【感想・ネタバレ】老人と海のレビュー

あらすじ

巨大魚と格闘する老漁夫の姿を通して描く、現代の神話。

20世紀アメリカを代表する作家、アーネスト・ヘミングウェイ。
彼の生前に発表された最後の小説にして、ピュリッツァー賞・ノーベル文学賞を受けるなど世界的に高い評価を得た『老人と海』。
劇作家・批評家の福田恆存によるその翻訳は、日本でも初訳(1955)以来、改訂を重ね、累計500万部を超える大ベストセラーとして読み継がれてきました。
本書は、いわば、日本語訳としてこれまで最も愛されてきた福田訳の、待望の新版です。

今回新たに、ヘミングウェイ作品および『老人と海』が日本でいかに読まれてきたかを示す、作家たちのエッセイを巻末に収録。
〈一生に一度は読みたい、文学の底力を示す名作〉として今も親しまれ続ける小説の、装い新たな復刊です。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

大きく4つの段階で物語が展開していく。

最初は老人と少年の会話から始まる。老人は漁師だが、84日間も魚が釣れず、周囲の漁師からは「運に見放された」と嘲られている。そんな中でも少年だけは変わらず老人を慕い、その温かさが物語の基調となっている。

次に、老人が海へ漕ぎ出し、これまでに見たこともないほど巨大なカジキとの闘いが描かれる。この場面は老人の「独り言」を中心に進む。魚や自分自身に語りかけ、少年がここにいてくれたらと弱音を漏らしつつも、自らを奮い立たせる。孤独とどう向き合うかが印象づけられる。

やがて老人はついに魚を仕留める。すでに漁に出てから3日も経ち、老人は極度に疲れ切っている。魚を船にくくりつけ港を目指すが、その途中でサメの襲撃を受け続ける。捕らえた魚は少しずつ食い尽くされ、老人は力を振り絞って応戦する。この場面は第三者的な語りが前面に出ており、老人がすでに限界にあることを示している。

最後に港に戻ると、魚は骨だけとなっていた。その大きさに驚く漁師たちをよそに、老人は小屋で眠り、少年がそっと見守る。物語は再び二人の会話に戻って静かに幕を閉じる。

全体を通じて、物語を進める主体は老人の状態に応じて「会話」から「独白」、そして「出来事」へと移り変わり、最後に再び「会話」へ戻る。この構成が自然な流れをつくりつつ、場面の切り替えを鮮やかに示している。

結末は「大魚を持ち帰る」というハッピーエンドではなく、「骨だけを残して港に戻る」という現実味のある形で描かれる。そこには敗北の苦さと同時に、人間の尊厳を失わない姿勢やリアリティへのこだわりが感じられる。

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2025年10月03日

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