないと思う。そこに至るまでの登場人物たちの奔走、思惑のすれ違い、末男の狡猾さと必死さとある意味での誠実さ、その他キャラクターたちのリアルなダメさ、などなどをたっぷり読んで味わえるのが本書のいいころだ。 -
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ネタバレやっと読破。普段電子だけど今回は紙。
手軽さはやはり慣れきってしまった電子には敵わんが、やっぱり紙もいいもんだなあ。
さて、疑惑の第三章。
もうね。なんかもう切なくて悲しくて理不尽だし途中から意味わかんなくなってきて、ぼろぼろ泣けてきました。
あとカレー屋さんね。おっ、て思った。
この人もやと。
私も愛媛人だからさ。ずっと。
一生懸命なのをなかったことにされるのはそりゃ悲しい。悲しいなあ‥。゚(゚´ω`゚)゚。
でも今そんなのをもう誰も知らないでしょ?
せっかく乗り越えた、いや乗り越えたとかいうのは違うな。
あー。ぐちゃぐちゃや。
桐野くんと月1でご飯行きたい。
友達になりてえ。
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重厚感たっぷりのイヤミス。
尊い命と尊くない命。何を持ってその犯罪を糾弾できるのか。
親を選べない、生まれ育った環境を選べない、這い上がるしかない、せめて妹だけはあるべき人生を歩ませたい。まさに蟻地獄のように泥沼から抜け出せないと悟った人生の中でこれだけもがいた先の犯罪を恵まれた人生を歩んでいる人間が何を持って責め立てれるのかと。私は何も責めれなくなりました。
『人を殺してはいけない』そんな当たり前のことを視点を変えてしまえば『誰が死んだかは別にいい、追求されない』『人を殺すことはいけないから裁かなければいけない』そんなことに気づかされてしまう話でした。
その殺された人間がどんな人間であっても同じように思えるのか。被害者の人生を見た時に同情ができなくて報道ができないと判断して脚色した話に誰が関心してるのか。主人公がジャーナリストだからこその見え方を踏まえてこちらが読まされるので、犯人に味方をしてしまいたくなる。 -
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木部美智子シリーズ第7弾。
トー横で売春をしていた14歳の暴行事件、Xの中傷投稿、連続暴行事件。一見無関係な事件に共通項を見出していく木部美智子。
全てが状況証拠。推論はできるが確証はない。理解不能な動機で次々と犯罪を続ける男に木部美智子がとった行動は…。
今回も面白かった。
フットワーク、洞察力、柔軟な考え方、他者への優しさなど木部美智子の魅力を挙げるとキリがないが、今回も最後はなかなか危ない橋を渡ったな〜と。脇を固める中川くんや秋月刑事もいいし、このシリーズは絶対に見逃せない。
友情や義理人情などという人間関係を排除し、コスパを重視した現代社会。合理化して階層化した社会で切り捨てられた切れ端のような者が起こす犯罪。幼稚で独りよがりな犯罪はこれからも減ることはないんだろうな。理解できないものに対しては恐怖しかない。
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特に期待値はなかったけれど、思いがけずに楽しめた。とても面白かった。脳内に巣くった寄生者がヤドカリのように次々と宿主を変えながら生き長らえていくという物語。あの名作「パラサイトイブ」を彷彿とさせるようなストーリーだが、ここではその寄生者の意志が単独ではなく、複数の人格が累積している状態にあるというのが変化球だった。だからといって未来が見えたりする理屈や根拠は全くなく、およそ現実味のないファンタジーではあるものの、感染から徐々に異常に気付き始める過程はとてもスリリングで、舞台となる大学病院内での確執はリアル感があり、読み物としてはとてもよくできていると思った。
瞬間を写し出す遠近法は、長い時間軸では一点透視法となるのではないかな。