若木未生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ続きが読めると思ってなかったので先日古本屋さんにコバルトの一式を譲り渡したばかりだった。久しぶりに読んで、どんな状況だったかを薄ぼんやり思い出しながら、こんなヘビーなところで中断されていたのかと呆れた(笑)が、続きが読めて良かった。しかし、また、さらにヘビーなところで中断している…。これじゃあ、希沙良も十九郎もイタすぎだろう。目の前にひどいケガ人がいるのに手当てせずに放置してるっぽい感覚。
読み始めた頃に比べて自分が随分年をとったせいなのか、それとも若木さんの方がそうなのか、両方なのか知らないけど、そんなに1ページにたくさん文字が詰まっているわけじゃないのに、ページを捲るのに時間がかかった作品だった。一言一言がヘビーなのね。
自分の中で深く意味を噛み締めるために反芻したり。
登場人物間の会話が、みじかい時間のほんの短い会話なのに、ザラッと抉るように痛かったり、何かを突いたり、信頼関係ってこんなにキツイものだったけ、大変だなと思わされたり。
そりゃ、書くのにも時間がかかったんだろうな、と思った。
搾り出して書いてるっぽい。
続編、ちゃんと、出ると良いな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ久し振りのオーラバの新刊で、非常に嬉しい。
とても待ち望んでいた。
オーラバは私が初めて出会った若木先生の作品で、とても大事にしているもののひとつだ。
子供だった私には、敵役に魅力があることが新鮮だった。
ただの善悪ではなくて、どちらも悪くなくて
一生懸命生きているだけで、それなのにうまくいかない。
そういったことがあるのだ、ということを知ったのもこの頃だ。
四劫という言葉は初めて知った。
月みたいだな、とふと思った。この世の理は、やはり根はひとつなのかもしれない。
無は終わりでなく始まり。
そう悟れるまでには、時間やいろいろなものが必要なのだろうけれど。
今までのシリーズの中で、私的十九郎の名台詞の中のひとつが
「大丈夫だよ」
である。
大丈夫だと言わない十九郎に違和感。
知らず知らずの内にその言葉を望み、そう言わせることを読者の自分までも押しつけてきたのか、と思った。
力なんてなくなってせいせいする、と言うには忍様に近過ぎるし
道の者として生きるには本家からは異端児過ぎる。
そんな彼に比して、
「忍の判断ミスだ」
と言える希沙良は、やはり特異で貴重なのだと思う。
「なぜ?」と問い、「神ではない、押しつけちゃいけない」
と思う亮介ともまた違う優しさだ。
”外”にいるからこそ出来ることや、わかることがある。
十九郎や諒に出来ないことが、希沙良や亮介には出来る。
「すぐに自己責任って言葉を使うのは危ない」と亮介の言葉ははっとした。
「幻滅しても見直させろ。どうせ一生のつきあいなんだから一度きりの合否判定じゃない」
というのも、さらりと言っているがすごい台詞だ。強いし、信じている。
それに対して、一生を信じられるようになった諒に心温まった。
どんどんそうやって、変わって行ければ良いのだと思う。
一番強いのは、やはり亜衣ちゃんだと思う。
共に戦う力が無く、事情は知っているのに出だし出来ず、待つことしか出来ない。
とても自分には耐えられそうにない。
久し振りの新刊は嬉しいけれど、この一冊で皓との決着がつくわけもなく
早く終わらせて欲しい様な、終わらせて欲しくないような、複雑な気持ち。
十九郎には、最後には心から笑って欲しいと思う。
希沙良のためにも、十九郎自身の為にも。 -
Posted by ブクログ
コバルトで書かれていた頃、リアルタイムに読んでました。やっぱり面白い。昔は、音楽に対する純粋さにあこがれて読んでいたけれど、大人になった今は"その場で響く音"だけではどうにもならない人間の複雑な感情の方にいっそうの面白みを感じます。
あの頃の自分には、繊細すぎて複雑すぎて読み取れなかったことが、今の自分が読み返してみたら少しは読み取れるようになってました。この本の表現は、言葉はまっすぐなのにどこか回りくどくて、センシティブな印象。でも、本当の人の感情ってそういう曖昧なものなのかも。
昔から思ってはいましたが、この人の書く文章ってコバルトで出すには繊細で複雑すぎるなぁ…と今になってもやっぱり思いました(笑 -
Posted by ブクログ
女性の髪を切って傀儡を作る妖者が現れる。そして、その影には…という話の前編。この巻から、妖者との戦いとか、術者同士の関係とか、一気にストーリーが加速してゆく「始まりの巻」だと思う。冴子の正体とか、忍との関係とかについて、本格的に追及が始まったりだとか。
諒と亮介が、亮介の部屋で、並んで腰掛けて話すシーンは、個人的にはシリーズ名場面ベスト5に入ると思う。「お前は卑怯者なんかじゃない」と、自分のせいで家族を喪った諒に言う亮介の優しさにジーンとしました。
そしてとてつもなく極道な所で終わってるという…。続きが出た今だから、平静を保って読めるような、非道なシーンで「続き」になっています。今だったら、十九郎はきっと携帯電話を持っているから、こんな展開にはならなかっただろうなと、ちょっと思ってみたり(笑)。 -
Posted by ブクログ
シリーズ初の番外編。地方に出張している時の諒と冴子の話、都内で妖者に狙われている女の子に出会った希沙良と十九郎の話などなど計4編を収録。女の子目線というか、女子高校生、中学生目線の話が多いですね。同じ作者のグラスハートとはまた全然違う文体ですが。
このシリーズは本当に、巻数を追うごとに、段々と人間の醜さだとか痛みだとか真に迫ってゆく作品だと思うので。それが魅力なんだけれど、まだ、妖者との戦いが本格化する前の、ある程度は平和なこの本の空気感が、今読むと本当に、懐かしい。希沙良と十九郎のまだ破綻ギリギリを渡っていない、じゃれ合えるような距離感とか。正体を明かさない冴子と、そこに切れ込めない諒の、喧嘩してるんだか助け合ってるんだか分からないやりとりとか。
オーラバスター、若木作品の独特の文体が好きな方はゼヒ。 -
Posted by ブクログ
十九郎と希沙良の深すぎる絆が初めて明かされた巻。ただのサイキック・アクションに終わらない、ナイーヴな人間関係が既にこの頃から見え始めていて、それも魅力。
後の十九郎の宿敵、皓が現れるといっても、まだまだシリーズ序盤。諒や亮介、冴子の掛け合いも楽しい。
オーラバは、何度読んでも「面白い」と思うから不思議だ。初めてこの物語に出会った時、私は中学生で、途方もなく影響を(良い意味で)受けた小説なんだろうな。自分が「面白い」と思う価値基準をむしろ、この小説に教わった気がする。
どれほど時間が掛かっても良い。私はこの物語の結末が、どうしても読みたいと、今も思う。そんなシリーズの第2巻。