西永良成のレビュー一覧
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しかし、途中で挟まる喩えや論考の深み重みよ!作者の声で語られているところが多い小説、大好き
一人一人の憎しみや罪が交錯していくと思ったら、いつのまにかそれら全てを時間が過去にしてしまう
時代の狂気に従うのが上手い人間は降りるのも上手くて、時代の罪は被ろうとしない いじめていた側はしたことを覚えてないという話と同じ
誰も他人のすべてを知ることも理解することも出来ない みんなルツィエの断片しか知らないで、そこに自分の人生を映そうとする それしかできないよな!ほんとに 真実を知るなんてできないから 自分にとってその人が何を意味するか/したか を考えないとしょうがないんだよ たとえ自分が加害者で その人が被害者だとしても
色んな人が語り手になるけど、ルツィエは語らない 読み手もルドヴィークらと同じように、ルツィエの断片を見て、自分がそれをどう思うかを見出すしかないわけだ
最終章のスピード感が素晴らしい
野原に横たわるヤロスラフにルドヴィークが話しかけたところで終わりそうだったけど、そうはならなくて、ルドヴィークの故郷との和解と、歴史に見捨てられつつも続いていくしかない命の寂しさが描かれきったのがよかった
最後の、ヤロスラフの心筋梗塞によって民謡演奏が1人ずつ欠けていく場面の物悲しさったらない -
Posted by ブクログ
ネタバレ好きな女の子の気を引こうと軽率な冗談を書いたために人生が狂ってしまった男の話。1950年代から60年代のチェコが舞台で、当時の歴史を踏まえた上で読むとチェコの歴史と主人公の姿がダブる。タイトルは主人公が書いた手紙を指すとともに、人々を翻弄する歴史も指している。
かつては冗談では済まされなかった手紙も自由を求める機運が高まる時代なら見逃される。しかし犠牲になった人生はやり直せない。誰もその償いをしてはくれない。ただ忘却されるのみ。かつては許されなかったことも時代が変われば問題視されない。価値観の変化、それが歴史の冗談だ。
登場人物たちの行動がことごとくその意図を裏切られる展開はコメディのよう。極め付けはかつて自分を追放した旧友との再会のシーン。いじめの加害者がいじめた記憶なんてすっかり忘れているように、彼は自分が昔したことを、当時はそういう時代だった、の一言で済ませてしまう。そして若い世代から見たら、かつて反目した二人の中年男は時代遅れな同類にしか見えない。
シニカルなユーモア精神が充溢している小説ながらラストシーンだけは切ない。消えていく記憶、戻らない時間を、演奏されたそばから消える音楽に重ね合わせるかのような描写は感傷的だが美しい。
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ネタバレそういう展開かよ!
最後の最後で、やっと報われた。
すべてを失って、すべてを手に入れた。
ジャン・バルジャン、
良心に従うとはそういうことか。
彼はジャベルをゆるし、マリユスとコゼットを助け、自ら身を引いた。
なんという生涯。
波乱万丈。
物凄く長くて、物凄く読みづらかったけど、
物凄く面白かった。
一言では言い表せない。
ジャン・バルジャン=イエス・キリスト?
イエス・キリストの実際の人生をモチーフにしてるように感じた。
読後感がものすごい。
複雑な気持ち。
悲しみと深い満足。
無私というのは、こういうことか?
全身全霊で生きるとはこういうことか?
防塞の中でマリユスを助けた時、神を試したよね?
