あらすじ
東京都中野区で、若い女性の遺体が相次いで発見された。二人とも射殺だった。フリーの事件記者の木部美智子は、かねてから追っていた企業恐喝事件と、この連続殺人事件の間に意外なつながりがあることに気がつく。やがて、第三の殺人を予告する脅迫状が届き、事件は大きく動き出す……。貧困の連鎖と崩壊した家族、目をそむけたくなる社会の暗部を、周到な仕掛けでえぐり出す傑作ノワール。(解説・大森望)
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1.登場人物
木部美智子…フリーランスのライター。
吉沢末男…貧困の中で妹を育てた。多額の借金を背負っている。
長谷川翼…大学4年生。貧困ぼくめつNPOのメンバー。
長谷川透…開業医。翼の父。
野川愛里…風俗嬢。
植村誠…食品工場の工場長。
2.物語の始まり
小学生の頃の吉沢末男は母親と妹との3人暮らし。家族団欒の生活は好きだったが、母親が女性という武器を使って生計を立てていることも知っていた。成長するにつれ、末男自身もまっとうではない方法で金を稼ぐようになっていった。
3.世界観や価値観
貧困に生まれた人間は、頑張れば頑張っただけむくわれるような生活を送ることは可能なのか。
現在いわれている一人一人を大切にする社会、というのは、本当に実現されているのか。たとえどのような人間でも、社会は助けてくれるのか。
できれば知らずに過ごしたい、見ないで済ませたい世界。
4.物語のキーワードとテーマ
格差社会と子育て。
貧困の中で生まれた子どもを育てるシングルマザー。教育もスキルもない彼女たちは、どのように子どもたちを育てていくべきなのか。
そこで育てられた子どもたちは、どのような生涯を歩んでいくことになるのか。
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初めて出会った作者。
文体に重厚感あり、出だし読み進めるのに苦労したが、慣れると滑らかに頭に入ってくる。その文学的だが実は明快な描写は、読んでいて快感すら覚える。
テーマも重い。でもエンターテインメント性も抜群。
同じ登場人物ものが複数あるとの事なので、今後必読。
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母からおすすめされた本。
帯に「大どんでん返し」と書かれていたけど、そうかな?過剰な煽りな気がする。蛇足。
「イヤミス」とも書いてあったけど、読み終わった後はどちらかといえば清々しい気持ちになった。
全然後味悪くないよ。
幸せになれ、末男。
Posted by ブクログ
「野火の夜」を読んで木部美智子シリーズを読破しようと思っていたが、ずいぶん間があいてしまった。貧困の連鎖という不都合な真実をこれでもかと見せつけて白日の下にさらす作風は超イヤミスと言ってよいだろう。「野火の夜」の感想で
『ストーリも描かれていることも滅茶苦茶面白いのだが、故意に読み辛くしているかのような文章に少しイライラする。もっと濃いミステリにする必要はないが、読みやすさも考慮して書いてほしい。木部美智子の淡々とした雰囲気は嫌いではない。』
と書いたがマンマ本作も同様。ただ、本作は犯人グループが捕まってからの後半の展開が極めて秀逸。半分ピカレスク小説っぽいラストもテーマに沿っていて納得感高い。
Posted by ブクログ
俺は視聴者の脳に酒を流し込んでいるんだ。犯人は、吉沢未男か長谷川翼のどちらかだ。どちらかが芝居を打っている。そして逃げ損ねた方は死刑なんだよ
重くて暗くて、こういうのがノワールっていうらしい。社会派でサスペンス。翼が犯人だったらいいと願いつつも、荷が重すぎる。
社会から、死んでようやく人権が与えられる、というのが刺さる。逃れられない環境の中で、自分たちが社会の底にいることも、歪に育っていることも気づかず生きている人の方が多数派なのか。それともぬかるみの中で陸地を探している人の方が多数派なのか。
事件はフィクション感が強いけど、テーマとしているところはそこまでファンタジーものではないのが重たい。
展開やモノローグが、時々ループしているような気がして、ちょっと疲れた。
Posted by ブクログ
個人のディテールを積み上げて人物をより一層浮かび上がらせる 嫌いじゃない手法
自分も真面目に生きれば光は当たらなくても生きてはいけると思っている 足掻いても進まない纏わりつく沼のカケラにすら触れる感触が想像できないのかも知れない
Posted by ブクログ
初めて読んだ作者の小説だったので、
調子が出るまで時間がかかったし、
しばらく時系列がまとまらなくて苦労しました。
結末は予想を裏切られ、ちょっと面白かった!
