住野よるのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
読後感は少し好き。でも、そこにたどり着くまでが長かった
読み始めてまず気になったのが、三歩の視点に近い文章なのに、固有名詞の「三歩」が一頁に何度も出てくること。主語を省略できる場面でも繰り返されるため、とても冗長に感じました。体言止めや、動作を一工程ずつ説明するような書き方、耳慣れない擬音も多く、文章のリズムがどうしても合わず、何度も挫折しかけました。
序盤は、空気が読めず、食いしん坊で、少し変わった三歩を「ほら、こういうところが可愛いでしょう」と作者から差し出されているようにも感じ、主人公にもなかなか好感を持てませんでした。人物の魅力を読者自身が見つける余地よりも、受け取り方を先回りして指定されているような感じが、かなり苦手でした。
ただ、最後の三話ほどで印象が少し変わりました。最初に感じたような、単に「三歩の可愛さ」を押し出すだけの物語ではなかったことが分かり、それまで積み重ねてきた日常や人との関係が静かに効いてくる終わり方には、思いのほか良い読後感がありました。ところどころに、ハッとさせられるキラキラ光るような言葉もあり、そこはとても素敵でした。
だからこそ、その良さが見えてくるまでに文章の癖で脱落してしまう読者も多そうで、少しもったいなく感じます。最後まで読んで作品への印象は改善しましたが、固有名詞の多用をはじめとする文体の読みにくさは最後まで変わらず、続編を手に取る勇気は今のところありません。
ちゃんと読み終えてよかったとは思う。でも、もう一度この文体を読むのはつらい。…そんな一冊でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ大学時代から10年以上仲が良い男二人(果凛、響貴)と女一人(千鶴)。
果凛(男)はすでに結婚し、響貴はずっと千鶴に片思いを10年以上続けている。
知ってながら、千鶴は別の人と婚約し、なんとか響貴に告白してもらって振って結婚式に来ないでもらおうとする。
他の仲間(大賀さん:3歳年上同級生で別の大学から来たITベンチャー、舞:旅行計画者でお菓子会社の商品企画部、華生:女児二人の親で売れっ子イラストレーター)と旅行にいく。いい感じになるものの告白はない。クリスマスもデートさせるもなにもなく。
年が明け、千鶴と響貴以外で集まる。全員くっつけようとしている。婚約者がいることを果凛が明かす。婚約者より千鶴と響貴がくっつくべき。
千鶴の誕生日に、他の仲間が一人30分ずつ千鶴とデートをするイベントをやる。舞がアテンドし、一人目は果凛がチョコレート店で二人目は華生が楽器屋、大賀さんがアウトドアショップ、舞が文房具屋でノートを貰い、最後響貴とは家具を買う。新居で婚約者と使う家具だ。千鶴は響貴に結婚を報告し、祝福された。
果凛は響貴と腹を割って話す。響貴は夢や目標もない、千鶴は失恋するたびに響貴の前で泣く。身内の前では泣けないから身内にはならない。でも、それが一番、今の関係が一番。
結婚式で千鶴はみんなに向けた話をすると見せかけて、内容に響貴向けを忍ばせる。終わって引っ越しの時に告白する。 -
Posted by ブクログ
正直50ページくらいでまとめられたのでは?と思うくらいゆったりとした展開で物語が進む。
だから「この作者さんが好き!」とか「じっくり読みたい!」といった人以外だと前半部分で挫折してしまうかも。
恋愛小説といっても、「君の膵臓をたべたい」みたいな劇的なことはいっさいおこらない。
片思いしている主人公がいて→その女の子と旅行にいって→なんやかんやありました
っていうのが超ざっくりストーリーなのだけど、その「なんやかんや」もめちゃくちゃ些細なイベントで割と退屈してしまう。この作者さんはエンタメ系というよりわりと純文学テイストが好きっぽい。
と、ここまでマイナスポイントばかり書いたわけだけど、のっぺりとしたストーリーに反して人物の心情描写はかなり丁寧に描かれているので、高校生の主人公たちの瑞々しい感情を通じて、爽やかな読書感を得ることができると思う。
