西永良成のレビュー一覧

  • 冗談

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    しかし、途中で挟まる喩えや論考の深み重みよ!作者の声で語られているところが多い小説、大好き

    一人一人の憎しみや罪が交錯していくと思ったら、いつのまにかそれら全てを時間が過去にしてしまう

    時代の狂気に従うのが上手い人間は降りるのも上手くて、時代の罪は被ろうとしない いじめていた側はしたことを覚えてないという話と同じ

    誰も他人のすべてを知ることも理解することも出来ない みんなルツィエの断片しか知らないで、そこに自分の人生を映そうとする それしかできないよな!ほんとに 真実を知るなんてできないから 自分にとってその人が何を意味するか/したか を考えないとしょうがないんだよ たとえ自分が加害者で その人が被害者だとしても
    色んな人が語り手になるけど、ルツィエは語らない 読み手もルドヴィークらと同じように、ルツィエの断片を見て、自分がそれをどう思うかを見出すしかないわけだ

    最終章のスピード感が素晴らしい

    野原に横たわるヤロスラフにルドヴィークが話しかけたところで終わりそうだったけど、そうはならなくて、ルドヴィークの故郷との和解と、歴史に見捨てられつつも続いていくしかない命の寂しさが描かれきったのがよかった

    最後の、ヤロスラフの心筋梗塞によって民謡演奏が1人ずつ欠けていく場面の物悲しさったらない

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    2026年09月06日
  • 新訳 モンテ・クリスト伯 3

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     夫婦喧嘩の章は芸術といいたい。今夜ばかりは、夫公認の妻の愛人には丁重にご退出願って、さぁ始めましょう。試合開始のゴングは、男爵夫人が眉ひとつ動かさずに発したこの言葉。

    「あなたご存知?ご自分が進歩なさったのを。普段はただ粗野なだけなのに、今晩は粗暴ですよ」

    わくわくしますね~。冷え切った男女間の金銭にまつわる醜い言い争い。持って回った言い回し。毒たっぷり嫌味の応酬。

     花束を贈るように毒を投げかける。もちろん丁重な返礼を忘れてはいけない。大切なことは面の皮の厚さ。庶民にはとても真似できない。洗練された夫婦げんかの理想像がここに。

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    2026年07月21日
  • 冗談

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    ネタバレ

    好きな女の子の気を引こうと軽率な冗談を書いたために人生が狂ってしまった男の話。1950年代から60年代のチェコが舞台で、当時の歴史を踏まえた上で読むとチェコの歴史と主人公の姿がダブる。タイトルは主人公が書いた手紙を指すとともに、人々を翻弄する歴史も指している。

    かつては冗談では済まされなかった手紙も自由を求める機運が高まる時代なら見逃される。しかし犠牲になった人生はやり直せない。誰もその償いをしてはくれない。ただ忘却されるのみ。かつては許されなかったことも時代が変われば問題視されない。価値観の変化、それが歴史の冗談だ。

    登場人物たちの行動がことごとくその意図を裏切られる展開はコメディのよう。極め付けはかつて自分を追放した旧友との再会のシーン。いじめの加害者がいじめた記憶なんてすっかり忘れているように、彼は自分が昔したことを、当時はそういう時代だった、の一言で済ませてしまう。そして若い世代から見たら、かつて反目した二人の中年男は時代遅れな同類にしか見えない。

    シニカルなユーモア精神が充溢している小説ながらラストシーンだけは切ない。消えていく記憶、戻らない時間を、演奏されたそばから消える音楽に重ね合わせるかのような描写は感傷的だが美しい。

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    2026年05月27日
  • レ・ミゼラブル 第五部 ジャン・ヴァルジャン

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    ネタバレ

    そういう展開かよ!

    最後の最後で、やっと報われた。

    すべてを失って、すべてを手に入れた。

    ジャン・バルジャン、

    良心に従うとはそういうことか。

    彼はジャベルをゆるし、マリユスとコゼットを助け、自ら身を引いた。

    なんという生涯。

    波乱万丈。


    物凄く長くて、物凄く読みづらかったけど、

    物凄く面白かった。

    一言では言い表せない。

    ジャン・バルジャン=イエス・キリスト?

    イエス・キリストの実際の人生をモチーフにしてるように感じた。


    読後感がものすごい。

    複雑な気持ち。

    悲しみと深い満足。

    無私というのは、こういうことか?

    全身全霊で生きるとはこういうことか?

    防塞の中でマリユスを助けた時、神を試したよね?