Posted by ブクログ
初読の作家さん。
物語は、三章で構成される。
二人の女性が、銃殺された状態で発見される事件が
起こる。
フロンティアという雑誌記者が、食品会社へのクレームで恐喝され続けている事件を取材しているうちに、三人の人物が浮かび上がり、殺人事件とも関わっている可能性が出てくる。
物語の始めは、展開が遅く読みづらいけど、事件が
解明されるに従って、事件を起こした犯人達の背景が、リアルでのめり込んで読むことが出来た。
どんでん返しもあって、印象に残る作品だった。
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連続射殺事件。犯人一味は捕まるがどちらが主犯なのかというところが興味深い。そしてそれを追求するフリーライターの恐るべき嗅覚と実行力には驚いた。
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シリーズものとは知らずに買ってしまいました。解説読んで知りました。最初から読んでみたかったですが、ひとつひとつ独立した作品みたいなので本作を読む上では特に影響なかったみたいです。
私が思う“貧困”は“お金がないこと”だと思ってました。そう思っていたのは、私がある程度普通に幸せな人間だからなんでしょう。もちろん普通の基準は人それぞれですが。少なくとも生活に困るような、生きていく上で困るようなことは現状ありません。欲を覚えることはあっても、貧しさを感じることはない。
でも他者からの愛情に満たされていない、それもまた“貧困”なんですね。
たとえお金がなくても、お金のかからない別のもので気持ちが満たされれば二人の女は殺されなかったかもしれない。お金はない、誰からも必要とされない、それなのにこの二人のことを可哀想だと思えないのはなぜなんだろう。登場人物たちの心情はどれも少しずつ分かるようで分からない。彼らのセリフはどれも聞き入ってしまうくらい説得力があって、読み応えのある作品でした。
ラストの美智子の行動が褒められるものかどうかは別として、私もきっとそうするだろうなと思います。
Posted by ブクログ
社会派小説は好きだが、貧困と虐待の負の連鎖系は気が滅入るのはもちろん、読み過ぎたのか少し食傷気味に。帯の煽り文句も過剰。最近の帯はない方が良いものが多い。販促に必死なのはわかるが、結果読者への裏切りとなってしまう。こういうのはどんでん返しとは言わないのでは。小説としては決して悪くないのに帯のせいで台無し。階段を必死で登っても青空の下で過ごせるとは限らないという事実に無力感を覚える。亀一製菓への架電で末男が言ったセリフにハッとさせられた。読みにくい文章と帯がマイナス要因だったが、質の高いノワール小説だった。
Posted by ブクログ
単行本書き下ろしの意欲作。新潮の100冊で買ったのだったかな?
プロローグはいいとして、その後の本編で記者視点と犯人側視点が章分けも無く入れ替わるのは正直読みづらかった。ミステリー的に、最後にどんでん返しを用意したいなら、最初から最後まで記者側視点の方がよかったと思う
「貧困」についての「貧しいというのと貧困は違う。貧しいというのは金がないだけだ。しかし貧困というのはインフラがない土地のようなもの」(86頁)という表現は上手いと思った。
また、「求めるものは……自分が生きていくのに安全な環境」(446頁)という指摘も末男側からの意識としてよく分かる。
貧困について切り込んだ素晴らしい作品なだけに、もうちょっとなんとか読みやすくできたような気がして、もったいないような気がする。
Posted by ブクログ
貧困の連鎖と犯罪。
育児放棄にあい、それでも貧困の中から抜け出そうと必死にもがいたけれど抜け出せなかった男性の言葉にはっとさせられました。
「みんなこの空のどこかに書かれている人権とか正義にかしずいて、どこにあるのかわからないのにあると仮定しているものにかしずいて、生きていけばいい。でも空のどこかにあるのかもしれない正義や人権を、あると思わず生きていることもできるんですよ。そんなものがない世界が、同じ空の下にはあるんですよ。」
そして、そんな彼らの事件を追う記者の思い。
「安全な社会に住む人間には、事件は、誰かが逮捕されたときがピークなんだと美智子は思う。動機なんて、個々が適当に想像するのと、週刊誌が頼りない情報で書き立てたことが、違っていたって同じだって、それはただそれだけのこと。」
