望月諒子のレビュー一覧
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光と闇のミステリー
『フェルメールの憂鬱』を読んで
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美術史 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
事件の真相 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
展開の妙味 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
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1.はじめに
名画をめぐる望月諒子さんの傑作ミステリーです。
読み終えた今、美術館で見るフェルメールの輝きが、少し違った色に見えてきそうです。
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2.「30点未満」という魔力
物語の軸となるのは、フェルメールの真作が「30点に満たない(20数点である)」
というあまりの希少性です。
この圧倒的な少なさが、資産価値となり、そして、人間たちの欲望を狂わせます。
作品が純粋な芸術としてではなく、マネーロンダリングや投資の道具として「別なる価値」で見出されたとき、名画は恐ろしい事件の火種へと変貌します。
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3.レンブラントとの対比:動と静、戦と和
本作では、同郷の巨匠レンブラントとの比較が興味深く語られます。
* レンブラント: 宗教戦争の只中、激しい明暗で「動」の人間ドラマを数百点描いた情熱。
* フェルメール: 戦後の平和な「静」の時代、レンズや鏡を使い「計算された光」を閉じ込めた緻密。
多作で人間味溢れるレンブラントに対し、フェルメールの「完璧すぎる静寂」は、時にあざとさとして批判の対象になります。
著書の魅力のひとつが、この対比が丁寧に描かれていることです。
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4.なぜ「憂鬱」なのか?
タイトルの「憂鬱」の正体は?
物語が進むにつれ、計算し尽くしたはずの光の粒が、偽物に模倣され、フェルメールそしてその作品たちのアイデンティティが侵食されていく恐怖が浮かび上がります。
もしも、本物の事件が起きたら、歴史の彼方から画家フェルメールの嘆きが聞こえてくることでしょう、、、。
結びの短歌
> 美術とは
> 別なる価値で
> 火種生み
> 聞こゆる彼方
> あぁ憂鬱よ
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5.終わりに
「完璧な贋作は、本物ではないのか?」
そんな問いを突きつけられます。
静かな光の中に閉じ込められたフェルメールの「憂鬱」に触れたとき、わたしたちの美術鑑賞もきっと一変することでしょう。
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Posted by ブクログ
望月諒子『野火の夜 木部美智子シリーズ』新潮社文庫。
フリーライターの木部美智子が活躍するシリーズの第3弾。裏表紙の紹介文に『シリーズ最高傑作』という惹句があり、迷わず購入。気が付けばこのシリーズは前2作も読んでいた。
世の中の腐敗構造を背景にした社会派ミステリー。『シリーズ最高傑作』という惹句に違わず、非常に面白かった。
まさか現代で起きた事件が25年前に起きた事件につながり、さらには終戦間際の満州で起きた出来事とつながっていくとは思わなかった。
第一次産業に頼るしか無い地方で、産業の衰退と共に新たな事業を創設し、一時は隆盛を極めたが、再び衰退し、結局は原発マネーに頼るしか無いという負の連鎖。そんな盛衰と衰退の波に翻弄されながらも土地にしがみついて生きる人びと。借金漬けで首が回らなくなった者は死を選ぶか、一時の迷いで犯罪に手を染めるしか無いのだ。
プロローグには、1996年8月7日、愛媛の宇和島で神崎小太郎は一家を襲い、大量の五千円札を奪って逃走する場面が俯瞰的な視点で描かれる。
本編に入ると、2021年、関東近郊で血の付いた旧札の五千円札が大量に見付かるという不穏な事件が描かれる。その総額は二百万円にも上り、何者かが旧札に対応した自販機や両替機で五千円札を千円札に両替していたことが判明する。
しかし、両替した人物の正体は直ぐに明らかになる。弁護士の桐野真一のもとを訪れた中古車販売店経営者の森本賢次は36歳になる息子が血の付いた五千円札を両替したことについて相談する。その五千円札は25年前に四国から九州に向かう船の中で森本が盗んだもので、元々は五千三百万円余りあったと言う。
一方、フリーライターの木部美智子は興味を惹かれる事件も無く、燻っていた。そんな中、原発ムラを取材していた悪徳ジャーナリストの立石一馬の死亡したという知らせが入る。
さっそく、立石の死の真相を調べる美智子だったが、上司から血の付いた五千円札について取材するよう指示される。美智子が取材を進めるうちに血の付いた五千円札を両替していたのは、森本賢次の息子の加津也であることを知り、その五千円札は賢次が25年前に四国から九州に向かう船の中で薄汚れた風体の若者から盗んだことを突き止める。そんな中、賢次がビルから転落死したとの連絡が入る。
