ヘミングウェイのレビュー一覧
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ついに大物のカジキを釣り上げたと思った矢先、幾度もサメの襲撃に見舞われる老人。怪我を負いながらも決して諦めず、できることをやり抜こうとするその姿に心を打たれた。困難に直面しても立ち向かい続ける姿勢は、見習うべきものがある。サメと対峙するたびに、老人の胸中にある思いが少しずつ変化していく描写も印象的だった。老人の独り言が多く綴られており、その心の内側が丁寧に伝わってくる。見送ってくれた少年への「一緒にいてくれたら」という思いから、二人の間にある深い信頼関係を感じると同時に、共に行けなかった寂しさも滲み出ていた。
たとえ思うような成果を得られなくても、最後まで自分にできることを続ける。その大切さを教えてくれる作品だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「太陽や月や星を殺さなくていいのは嬉しいことだ。海で暮らし、これぞ兄弟と思える魚たちを殺す、それ以上何を望むことがあろうか。」
今更ながら、ちゃんと世界の名作を読もう、と手に取った。
まさか、物語のほぼ全てが、巨大な魚、サメたち、そして海そのものと老人が戦う内容とは知らなかった。
鮮やかな海の描写が素晴らしい。
老いても溢れる生命力に突き動かされる老人。
海の寛容や理不尽を全てありのままに受け止め、ただひたすらに生きる。
そういう風に生きれたらシンプルで幸福なのかな?
拙い想像はできるけど、あまりにも解像度が粗く、私は、大地や自然、海から遠い場所で暮らしてしまっているんだなぁ… -
Posted by ブクログ
勘違いしていた。タイトルや序盤の雰囲気から、海と老人の人生を重ね合わせたり、少年との交流を描いたりする寓話的な話なのかと思っていたら、良い意味で裏切られた。
実際にそこにあったのは、一人の老人と一匹の魚が一対一で対峙する世界。
それが圧倒的な迫力と熱を帯びてハードボイルドに迫ってくるせいで、その一人と一匹の世界に引きずり込まれてしまうような熱さを持った作品だった。
そうたらしめているのは、恐らく綿密な洋上の情景描写と、それに立ち向かう老人の意識の流れのリアルさだ。
俯瞰した視点で海の情景を細かに描写する一方で、突然老人の頭の中に入れられたかのように、彼の巡る思考や混濁する意識さえも描かれる。そのせいで、文字から情景が浮かび上がりながらも思考をジャックされ、作品の中にのめり込まされてしまった。
個人としてはこの作品に教訓めいたものはあまり感じず、ただ「友とも言い得た巨大な魚」と老人の、命をかけたタイマンから何を思うかは自由、といった印象だ。
いつの間にか手に汗を握り、生唾を飲み込んでしまうような、そして読んだ後も、老人と魚が相対する世界に一人取り残されたような感覚が燻り続ける傑作でした。 -
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ネタバレ序盤はやや退屈に感じられるも、巨大カジキとの格闘が始まるあたりからは惹きこまれた。不思議な疾走感あり。漁に出てからは、老人の独り言のみで物語が進む。場面もずっと変わらない。これだけ要素を削ぎ落として魅力的な物語に仕上がってるのは凄いと思った。シンプルな美しさを感じた。心理描写が丁寧なのも良かった。カジキとの格闘は他の誰にも見えず、存在するのは骨だけ。他者には何も理解されず、高い評価を受けることもない。お金にもならない。それでも、老人は自分の中で納得できる戦いをしたことで、満足して人生を終えたように感じた。自分の信念や矜持を貫く幸せというのを感じた。
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ヘミングウェイがパリで当時の妻と貧しいながらも執筆に励んでいたときのお話。一冊を通して、ヘミングウェイのパリでの生活が描かれていたものの、編ごとに独立したような構成になっていたので、入り込む難しさがあった。(あと登場人物多かった…)フィッツジェラルドが少し滑稽に描かれていたのは、やっぱりライバル心からだったのかな…こんなに関係が深かったとは知らなかったので面白かった。あとがきを読んで、亡くなる3ヶ月前に当時の妻にこの本を書き上げるために助けを求めていたと知り、最期に人生全体の自伝を書くのではなく、駆け出しの時代に思いを馳せていたことに、言いようのない切なさを感じた。
