トマ・ピケティのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ一般的に、ここ1世紀でだいぶ不平等が解消されたような印象があるが、『世界不平等リポート』のデータで見ると中間層が増えただけで資産ゼロの貧乏人の割合は実はぜんぜん変わっていない。フランスもフランス革命の栄光を自慢するほど平等にはなってない。
それでも全体がゆるやかに平等へと向かっているのも事実。例えば平等世界一を誇るスウェーデンも、第一次世界大戦までは税金納付額に準じた票数を富裕層で割り振って貴族が首相をつとめる国だったが、識字率の高い労働者階級が参政権運動に励んだ結果1932年社会民主主義系の政権が成立し、今のように変わっていった。スウェーデンが特殊なのではない。社会構造は永続的な物ではなく -
Posted by ブクログ
時間が有り余っている学生時代に読めておけて本当に良かった。
r > g の原則を知らずに社会人として社会に放り込まれていた可能性を考えると怖くなる。
中々裕福になれないやるせなさを感じるも原因は分からない。なぜなら資産の大半は上位層がガッツリ確保しており、それを使って芋ずる式に不労所得を蓄えているのだから。
歴史から得られる原則と、信用性の高い数字と向き合う大切さを学べた。
様々な事象や通説が重なりあって経済は動いている。
あとは読解力がかなり増した気がする。本書を読む前後では、他の本を読む時の理解力が断然に違う。
本書に出会えたことに感謝を。 -
Posted by ブクログ
5年以上、積読だった本。きっと一人じゃ読まないままだ、と思い友人を巻き込みたった二人の読書会を企てました。二週間に一部ずつ読んで、週末2時間zoomで語り合うという方式です。全4部構成を4回で読み終わりました。ものすごい達成感!ノートを取りながら読書したの学生以来か。夜、夕食後に自宅で集えるzoomという仕組みに感謝。いやいやこの試みに付き合ってくれる友人の存在することが最大の幸せ。大昔、パルコのコピーに「本読む馬鹿が、私は好きよ。」というのがありましたが、本を読む馬鹿仲間は宝物です。この読書会と同時に読んでいた「人新世の資本論」でピケティの新刊「資本とイデオロギー」が出ることを知り、次のテキ
-
Posted by ブクログ
フランス人経済学者による、資本主義について書かれた本。
著者は、r>gという不等式を使って、過去に蓄積された富が、労働賃金の成長より上回ることを問題視している。フランスをはじめ、イギリス、ドイツ、イタリアなどのヨーロッパ諸国、あるいは米国、日本などに関する豊富なデータをもとに、論理を展開しており、論理的で説得力がある。問題解決策として、累進的な資本税の導入を主張している。
マルクスやレスター・サローと資本主義に関する分析は大きく違わないと思うが、不完全にしろデータの裏付けがある分、より学術的アプローチに挑戦していると言えるのではないか。
「資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生 -
Posted by ブクログ
「脱商品化」という考え方。
金で買えないものはない、という定型句を聞いたことがあるが、こうした考え方に対するアンチテーゼである。「売らない、商品にしない」という心掛けが試される。
というのも、超金持ちはその元手となる金を運用してさらに増殖させていく。だが、幾らお金があっても「売る側が〝平等“を演出する」ことで、超金持ちも一般も同じになるのだ。
例えば「お一人様一個まで」。これは売る側の共産主義であり配給制に近い。金さえあれば幾らでも買い占められる商品ではなく、皆に行き渡る商品に脱商品化されているわけだ。
他にも「私たちは買われた」ではなく、「私たちは売らない」ことが徹底できるなら、金持ち -
Posted by ブクログ
読むのにかなり根気が必要だったが、面白い箇所は非常に面白い。なにより平等への道が遠く険しい事、この200年の間に、想像される平等に近づいている事、過去の悲惨な出来事を経て平等が形成されているという事だ。個人感覚では税金を安く抑え、手元の残りをできるだけ残すことが正義に思われるが、社会全体で考えると、そりゃ税収が多い方が国として発展する。国同士の争いだって、国家にお金があるかどうかでも決まる。戦争の結果として、どのように資本が再分配されたか。
専門用語や前提の歴史知識が必要で、中々読み進めにくい本であったが、新たな気づきや視点を提供してくれる良書である。だからといって1000ページを越える過 -
Posted by ブクログ
今年の初めに出版されたばかりの本。日米同時発売だがら、翻訳のタイムラグもなく、まさに今の社会状況についての本である。ピケティという人は初めて知ったが、サンドルは読むたびに感心させられる刺激的な哲学者で、彼の名前に惹かれて、ほとんど対談であることも意識しないで購入した。全体としては互いに対するリスペクトに満ち、わかりやすい話し言葉で展開されており、とても気持ちよく読むことができた。
ふたりの意見は必ずしも一致しているわけではなく、いくつかの側面で激しく対立するが、共通している認識も多く、その共通の部分について、僕自身もなるほどと思い、確かにそのとおりと思うところが多かった。それはこの本の中