宇佐川晶子のレビュー一覧

  • エヴァンズ家の娘

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    ネタバレ

    3世代にわたる、どこかいびつな人生と対峙している女性たちの物語。

    はたから見るとそれぞれ自己中心的と思えることばかりしているような彼女達だが、人間は完璧ではないので、それぞれが折り合いをつけて生きていくしかない。そんな息苦しい現実とその中に時折のぞく光をうまくドラマに仕立てた筋の中に過去の少女失踪の謎が挟み込まれながら進んでいく過程がおもしろい。

    ありがちではあるが全く予想していなかった背景に、そうきたかと思った。がらりと物語の見え方が変わった瞬間。その瞬間までその線は完全にノーマークだった。

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    2018年06月23日
  • ありふれた祈り

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    ★3.5

    少年達のひと夏の思い出は、キングの『スタンド・バイ・ミー』や『IT』を彷彿とさせ、取り返しのつかない過ちを回顧する語りは、クックの『記憶』シリーズを思い起こさせる。ただクック作品とは違い、ミステリやサスペンス色はかなり薄く、事件は起きても爽やかさ(と言うには死が身近すぎるが)が前面に出ている印象だ。

    主人公兄弟の忘れ得ぬ夏は一人の少年の事故死から始まり、あまりにも痛ましい悲劇を経て否応なく子供達を大人へと成長させる。子供らしい好奇心がひとつの悲劇を生むきっかけを作ってしまうくだりは読んでいて痛ましいが、この後に迎える家族の再生と奇跡はその悲劇ゆえに心に響くものがある。

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    2017年09月17日
  • ありふれた祈り

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    ドイツ系住民の多い、ミネソタの田舎町の殺人。

    牧師の父とその家族が経験する夏。
    引き込まされる。

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    2017年02月04日
  • ありふれた祈り

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    他の方のご指摘の様に、スティーブン・キングの
    「スタンド・バイ・ミー」っぽい事は否めないかも。
    ですが、逆を云えばああいうテイストが好きならば
    十二分に楽しめる事間違いなしです。

    何より、行間から匂い立つような夏の強い日差し、
    カラカラに乾いた砂や土、ひんやりとした石切り場、
    咽るような草の香りに、汗。
    著者の表現力の素晴らしい事!
    死や悲しみ(差別的な事も多々)を根底に置きながら、
    美しくまとめ上げ、そしてこのさわやかな読後感よ。
    おお、神よ(笑)

    あと、地味に食べ物の描写が好きでした。
    ガスがドラム家の台所で作るポテトとチーズの料理が
    美味しそうです食べたいです。

    解説を読んで知った

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    2016年12月30日
  • ありふれた祈り

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    いろいろな事を考えさせられる深い本だった。ミステリーというよりも「祈り」と「赦し」の本。背景描写も登場人物の心理描写も 素晴らしく静かに落ち着いて心に訴えかけるのは 翻訳も良かったからだろう。ただ自然信仰と神道と仏教を足して割ったような考え方を持ってる私には どうしてもキリスト教の教えを骨にして書かれているこの本の作者が伝えたかったであろう事は 心の底からは やはり理解できない部分が残る。それでも 読んで良かったと思える 深い本だった。

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    2016年08月28日
  • ありふれた祈り

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    トマス.クックが好きなひとははまる。確かに、ミステリー色は薄いが、アメリカの片田舎の都市のよき文化と悪しき文化が匂いたつ。なぜか、行ったこともないのに、懐かしい気がするのはどうしてなんだろう。

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    2016年06月21日
  • ありふれた祈り

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    ボビー少年と旅の人の死、この二つの死の真相については結局語られなかったな。正し過ぎる人は周囲の親しい人達を追い詰めてしまう可能性があるのかも。

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    2016年03月03日
  • ありふれた祈り

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    コーク・オコナーのシリーズは未読のまま。ウィリアム・ケント・クルーガーの作品を初めて読む。

    あの夏のすべての死は、ひとりの子供の死ではじまった――。1961年、ミネソタ州の田舎町で穏やかな牧師の父と芸術家肌の母、音楽の才能がある姉、聡明な弟とともに暮らす13歳の少年フランク。だが、ごく平凡だった日々は、思いがけない悲劇によって一転する。家族それぞれが打ちのめされもがくうちに、フランクはそれまで知らずにいた秘密や後悔に満ちた大人の世界を垣間見るが……。少年の人生を変えた忘れがたいひと夏を描く、切なさと苦さに満ちた傑作ミステリ。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作!

    教会付属の幼稚園に

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    2016年02月02日
  • ありふれた祈り

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    ミステリーというより,家族の物語としての重みが先に来て,読み応えたっぷりの満足感がある.現在の私が40年前を振り返って書くという形式で,13歳の少年にすぎない私の考察も重厚になって,一夏の経験というにはあまりにも次々起こる出来事に崩壊していく家族と踏みとどまる人の強さがぎっしり詰まっている.ニューブレーメンという街の様子もそこにあるかのようで,川や草原や吹きゆく風など匂いなども確かに感じられた.吃音の弟ジェイクに訪れた奇跡に感動した.