かくいう自分も「つまんねー」も思いながら読んでいくうちに、ラストに近づくころには主人公たちが好きになってきて、「もっと読み続けていたいな」と思えた。特にラストはよくて、ちゃんと恋愛小説していたのが好印象。
まとめると、ストーリーは退屈。が、かなり丁寧にかかれているので、ゆっくりまったり読みたい人にはオススメできそう。⭐︎三つ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ住野よるさんの『腹を割ったら血が出るだけさ』です。
綺麗な表紙に釣られて買ってしまいました。
主人公の女子高生糸林茜寧は、優しい家族、多くの友人、優しい恋人に囲まれ、一見すると充実した毎日を送っています。しかし、「誰からも愛されたい」「嫌われたくない」という一心から、常に相手の望む「理想の自分」を徹底的に演じ続けている姿でした。
心の中で常に「死にたい」と愚痴り、自身の腹黒さや計算高さを自覚している茜寧は、偽りの自分を演じ続ける日々に息苦しさを感じています。そんな彼女にとって唯一の心の救いは、『少女のマーチ』という一冊の小説でした。その小説には激しい共感を抱いています。
ある日、茜寧は街中で、『少女のマーチ』に出てくる登場人物〈あい〉と全く同じ容姿・服装・足音を持った人物とすれ違います。驚いて声をかけると、その人物宇川逢は自分の名前も「あい」だと言いました。
逢は、ライブハウスで働く成人男性であり、非常に端正な顔立ちをしており、常に女装をしています。茜寧たちとは対照的に、「裏表を持たず、自分の感情やありのままをストレートに表現できる人間です。
茜寧は、逢に出会ったことで。もし自分がこの小説の主人公のように行動していけば、いつか自分も物語のように救われるのではないかと考えるようになります。彼女は自分の本心を隠したまま、純粋で真っ直ぐな逢と「友人」になり、彼との時間を重ねていきます。
しかし、表裏のない逢は、屈折した他人の内面を汲み取ることが極めて苦手でした。彼は良かれと思って真っ直ぐな言葉を投げかけますが、本音を隠して立ち回る茜寧にとっては、その純粋さが辛い時もありました。
そんな茜寧を上村竜彬という茜寧の幼馴染の少年は見つめています。ひねくれた性格で、他人の失敗や醜い部分を暴くことに執着しています。茜寧が周囲に合わせるために見せる「嘘」を冷ややかに見つめています。
一方、後藤樹理亜という人物に、逢といったアイドルのイベントで茜寧は会います。
樹里亜は人気アイドルグループ「インパチェンス」のメンバーです。彼女もまた、自分が作り上げた「アイドルとしての完璧なストーリー(偽りの自分)」を演じることでしか自分の価値を保てず、疲れている人間でした。(という風に私には見えました。)アイドルとしての自分を演じ続けることに限界を迎えていた後藤樹理亜は、SNSでのファンの自分に対する解釈の違いから精神的に追い詰められていきます。そして、大切なコンサートの当日に、樹理亜はついにステージを放棄して姿を消してしまいます。
また、茜寧も張り詰めていた糸が限界を迎え、街中を歩き続けて、ついに走る車に身を投げようとします。そして逢によって助けられます。
逢に怒鳴られた茜寧は、ついにこれまで隠し続けていたドロドロとした激情を逢に対して激しくぶちまけます。「裏表も持たないでずっと本当の自分のまま生きてる奴が、私のこと分かった風に止めるな!」
また、アイドルの樹里亜は、その場に立ち会った竜彬にこう話して、ステージにまた戻ります。「私もさっきようやく分かった。真実なんてどこにもないから、あなたが決めて」
また、今まで冷静に茜蜜や樹里亜を観察していた竜彬に関しても、劇的な成長などが描かれることもありません。
ちょっと地の文章がわかりずらく、解釈の難しい小説でした。タイトルである『腹を割ったら血が出るだけさ』って。本当の自分を曝け出したところで、傷ついて血が流れるだけで、分かり合えたり救われたりするわけではない、ってことなのしれません。
茜蜜は逢に激昂し、全てをぶちまけますがそこに爽快感もカタルシスもありません。中身を曝け出しても、世界が劇的に優しくなるわけではありませんでした。腹を割っても、泥臭い現実の中で静かに生きていくしかない。
そんな葛藤を感じさせる青春小説でした。恋愛小説じゃないんだよね。