この社会には、自分たちの住む世界の当たり前や常識が、当たり前でも常識でもない世界が存在している事実。
だからこそ、次々と起こる事件も、表面的に報道されて被害者が可哀想で加害者が悪くてという構図で済まされて終わってしまい、本当の問題には目が向けられることも改善されることもなくて‥
そしてずっと悲惨な事件が繰り返し起きていることに改めて気づきショックでした。
Posted by ブクログ
なかなか読み応えのあるミステリーだった。物語全体を通して漂う陰鬱な雰囲気が、重厚感を与えている。弱っているとき読むとちょっと凹むかもしれない。
東京中野区で起きた二件の殺人事件。フリーの記者である主人公木部美智子は、ずっと追っていた企業恐喝事件との関連性に気づき、真相を追いかけていく。その一方で、貧困の連鎖により悲惨な境遇に置かれた若者たちの側面が描かれていく。なぜ、二件の殺人事件は起きたのか?犯人は誰なのか?一見ずさんとも思える企業恐喝事件から、殺人事件へ発展していったのか?読んでいくほどに、その綿密に組まれた物語に驚かされる。
貧困の連鎖。道徳感の欠如。親を選べない子供の不幸。そんな底辺のような世界で育ってきた子供たちは、世間とは価値観が全く異なる。世間一般での常識では測れない生き方が描かれていて、読んでいて胸が苦しくなってきた。社会の構造的問題を浮き彫りにしている。
作品の中でマスコミの姿勢やジャーナリズム、テレビや雑誌のスクープ至上主義的な部分も描かれている。被害者がどんなにひどい人間でも「不幸な境遇で一生懸命に生きてきた可哀想な人間」というフィルターをかけて報道する。そのほうが視聴者が見やすいから。
それに対して主人公は抜群の取材力を発揮する。警察への仁義も通すし、口の軽い捜査官を現場から外すような情報のコントロールも行う。とても頭がよくて行動力もある。そして、次々に真相に迫っていく姿がかっこいい。
社会問題の側面と、ジャーナリズムの側面との描き方もすごいが、ミステリーとしての完成度も高いと思う。一見幼稚な犯罪に見えるが、そこに隠された真相が分かる部分が、鳥肌もので面白い。今まで積み上げてきた伏線が一気に繋がる感じ。
物語の語り口は、全体に漂う重苦しい重厚感、そうせざるを得ないよなあと思える納得感に溢れていて、とても面白かった。
Posted by ブクログ
なんだかあんまり入り込めなかったな。
最後の種明かしまで、何もわからない状態だったからか。
どんでん返しか。
末男の心情が最後の種明かしまで、あまり無かったからか。うーん、面白くなくはない。
Posted by ブクログ
2025.10.07
葉真中顕の「Blue」を思い出すミステリ小説だった。シングルマザー、貧困、半グレ的な。
そしてとても途中はやるせない。そしてひたすら暗い…。
誰にも愛されない自分勝手な女と、生まれたばかりで難病の赤ちゃんの命の重さは同じなのか?…考えさせられる。
久しぶりにテーマが重めなミステリーをしっかり読んだ。骨太、という言葉がピッタリだった。
Posted by ブクログ
淡々と進む感じの中、登場人物の相関図が若干ややこしい=読み辛いと感想を書く方が多いのかな?と思いました。
人は人によって磨かれる(創られる)というフレーズと親ガチャというフレーズが頭をよぎった一冊。
当人にしか分からない宇宙(無理して使うな)が一人ひとりに存在する。
当たり前の事しか書けない私は、差し詰め小宇宙。
Posted by ブクログ
若い女性二人が殺された事件を追うフリーの事件記者・木部美智子。貧困ゆえに犯罪を繰り返してきた男が、医者の家庭に生まれながらちょいワルに過ごす医大生を殺人犯にしてしまうという話。貧困、崩壊した家庭が、筆者らしいタッチでドロドロと描かれる。木部さんの推理力が凄すぎ。
Posted by ブクログ
初めての作家さん。
こういう文体を読むのは初めてかも?
淡々と事実や状況が並べられていて、読みにくいと感じる人もいそう。
でもわかりにくい感じはしませんでした。
事件自体はわりと複雑と言うか、登場人物が多い。
巻頭に登場人物一覧があるので助かります。
それを見返しながら本編を読みました。
視点が変わるのが複雑化している要因かと思いますが
最後にすべて繋がるのですっきりします。
蟻の棲み家に関しては、犯人の意外性がなかったかな?
この人?って思ってた人が、途中犯人じゃないっぽくて、え?