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    2016年01月25日
  • ありふれた祈り

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    アメリカの家族もの、とりわけ父子ものはちょっと苦手だけれど、これはおもしろく読めた。主人公の少年、父母、姉と弟、周囲の人々、それぞれの造型にリアリティがあって、しみじみ胸に迫る物語になっていると思う。

    ミステリとしての「真相」は、そういうのに鈍い私でも途中で見当がついたし、すごく派手な展開があるわけでもない。同じようなのをどこかで読んだような気もする。それでも最後までぐいぐい読まされた。あざとさのない語りがいい。欠点のない人などいないし、苦しみのない人生もないけれど、人は生きていくのだ。そんなことを思った。

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    2015年08月04日
  • 愛の探偵たち

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    マウストラップの舞台を観てから読みました。犯人わかってるけれど面白いです。短編だから通勤中に飽きずに楽しめます。

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    2014年11月24日
  • 無限コンチェルト

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    「女王天使」「火星転移」などで私の心をガッチリ掴んだベアのファンタジーを古書店で拾う。ふとした瞬間の、隣に異世界があるところが、スケールの大きなSFを書くベアからは想像できなくて、最初少しとまどったが、どうしてどうして、幻想的な描写もうまいじゃないか。

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    2013年11月17日
  • 愛の探偵たち

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    「ねずみとり」原作と、マープル、ポアロ、ハーリ・クィンの短編。

    舞台「マウストラップ」を観た後に読んだ。舞台では表情から読み取るしかない心情の部分が、地の文で説明されるのでわかりやすいし、戯曲版では主要人物が増えているので、違いを比べて楽しめた。

    その他は、どれも記憶にある短編。

    舞台を見た時に何故かすぐ犯人がわかったのだが、多分この本は読んだことがあったんだな…。

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    2013年03月27日
  • 賢者たちの街

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    けっこう評判だったので手に取ってみたが、
    そこまでノレなかったなというのが正直な感想。

    25歳のケイティ•コンテントが駆け抜けた1937年の大晦日から
    1938年の1年間を通して、彼女が出会った人々とのお話。
    舞台はニューヨーク・マンハッタン。
    今からおよそ90年前という時代設定ながら、
    描写を見て思い描くのは現代とそう大差変わらないマンハッタンの情景。
    そして登場人物の心理描写など、スマホがないだけで
    今の我々とそう変わらない。むしろ同じではないか。
    そう、何だかホロ苦い記憶を思い出させるそんなビターな物語であった。

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    2025年08月24日
  • 愛の探偵たち

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    読みながら別のこと考えてしまって気付いたら終わってる。ねずみとりが入ってたから、他の短編よりは読みやすかった。でもやっぱりアガサ・クリスティーの短編はそんなに好きじゃない。

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    2025年04月29日
  • リンカーン・ハイウェイ

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    ネタバレ

    スチュードベーカーというアメ車に乗ってリンカーンハイウェイ(アメリカを東西に横断する道路)を旅する少年たちのロードノベルだと思っていたけど、兄弟とその友達、そして行く先々で出会う人たちの物語だった。たった10日間の冒険だけど、679ページもあり重い。
    登場人物は問題児だと思っていたけど、みんな個性的があって魅力的。物語のラストは想像と違ったけど、こういうのもありだと思った。

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    2024年11月26日
  • 約束

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    南アフリカのある白人一族を主役に、アパルトヘイトが廃止される過渡期の時代の同国を描いているが、視点の置き方が面白い。俯瞰視点から見下ろすように、一人の内面から別の一人の内面へとシームレスに移りかわっていくため、注意深く読まないと現在誰の視点なのか見失ってしまう。そして「視点」には微かに妙な自我があり、クライマックスでは突如登場人物に呼びかけたりもする。あらすじにも「神の視点」とあるこの独特の視点の置き方が、誰か一人に肩入れするでもなく、バラバラで自己中心的な一族それぞれの言い分と滑稽さを公平に浮き彫りにしている。

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    2024年08月10日
  • 夕陽の道を北へゆけ

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    ネタバレ

    メキシコ。カルテルに親族16人を惨殺された母子の冒険譚。カルテル、コヨーテ、移民、通りすがりの人々の人間臭さが好き

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    2023年11月26日
  • 愛の探偵たち

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    ネタバレ

    愛の探偵たち
    クリスティの短編集。女史が生み出してきた探偵たちが活躍する作品集。
    三匹の盲目なねずみ
     100ページ以上ある為、中編だと認識。新婚夫婦が初めて民泊を経営し、そこに宿泊する様々な特徴の人々。大雪で外部との連絡が途絶えた環境。捕まらない殺人鬼。「雪の山荘」のお約束が十二分に詰まったお手本の様な作品。合わせて、クリスティはサスペンス作品の出来も素晴らしい事を思い出させてくれた作品。
     ストーリーについてはある程度犯人も予測しやすくなっているが、とても面白い。登場人物達の癖づけによって皆んなが怪しく見え、疑う事が出来る状態で進行する為、スリリングな内容だ。
     奇妙な冗談
     マープルが登

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    2023年08月03日
  • このやさしき大地

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    アメリカ、大恐慌時代、4人の少年少女がインディアン救護院を抜け出し、カヌーでミシシッピ川を下ってセントポールのおばの家を目指す。黒い魔女と過酷な暮らし、虐待、神は竜巻。酒の密造、家族を失った農夫、癒しの伝導団、農園を失った家族、女の家。

    歴史小説なのですね。記憶に残る人がいるくらい、現代に近いように思えましたが。

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    2023年05月04日