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本作はヘミングウェイの意気込みとは裏腹に発行当初から不評だったというが、確かにヘミングウェイにしては少し冗長的で、普段の力強さを感じなかった。
でもそれは、常に力強く生きてきたヘミングウェイが、戦争を経てヴェネツィアで18歳の美しい娘(アドリアーナイヴァンチッチ)と出会い、肩肘を張らず本来の不器用だが繊細なヘミングウェイに束の間戻れたからではないだろうか。本作発表と同年に「老人と海」に取り掛かったそうだ。やっと肩の力を抜いて生きようとしたヘミングウェイだったが、本作が不評だったこともあり、「俺はまだまだいけるんだぞ」と渾身の力を込めて描いた傑作が「老人と海」だったのではないか、などといったヘミングウェイの人生を感じた。
もし「河を渡って木立の中へ」が絶賛されていたなら、もしかすると老人と海は生まれていなかったかもしれない。でも、ヘミングウェイは人生の最後を安らかな気持ちで穏やかに終えることができていたかもしれない。人生は「たられば」の連続だが、「今をただ生きる」しかないのだとヘミングウェイから教わった。
ヘミングウェイの戦争への悔恨、反戦への願いを強く感じ、小説というよりはヘミングウェイ自身の独白のような作品だった。
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ネタバレ結構よかった!自然の厳しさに適応していく姿勢は、日本人の感性にも合う気がする。
特にラストがとってもいい!!!
魚を食べ尽くされた後に、街の明かりが見えるシーン。
そこまでの寂しさ、喪失感が一気に温度を帯びて、「やり切った」という静かな達成感に変わる。すべてを失っても、何かを得たような余韻がある。
この「無駄に終わったのに満たされる感覚」、よくわかる。何も得られなくても頑張ったあと、悲しいというより「やっと終わった!」という晴れやかさが残る。それを描き出しているのが素晴らしかった。
自分が一番楽しめた作品が、「男らしさ」を強調した文学だったという皮肉(笑) -
Posted by ブクログ
ネタバレ大きく4つの段階で物語が展開していく。
最初は老人と少年の会話から始まる。老人は漁師だが、84日間も魚が釣れず、周囲の漁師からは「運に見放された」と嘲られている。そんな中でも少年だけは変わらず老人を慕い、その温かさが物語の基調となっている。
次に、老人が海へ漕ぎ出し、これまでに見たこともないほど巨大なカジキとの闘いが描かれる。この場面は老人の「独り言」を中心に進む。魚や自分自身に語りかけ、少年がここにいてくれたらと弱音を漏らしつつも、自らを奮い立たせる。孤独とどう向き合うかが印象づけられる。
やがて老人はついに魚を仕留める。すでに漁に出てから3日も経ち、老人は極度に疲れ切っている。魚を船にくくりつけ港を目指すが、その途中でサメの襲撃を受け続ける。捕らえた魚は少しずつ食い尽くされ、老人は力を振り絞って応戦する。この場面は第三者的な語りが前面に出ており、老人がすでに限界にあることを示している。
最後に港に戻ると、魚は骨だけとなっていた。その大きさに驚く漁師たちをよそに、老人は小屋で眠り、少年がそっと見守る。物語は再び二人の会話に戻って静かに幕を閉じる。
全体を通じて、物語を進める主体は老人の状態に応じて「会話」から「独白」、そして「出来事」へと移り変わり、最後に再び「会話」へ戻る。この構成が自然な流れをつくりつつ、場面の切り替えを鮮やかに示している。
結末は「大魚を持ち帰る」というハッピーエンドではなく、「骨だけを残して港に戻る」という現実味のある形で描かれる。そこには敗北の苦さと同時に、人間の尊厳を失わない姿勢やリアリティへのこだわりが感じられる。