    天の配剤。

    その言葉がしっくりくる。

    心を振るわせられた。

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    2026年03月06日
  • 新訳 モンテ・クリスト伯 4

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    ネタバレ

    決闘のシーンでアルベールが歩いてくる描写で全て理解して泣いた。
    メルセデスに懇願されて受け入れたエドモンにも泣いた。
    復讐する中で、何故復讐するのかの根幹の部分にある人間らしさというか、根本の愛が出てきて感動してしまった。

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    2025年01月08日
  • 新訳 モンテ・クリスト伯 4

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    ネタバレ

    3巻半ばまで、丁寧に登場人物を深堀して書込み、将来の復讐譚としての伏線をしっかりと張り巡らすなかで、4巻、5巻と一気にたたみかけるカタルシス。まさに世界文学の中でも歴史に残る名作を存分に味わえた。復讐を果たす3人のうち、4巻では1名が対象となるが、もっと激しい責め立ての方がとも思ったが、これから始まる復讐劇の発端として置かれたものだろうか。4巻5巻は一気に読み通せるような素晴らしさ。

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    2025年01月06日
  • レ・ミゼラブル 第五部 ジャン・ヴァルジャン

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    ひさびさに小説を読んで泣いた。
    月並みな感想だけど、いろんなことに気付かされ、いろんな学びを得た。それが1番しっくりくる感想。
    ユゴーの望んだ社会が実現されますように。

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    2024年12月08日
  • 新訳 モンテ・クリスト伯 1

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    面白すぎる。読むのが止められなかった。
    物語としての完成度が高すぎる。
    各章で読みごたえがしっかりあった。
    メルセデスの名前が呼べないシーンはめちゃくちゃグッときた。

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    2024年12月03日
  • 新訳 モンテ・クリスト伯 1

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    発売日が今年の7月。新訳とあったが、なかなか難しい言葉が多く、フランス文学だからか表現が独特で…「苦しい」を何ページにも渡って表現していたり、1人1人が長くしゃべっていたりして、苦しい人には苦しいけど、おもしろさにもつながっていた。

    全5巻と聞いて、意識が遠くなっているが、この後どうなるのか、最後はどうなるのか…

    ただ、1巻は苦しい場面がほとんどずっとだった印象。それでも最後には復讐劇が予感されてきた。

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    2024年09月13日
  • 椿姫

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    ネタバレ

    想像以上に良かった。
    名作なだけあって色んな感情が一気に湧いてきた。
    アルマンのマルグリットに対する強い想いに発狂した時は、どうか落ち着いてと話を聞いてあげたくなった。
    マルグリットの立場もあり、凡庸な青年アルマンとの恋はあまりにも壁が大きくて高すぎた。
    それでもマルグリットがアルマンの強い想いに応えるように、持ち前の気高い性質の中で気品に溢れていく所と慎ましやかな女性になっていく所が哀しいと同時にあたたかさも感じる。
    アルマンが望む形にならなくて奔走し、お互いを犠牲にして二人だけの小さくても良いからという僅かな幸福と短い期間だけの素晴らしい暮らしに、その後の落ち方が辛かった。
    オペラも是非きいてみたい。

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    2024年03月13日
  • レ・ミゼラブル 第五部 ジャン・ヴァルジャン

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    流行りのファスト映画の発想とは真逆の、あらゆる細部を逃さずに徹底的書き込む「全体小説」。これでしか表現できないことがある。
    「なお、優れた『レ・ミゼラブル」論を書いたバルガス・リョサはこれに関して、この小説によってただちに社会が変わるといったことはないにとしても、「じぶんたちが生きている世界よりも正しく、理にかない、美しい世界」への郷愁と希求が個々の人のなかに植えつけられ、「人間の歴史が前進し、進歩という言葉に意味があり、文明がたんなる修辞的な偽装ではなく、野蛮を後退させる現実になる」という期待の弾みには確実になりうると述べているが、訳者はこの評言に全面的に賛成する。」(522頁、解説より)私もです。文学の力を改めて思い知らされた。

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    2024年01月21日
  • 冗談

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    ネタバレ

    メモ

    クンデラ2冊目

    政治的背景と運命に翻弄される男女を描いているのは存在の〜と同じだが、
    今作は登場人物の独白によって構成されている。

    政治、伝統、性愛、信仰に踊らされ、
    それぞれ皆、葛藤しながら不条理の中を生きていく

    何にせよ過去は修復出来ない、
    すべては忘却されていくだけ


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    2022年01月25日
  • 冗談

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    恋人への一通の絵葉書に宛てた冗談に狂わせられた人生について時代(世代か?)の価値に翻弄されながら、時にはかつて愛した女性への自身のノスタルジアから翻弄され、時には自分を追い込んだ相手への復讐を選ぶ主人公ルドーヴィク。
    愛した女性ルツィエについては実体性や物質性、具体性を失って伝説や神話に自分の中で変わっていくからこそ忘れられない程の痛み、そして自身の鏡となっていることに気付く。
    自信を狂わせたゼマーネクについては、彼への復讐へとその妻と不義理を交わしたが、目の前に現れたゼマーネクは既に年若い女性と密な仲になっており、復讐は果たせない。そんな中ルードヴィクは二重に間違った信念として信じた罪に対する贖罪は時代により忘れられその課題を代行するのは忘却であることを悟る。
    最終章では生まれ故郷に戻って翻弄から逃れた彼の姿があり、人間の想いとは翻弄から逃れる事が自身のためであるのだとも取れ、何か仏教に通じる無我か、レッセフェール的ななすに任せよの哲学性をこの東欧小説から感じた。