天の配剤。
その言葉がしっくりくる。
心を振るわせられた。 -
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ネタバレ想像以上に良かった。
名作なだけあって色んな感情が一気に湧いてきた。
アルマンのマルグリットに対する強い想いに発狂した時は、どうか落ち着いてと話を聞いてあげたくなった。
マルグリットの立場もあり、凡庸な青年アルマンとの恋はあまりにも壁が大きくて高すぎた。
それでもマルグリットがアルマンの強い想いに応えるように、持ち前の気高い性質の中で気品に溢れていく所と慎ましやかな女性になっていく所が哀しいと同時にあたたかさも感じる。
アルマンが望む形にならなくて奔走し、お互いを犠牲にして二人だけの小さくても良いからという僅かな幸福と短い期間だけの素晴らしい暮らしに、その後の落ち方が辛かった。
オペラも是非きいてみたい。
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Posted by ブクログ
流行りのファスト映画の発想とは真逆の、あらゆる細部を逃さずに徹底的書き込む「全体小説」。これでしか表現できないことがある。
「なお、優れた『レ・ミゼラブル」論を書いたバルガス・リョサはこれに関して、この小説によってただちに社会が変わるといったことはないにとしても、「じぶんたちが生きている世界よりも正しく、理にかない、美しい世界」への郷愁と希求が個々の人のなかに植えつけられ、「人間の歴史が前進し、進歩という言葉に意味があり、文明がたんなる修辞的な偽装ではなく、野蛮を後退させる現実になる」という期待の弾みには確実になりうると述べているが、訳者はこの評言に全面的に賛成する。」(522頁、解説より)私もです。文学の力を改めて思い知らされた。 -
Posted by ブクログ
恋人への一通の絵葉書に宛てた冗談に狂わせられた人生について時代(世代か?)の価値に翻弄されながら、時にはかつて愛した女性への自身のノスタルジアから翻弄され、時には自分を追い込んだ相手への復讐を選ぶ主人公ルドーヴィク。
愛した女性ルツィエについては実体性や物質性、具体性を失って伝説や神話に自分の中で変わっていくからこそ忘れられない程の痛み、そして自身の鏡となっていることに気付く。
自信を狂わせたゼマーネクについては、彼への復讐へとその妻と不義理を交わしたが、目の前に現れたゼマーネクは既に年若い女性と密な仲になっており、復讐は果たせない。そんな中ルードヴィクは二重に間違った信念として信じた罪に対する贖罪は時代により忘れられその課題を代行するのは忘却であることを悟る。
最終章では生まれ故郷に戻って翻弄から逃れた彼の姿があり、人間の想いとは翻弄から逃れる事が自身のためであるのだとも取れ、何か仏教に通じる無我か、レッセフェール的ななすに任せよの哲学性をこの東欧小説から感じた。
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Posted by ブクログ
ネタバレクンデラは、「存在の耐えられない軽さ」を読んで、こんな小説があるのかと驚かされ、「不滅」を読んで、僕の中で永遠になった。
中身はあまり思い出せないけども、不滅のような現代的でありかつ完璧な作品が有り得るのかというのは、大きな驚きであった。
でも、そのせいでそれ以外の作品で幻滅することをおそれ、見る機会を失っていた。
がために数年の間をあけてしまい、もはや不滅の内容といえば、冒頭のプールサイドの情景くらいしか思い出せないほど時間が経ってるけど、ときには小説も読みたい、と思って手をつけた。
途中、かなりまだるっこしい、それが自分が歳とってせっかちになってる(若さのせっかちに比べて、中年のせっかちの無益さ、、、)せいなのかはわからないけども、上記の2作品を読んでるときには感じなかったような退屈さもあった。
ヤロスラフのパートの唐突さがちょっと上手くないと感じた。
しかし、読後感たるやなかなか見事で、37歳のルドヴィークにおいて、わずか3日間程度の出来事として結実する十数年、それを通して、
・記憶の持続と修復の可能性を信じているが、このふたつの信念はともに虚偽なのだ。真実はその逆であり、すべては忘却され、なにも修復されない。
・ひとの運命はしばしば死のはるか手前で終わる。
という恐ろしい結論に至らせる。
コストカの「この混乱した声のざわめきのなかで、あなたの声がまったく聞こえないのです!」に至る思考の流れもとてもよかった。
どこまでが清らかな愛で、どこからが肉欲なのか、これを分けようとするから人は分裂する、が、しかし、同じなのかと言われると拒否したくなるものでもある。
それらは同じだし別のものでもある、清らかな愛と肉欲とは分断されたものでもあるし繋がったものでもある、それは量子力学のように重ね合わせて存在している、という矛盾を認めなければ、雑音に思われてしまう。
人には重ね合わせを導き出す波動関数という在り方を認めねばならないのだ。