あらすじ
党の粛清により、隣の男に貸した帽子を除いて、すべての写真から消滅した男。一枚の写真も持たずに亡命したため、薄れゆく記憶とともに、自分の過去が消えてしまうのではないかと脅える女…。7編のさまざまな物語を通して〈笑いと権力〉〈記憶と忘却〉〈愛と孤独〉といったモチーフが、繰り返しバリエーションを奏でながら展開され、精緻なモザイクのように編み上げられる、変奏形式の連作短編集。哲学的な洞察と独特のユーモアが詰まったクンデラ文学の原点であり、かつ哲学的な考察の集大成でもある作品。
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Posted by ブクログ
クンデラの作品の魅力にチェコの歴史が持つ政治的困難さを背景とした恋愛劇という要素があるのだが、これが何より素晴らしいのは恋愛の様相がそのまま政治的メタファーとして機能していることだ。愛し合う二人にも決して対等な関係は成立せず、多くの場合はその力関係と駆け引きに右往左往するその姿は、大国と小国の関係性と何の変わりもない。そして、時に政治は恋愛以上に個人的なものとして現れる。そのような状況に陥った時、人は比喩の重要性に、反語の持つ力強さに、変奏曲の様な多層的語り口の可能性に気が付くのだ。ひたすらに胸を打つ。
Posted by ブクログ
何度か投げ出そうかと思ったくらいつかみどころがなかったのだが、六、七部で、すぅっと収まるべきところに収まるような印象。何が収まったのかはさっぱり不明なのだけど。
チェコでかつ共産主義という幾重にも知らない文化を背景としてるため、徴みたいなのはほとんど拾えてないのだろう。しかし、よくわからないけどなにか好い感じの余韻がある。