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    2021年10月10日
  • 冗談

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    自分が全く予期していなかったことがきっかけとなって、自分の人生が思いもよらなかった過酷な流れに巻き込まれていってしまう。そして、そんな自分の運命を左右したものに復讐を遂げようとするのだが、運命はそんな思いをあざ笑うかのように「お前にそんな復讐などできはしないのだ」ということを思い知らせる。
    人生とは何か。小説というものは、そんな誰にも答えることができないことについて、「答えのようなもの」を提供してくれる。

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    2021年03月17日
  • 冗談

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    ネタバレ

    クンデラは、「存在の耐えられない軽さ」を読んで、こんな小説があるのかと驚かされ、「不滅」を読んで、僕の中で永遠になった。
    中身はあまり思い出せないけども、不滅のような現代的でありかつ完璧な作品が有り得るのかというのは、大きな驚きであった。

    でも、そのせいでそれ以外の作品で幻滅することをおそれ、見る機会を失っていた。

    がために数年の間をあけてしまい、もはや不滅の内容といえば、冒頭のプールサイドの情景くらいしか思い出せないほど時間が経ってるけど、ときには小説も読みたい、と思って手をつけた。

    途中、かなりまだるっこしい、それが自分が歳とってせっかちになってる(若さのせっかちに比べて、中年のせっかちの無益さ、、、)せいなのかはわからないけども、上記の2作品を読んでるときには感じなかったような退屈さもあった。
    ヤロスラフのパートの唐突さがちょっと上手くないと感じた。

    しかし、読後感たるやなかなか見事で、37歳のルドヴィークにおいて、わずか3日間程度の出来事として結実する十数年、それを通して、
    ・記憶の持続と修復の可能性を信じているが、このふたつの信念はともに虚偽なのだ。真実はその逆であり、すべては忘却され、なにも修復されない。
    ・ひとの運命はしばしば死のはるか手前で終わる。
    という恐ろしい結論に至らせる。

    コストカの「この混乱した声のざわめきのなかで、あなたの声がまったく聞こえないのです!」に至る思考の流れもとてもよかった。
    どこまでが清らかな愛で、どこからが肉欲なのか、これを分けようとするから人は分裂する、が、しかし、同じなのかと言われると拒否したくなるものでもある。
    それらは同じだし別のものでもある、清らかな愛と肉欲とは分断されたものでもあるし繋がったものでもある、それは量子力学のように重ね合わせて存在している、という矛盾を認めなければ、雑音に思われてしまう。
    人には重ね合わせを導き出す波動関数という在り方を認めねばならないのだ。

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    2019年01月02日
  • 冗談

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    ミラン・クンデラ。学生時代、存在の耐えられない軽さが映画化されましたが、初の長編小説がこのようなものだったとは。知らなかった。登場人物の独白が、緊密に綾をなし、第7部のクライマックスに向けて螺旋状で、かつ拡散するこの世界及び人間実存の描写が最高です。感動しました。

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    2017年04月13日
  • 冗談

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    クンデラさんはこれで二冊目だけど、言いたいことは『存在の耐えられない軽さ』と同じ、かも、し、れな、い。個人的に、コストカさんの叫びで泣きました。また『存在の~』と同じく、直線としての時間を肌で感じる作品。そして円環としての幸せも。

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    2016年06月19日
  • 笑いと忘却の書

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    クンデラの作品の魅力にチェコの歴史が持つ政治的困難さを背景とした恋愛劇という要素があるのだが、これが何より素晴らしいのは恋愛の様相がそのまま政治的メタファーとして機能していることだ。愛し合う二人にも決して対等な関係は成立せず、多くの場合はその力関係と駆け引きに右往左往するその姿は、大国と小国の関係性と何の変わりもない。そして、時に政治は恋愛以上に個人的なものとして現れる。そのような状況に陥った時、人は比喩の重要性に、反語の持つ力強さに、変奏曲の様な多層的語り口の可能性に気が付くのだ。ひたすらに胸を打つ。

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    2014年09月23日
  • レ・ミゼラブル 第二部 コゼット

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    ネタバレ

    無実の罪で捕まった男のためにジャン・ヴァルジャンは自分だと名乗り出て再び捕まった後偶然訪れたチャンスによって脱獄し、ファンティーヌから託されたコゼットを連れて神に導かれるようにかつて助けた老人フォーシュルバンの働く修道院へと逃げ込む。修道院の生活の描写やそれに対する筆者の持論は読んでいて興味深かった。

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    2026年09月10日
  • レ・ミゼラブル 第四部 プリュメ通りの牧歌とサン・ドニ通りの叙事詩

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    ネタバレ

    怠惰の原因と怠惰の結果について知れたので、このパートはもうそれでいい。

    この文章に出会えただけで、この長編小説を読んだ甲斐があったというものだ。

    あとはこれ。

    「暗黒なる者を減らし、公明なる者を増やす」

    これぞこの世の真理だよね。


    どうやらマリユスとコゼットの恋愛はバッドエンドらしいな。

    それがとても悲しいです。


    この本は何が言いたいの?

    「ああ、無情」 ???

    惨めな人々の物語?

    悲しいです。

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    2026年03月01日