美智子が五千円札の出所を調べるうちに25年前に愛媛で起きた失火事件に行き当たり、さらにその事件とジャーナリストの立石の変死とがつながっていく。
本体価格850円
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1.登場人物
木部美智子…フリーランスのライター。
吉沢末男…貧困の中で妹を育てた。多額の借金を背負っている。
長谷川翼…大学4年生。貧困ぼくめつNPOのメンバー。
長谷川透…開業医。翼の父。
野川愛里…風俗嬢。
植村誠…食品工場の工場長。
2.物語の始まり
小学生の頃の吉沢末男は母親と妹との3人暮らし。家族団欒の生活は好きだったが、母親が女性という武器を使って生計を立てていることも知っていた。成長するにつれ、末男自身もまっとうではない方法で金を稼ぐようになっていった。
3.世界観や価値観
貧困に生まれた人間は、頑張れば頑張っただけむくわれるような生活を送ることは可能なのか。
現在いわれている一人一人を大切にする社会、というのは、本当に実現されているのか。たとえどのような人間でも、社会は助けてくれるのか。
できれば知らずに過ごしたい、見ないで済ませたい世界。
4.物語のキーワードとテーマ
格差社会と子育て。
貧困の中で生まれた子どもを育てるシングルマザー。教育もスキルもない彼女たちは、どのように子どもたちを育てていくべきなのか。
そこで育てられた子どもたちは、どのような生涯を歩んでいくことになるのか。 -
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「野火の夜」を読んで木部美智子シリーズを読破しようと思っていたが、ずいぶん間があいてしまった。貧困の連鎖という不都合な真実をこれでもかと見せつけて白日の下にさらす作風は超イヤミスと言ってよいだろう。「野火の夜」の感想で
『ストーリも描かれていることも滅茶苦茶面白いのだが、故意に読み辛くしているかのような文章に少しイライラする。もっと濃いミステリにする必要はないが、読みやすさも考慮して書いてほしい。木部美智子の淡々とした雰囲気は嫌いではない。』
と書いたがマンマ本作も同様。ただ、本作は犯人グループが捕まってからの後半の展開が極めて秀逸。半分ピカレスク小説っぽいラストもテーマに沿っていて納得感高い。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ飽きずに最後まで読めた!
主人公の脳だけの話ではないんだけど、
人ってやっぱり自分から見えてる面だけでは判断できないなあ、、と思った。
多面性があるのが人間だけど、本質はあるから素直にお話をすることが大事なんだと思った。
きっともっと早く素直にお話ができていたら寒椿の向こうに人を見ることもなかっただろうに。
自分も人のことを一面だけ見て嫌な人とか意地悪な人とか思わずに素直に「悲しい言い方だけど本当に傷つけたくて言ってる?」とか聞けるようになりたい。
色々プライドとか恥ずかしさとかあって聞きづらいと思うけど。
それはそうと、みんなは楽しいからって活動しすぎて宿主を壊すのは寄生ズとしては失格すぎる。
そのおかげで主人公はいろんなことに気づけたのかもしれないけど……最後に良いこともあったし。
私も最後の記憶を選べる人生が送れると良いな。 -
Posted by ブクログ
先日、「蟻の棲み家」を読んだ後に望月諒子さんの本が家にあったはずだと本棚を見て探し出した一冊。
読んだはずなのに全く記憶になく、再読する。
木部美智子が登場するシリーズだった。
この作品は、高級老人ホームで資産家の笹本弥生が殺害されたことから始まった。
誰が殺したのか?が気になるところだが、それよりもこの老女が戦後をどうやって生き延びてきたのかを知ると凄味が増す。
さらに孫である健文が関わる大学生の考古学研究室での詐欺事件も自殺者が出るほど濃い顛末。
会田良夫の足跡の不確かなことを徹底的に調べ、さらにはさらには…と疑問に思うこと全てを木部美智子が、そして今回は東都新聞の亜川がいっしょに探っていく。
一気読みしたのだが、再読⁇と思ったのに違ったのか?
こんなに濃い強烈な内容だったのか…としばし呆然となった。
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Posted by ブクログ
どの作家であれ、文庫書き下ろしなるものはそこそこで、そこそこ以上はほぼないなぁと思っています。しかしこれは大当たり。どうしてこれがまずは単行本で刊行されなかったのだともったいなくなる。なんて、よほどのことがない限り、文庫化されてからしか本を買わない私が言うのもなんですが(^^;。
関東大震災と東京大空襲のなか、闇市で成り上がった女性が、高級老人ホームで殺害される。その老女と不仲を噂されていた孫が唯一の法定相続人であるはずが、ホーム職員の男性がもう一人の孫だと名乗り出る。
まるで著者が見たかのように綴られる震災と空襲当時の凄まじい光景。家族を失い、奉公先も失って、たった一人で生きなければならなかった女性の生涯。フリー記者、大手新聞社デスク、テレビ局ニュース制作班らの取材の進め方に引き込まれます。550頁超、複数の事件に多くの人物が絡んでいるから、とっとと読まないと頭の中で整理がつかなくなりそう(笑)。そこを丁寧に読みたい。誰かの生涯の一点と交差した人間としての誠意、それを見せてくれる記者たち。ラスト200頁はどうにも止まらなくて参りました。帯の「怒涛の急展開」に偽りなし。