ってなりつつ、やっぱり最後には犯人だったって言う。
共犯者のほうにびっくりしたお話でした。
「相手が自分と同じようにクズでないと気にいらないのがクズな人間の特徴なんだ」
って一文が好きですね。
Posted by ブクログ
探偵役が女性フリーライターの物語。
警察顔負けの捜査力、いや取材力で事件の真相を明らかにしていきます。
しかし、正直読みにくかった。
盛り上がる感じでもなく、ハラハラドキドキがあるわけでもなく、貧困家庭の闇、社会の暗部を見せつけられて、げんなり。さらに犯人のくずっぷりが嫌になっちゃいます。
東京中野区で次々と発見された女性の射殺体。
蒲田の食品工場の恐喝事件を追っていたフリーライターの木部美智子は、恐喝事件との関連性を突き詰めていきます。
恐喝事件は、さらに、第三の殺人をほのめかす脅迫まで発展。
この事件に絡む登場人物たちが辛い。
被害者の女性たちの生き方、貧困さ。
企業恐喝に絡む者たち。暴力と虐待。
母親や家族からはじき出された者たちの末路という感じ。
そして、事件の真相に迫るにあたって、容疑者が二人。
どちらかが真犯人というところで、美智子が明らかにした真相。
という展開です。
解説を読むと、これシリーズ化されているんですね。
木部美智子シリーズの5作目とのこと。
知らなかった。
ほかの作品も読んでみたいと思います。
Posted by ブクログ
生まれた環境で人のその後の人生が決まってしまうのはどうにかならないものなのか
自分では抜け出せないと思う
どうしたらこの本に出てくるような子どもを減らせるのか
Posted by ブクログ
貧困・育児放棄・売春… 社会派ミステリーというのかな。
初めて読む作家さんでしたが、帯に東野圭吾の『白夜行』や宮部みゆきの『火車』を思わせる…と大好きな作家さん2名の名があったので思わず手にしました。
半分ぐらいまでは、主人公(?)のルポライターの感想や思いの説明が多く、この感じは私の好みではないな~となかなか進まなかったけれど、そこを過ぎたら急に展開が早く感じてあっという間に最後まで読み切りました。
でもとにかく重たかったです。重たくて重たくて沼地に足首を取られてズブズブと引きずりこまれるような感じ…。
重たい話が何もかも嫌いというわけではないけどここまで重たいと娯楽として読書をしている私にはちょっときつかった…。
帯には「ラストの大どんでん返し!」とも書いてあったけど、う~ん…これは大どんでん返しなのか??とは思いました。
Posted by ブクログ
最初から最期まで一貫して訴え続けてくる、“どんなにがんばってもクズから抜け出せない”と。辛辣でキツい
第三章に入ってからの一読者としての振り回され方に緊張感がありました。可能性のうちのひとつであるとはいえ、どうかそうであってほしくないと願ってしまう、、、、ような真実、、、
店頭でどーーんと平積みされているのに惹かれて読みました。本作者の小説、初めて読みました。
文庫本の解説に作者の作品歴が紹介されていて、本作はフリーライターの《木部美智子》シリーズ5作目とのこと。他のも読みたいです。
また、『大絵画展』2021、『フェルメールの憂鬱 大絵画展』2016、『哄(わら)う北斎』2020 のシリーズの方が興味あるので読みたいです。
Posted by ブクログ
3.5くらいの評価になるかな。
社会の低層に居る人たちのもがきを描くのはよくある構図なのでさておき、蟻の棲み家とはよく出来たタイトルだなぁとは思った。
初読の作家さんなので少し読み進めづらいところはあったが、本の厚みの割にスラスラと読めたとは思う。
どことなく昭和の匂いを感じる雰囲気なのは良かったな。好きなので。
煽り文句に大どんでん返しとあったが、それほど衝撃のって感じではなく自然なひっくり返し方で好感であった。
Posted by ブクログ
許しても裏切られる
その人のせいじゃないからと
許しても裏切られる
いつかはそれが正しかったと思いたいし
やはり彼じゃなかった
信じてたよ
彼にとっては一貫性ある
生きていくために必要だったから
Posted by ブクログ
貧困、格差、売春、報道のありよう
重い、グロい、後味がしんどい
そっちから どんでん返しくるか・・・(; * д * )
望月諒子さんの作品
ジャーナリスト木部美智子シリーズは、【殺人者】からの2冊目
彼女目線での謎解きや、警部補とか報道番組チーフとの駆け引き?持ちつ持たれつ感 面白い
文章は 確かに 会話だったり一人称だったり で独特 こんがらがる
でも、すぐ慣れて ストーリーにグイグイ引き込まれるから あっという間
Posted by ブクログ
大どんでん返しという紹介があったが、そういう訳ではない。
紹介の仕方に問題あり。
何となく予測はつくけど果たして正解はなんなのか。という疑問がどんどん溢れてくる。
それをひとつひとつ解いていく丁寧な作品。
言い回しがくどい部分もあるが、情景が想像出来てそれも良い。
お洒落な言い回しをしたいが為にややこしい文章になっている点が多々あり。
ここまでの感想だと「なんで☆3?」となるかもしれないが、読み終わった時の達成感、そして次のページを早く読みたいと思わせる登場人物の人柄というか、キャラクターに惹かれた。
汚く浅ましい女が喚いている姿の想像がつく。
面白かった。