うんうん、やっぱり面白い!! このシリーズはホント楽しめますねぇ。 前巻で都落ちする義経主従が無事落ち延びることができるように、攪乱作戦で大活躍した主人公の白狐魔丸。 まるでその疲れを癒すためかのように85年という長~い眠りにつき、ようやく目覚めたところから物語は始まります。 普通の人たちならそんなに長生きできなかった時代だったろうけれど、白狐魔丸とお師匠さんの2人だけ(1人と1匹だけ と言うべきか?)は、まるでその年月をひょいっと飛び越えてしまったかのように、ほとんど変わりない姿で登場します。
で、変わっていないのは2人だけで、世の中の方はめまぐるしく変化していて、義経は平泉で討たれちゃっているし、その命を出した兄頼朝もとっくにあの世へ行っちゃって、北条得宗家が栄華を極めている(?)鎌倉時代です。 前編では京都周辺をウロウロしていた白狐魔丸だけどこの物語では日本各地(除く東北 & 北海道)をあちこち歩き回ります。
情景描写やら風俗描写なんかは結構史実に基づいているんじゃないかと思うんだけど、最後の方でいわゆる「義経不死伝説」の極め付け、「義経≒チンギス・ハーン説」まで取り入れちゃっているので、大人が読む分にはかなり楽しめちゃうけれど、子供が読んだらどこまでが史実に近い話でどこからがいわゆる「ファンタジー」なのか、混乱しちゃうきらいはあるんじゃないかと思わないでもありません。 それでもこんなに楽しめる物語だったら KiKi は身近な子供に薦めちゃうだろうなぁ・・・・・(笑)
人間に興味はあるものの、「武士」という特殊な種族(?生き物?)はどうも苦手な白狐魔丸。 でも扱っている時代が時代なだけに武士と関わらずに人間探究な~んていうのはできるはずもないわけで・・・・。 そして、そんな苦手な武士の中にも白狐魔丸と親しくなる「ちょっと変わった武士」がいたりもして、そんな武士達と白狐魔丸の関係が物語を進めていきます。 前編ではそれが「佐藤忠信」だったわけだけど、今回は六波羅探題南方の北条時輔の家臣、「市谷小平太」とひょんなことから親交を結ぶことになる白狐魔丸です。
そして所謂「二月騒動」で市谷小平太が亡くなる直前に、彼が描いた最後の絵を「・・・後の国にいる『竹崎季長』という武士に届けてほしい」と頼まれます。 ここから白狐魔丸の全国人探しの旅が始まるわけですが(何せ「・・・後の国」と言えば丹後、越後、備後、豊後、筑後、肥後とある)、その道中で彼は生まれ持っていながらも本人(本狐)にはその自覚があまりなかった「気の力」をみるみるアップさせていきます。
そして最後の最後には、第2回の元寇の際に「神風」を知らず知らずのうちに巻き起こすまでに至るのですが、そうなるまでには白狐魔丸と同じ「人に化けることができる狐」である雅姫と出会ったり、元からはるばるやってきた「人に化けることができる狼」であるブルテ・チョノと出会ったりと、不思議な存在もどんどん増えてきて、「不思議な存在」のオン・パレード状態になります。
反面、第1回の元寇で「神風」を起したことにより反省モードに入ってしまった白狐魔丸の師匠、白駒山の仙人は「穢れを清めるため?」か天竺への旅に出てしまい、仙人びいきだった KiKi にはちょっぴり残念な顛末もあったりしました。
いずれにしろこの物語、歴史の節目節目で目覚める白狐魔丸が歴史上の偉人と邂逅しては「人間の歴史とは何ぞや??」ということを狐目線で考察する(← 実はこの目線が狐目線であるようでいて、いわゆる一般大衆目線に近いものと推察できる)という体裁で貫かれていく物語になっているようです。 そして「元寇」の次はどうやら「鎌倉幕府の滅亡」へ進むらしい・・・・・。 早速次の物語に進んでみたいと思います。