【感想・ネタバレ】蟻の棲み家(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

東京都中野区で、若い女性の遺体が相次いで発見された。二人とも射殺だった。フリーの事件記者の木部美智子は、かねてから追っていた企業恐喝事件と、この連続殺人事件の間に意外なつながりがあることに気がつく。やがて、第三の殺人を予告する脅迫状が届き、事件は大きく動き出す……。貧困の連鎖と崩壊した家族、目をそむけたくなる社会の暗部を、周到な仕掛けでえぐり出す傑作ノワール。(解説・大森望)

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

重厚なミステリ。貧困、格差、犯罪など重たいテーマが続き、なかなかしんどい境遇の人たちばかりが登場する。
最後にどんでん返し的なことが待っているが、こういのって、個人的に冷めてしまうことがある。どうだ!っていう押し付けがあったり、どんでん返しをするために強引に物語に手を入れたりされると嫌だ。
だが本書は物語全体のディテールが丁寧なため、ラストのどんでん返しにも嫌な感じはしなかった。というか、どんでん返しのために読む物語ではなく、そこに至るまでもちゃんとおもしろい。




以下、最後まですべてネタバレする。




主要登場人物は以下。
・雑誌記者の木部美智子(主人公)
・貧困と犯罪と借金の中生きる、吉沢末男
・医者の息子ながら犯罪とギャンブルに身を染める長谷川翼
・食品工場の工場長、植村誠
・捜査一課の秋月薫
など。

雑誌フロンティアの看板記者である木部美智子は、食品工場への恐喝事件を長年調べている。
あるとき、風俗嬢2人が立て続けに射殺される事件が発生。美智子は調査を開始する。
続いて、食品工場への恐喝はエスカレートしていき、さらに大企業への恐喝、テレビ局への怪文書投書などが続く。次第に、恐喝事件と射殺事件の関連が現れはじめる。

恐喝の手口はどう見ても幼稚で大雑把である。工場長ははじめ、自分の後ろ暗い部分を言い当てられていると思い自費で金を振り込んでいたが、あるとき「さんにんめのぎせいを出したくなければ2000まんえんを用いしろ」との投書が届く。3人目とは?射殺事件と食品工場は、一見何の関係もなく、食品会社の本社はばかじゃないのか、とつっぱねる。
美智子は、懇意の警部補秋月や、テレビ製作会社の浜口、フロンティアの編集長真鍋らと互いに協力および利用しあって、調査を進める。まだ詳細を知っているものはほとんどおらず、フロンティアによる独占記事だ。
そして別の大企業に恐喝が届く。裸で俯いている女性の写真が届き、そのあとは裸の女性が殴られている映像まで届く。しかもそれらはテレビ局宛にも届けられた。そのテレビ局は、視聴率欲しさに放送を決めた。警察への連絡は直前にるだけだ。日本中がこのニュースに注目しだす。
また、別の撲殺事件とも関連が見えはじめ、射殺事件、恐喝事件、撲殺事件の三つがどうやら同じものたちによる犯行だとわかる。

その後、警察も捜査を進め、2人の容疑者を確保した。吉沢末男と長谷川翼。2人とも、多額の借金を抱えている。どちらも事件に関わっていることは確かだが、果たしてどちらが2人の風俗嬢を射殺したか?

こんな感じで進む。この、2人のうちだれがなぜ殺したか?を突き詰めていくことが、終盤の最大の盛り上がりである。

で、取り調べの結果、医者のドラ息子である長谷川翼が逮捕される。おそらく極刑である。
吉沢末男は、殺人には関与せず恐喝等を手伝っただけとして比較的軽い刑に服することになる。

数ヶ月後、美智子は吉沢末男のもとを訪ねる。
そこで、彼に対して、本当はあなたが2人を殺したのだと推理をしてみせる。末男は、美智子の調査および洞察の深さに驚き、認める。
だがもう、長谷川翼で犯人は決まってしまっている。ここでの会話を秋月警部補に伝えたところで、結局は証拠不十分でどん詰まりである。
美智子は、末男がなぜそのような行動に走ったかを考え、確信をもち、本人に確かめたかったのだろう。
録音アプリは起動していたが、2人が別れたあと、美智子は録画データを消去した。


という話である。
だけども、なぜ殺したか?をちゃんと書こうとするともっと長くなる。そしてそこの長くなる部分こそが、この小説の読みどころだと思う。本当は末男が犯人だったのだ、というどんでん返しは、おまけにすぎないと思う。そこに至るまでの登場人物たちの奔走、思惑のすれ違い、末男の狡猾さと必死さとある意味での誠実さ、その他キャラクターたちのリアルなダメさ、などなどをたっぷり読んで味わえるのが本書のいいころだ。

0
2026年09月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

俺は視聴者の脳に酒を流し込んでいるんだ。犯人は、吉沢未男か長谷川翼のどちらかだ。どちらかが芝居を打っている。そして逃げ損ねた方は死刑なんだよ

重くて暗くて、こういうのがノワールっていうらしい。社会派でサスペンス。翼が犯人だったらいいと願いつつも、荷が重すぎる。
社会から、死んでようやく人権が与えられる、というのが刺さる。逃れられない環境の中で、自分たちが社会の底にいることも、歪に育っていることも気づかず生きている人の方が多数派なのか。それともぬかるみの中で陸地を探している人の方が多数派なのか。
事件はフィクション感が強いけど、テーマとしているところはそこまでファンタジーものではないのが重たい。
展開やモノローグが、時々ループしているような気がして、ちょっと疲れた。

0
2025年06月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

若い女性二人が殺された事件を追うフリーの事件記者・木部美智子。貧困ゆえに犯罪を繰り返してきた男が、医者の家庭に生まれながらちょいワルに過ごす医大生を殺人犯にしてしまうという話。貧困、崩壊した家庭が、筆者らしいタッチでドロドロと描かれる。木部さんの推理力が凄すぎ。

0
2025年09月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初めての作家さん。

こういう文体を読むのは初めてかも?
淡々と事実や状況が並べられていて、読みにくいと感じる人もいそう。
でもわかりにくい感じはしませんでした。

事件自体はわりと複雑と言うか、登場人物が多い。
巻頭に登場人物一覧があるので助かります。
それを見返しながら本編を読みました。

視点が変わるのが複雑化している要因かと思いますが
最後にすべて繋がるのですっきりします。
蟻の棲み家に関しては、犯人の意外性がなかったかな?
この人?って思ってた人が、途中犯人じゃないっぽくて、え?
ってなりつつ、やっぱり最後には犯人だったって言う。
共犯者のほうにびっくりしたお話でした。

「相手が自分と同じようにクズでないと気にいらないのがクズな人間の特徴なんだ」
って一文が好きですね。

0
2025年07月04日

「小説」ランキング