宇佐川晶子のレビュー一覧

  • モスクワの伯爵 上

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    1922年、ロシア。革命政府に高級ホテル(の屋根裏部屋)無期限軟禁刑を言い渡され、ホテルから一歩外に出れば銃殺刑となったアレクサンドル・イリイチ・ロストフ伯爵の軟禁ライフ物語。

    主人公の伯爵はホテルから一歩も外に出ないのだが、ホテルのロビーやレストラン、バーの様子から革命後の近代ロシアの世風の移り変わりが知れて、実におもしろい。

    私が高級ホテルに軟禁されたら「うわーーー!お散歩許可をーーー!外の空気をーーー!」ってなりそうだけど、伯爵は積極的に軟禁ライフを過ごしていて、本に挟んであった栞に書いてあった「自分の境遇の主人とならなければ、その人間は一生境遇の奴隷となる」という言葉がズシリと来る

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    2026年04月23日
  • 愛の探偵たち

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    このところわりとヘビーな作品が続いたので、ここらで安心と信頼のクリスティーを。
    クリスティーの短編集はかなりあっさりな作品が多いのですが、これは短いながらもそれぞれの探偵たちのキャラの魅力が存分に発揮されており、読み応え◎な一冊でした(⁠^⁠^⁠)

    収録されているのはノンシリーズ1編、マープルもの4編、ポアロもの2編、そしてクィン氏1編。『謎のクィン氏』は未読なため、彼とはお初になります。
    マープルものはいずれも、セント・メアリ・ミード村の魅力爆発!という感じで(褒め言葉)、なんとも微笑ましく読ませてもらいました。特に「申し分のないメイド」で、かつて仕込んだメイドのために奮闘するマープルさん

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    2026年03月22日
  • 真実の眠る川

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    2部構成のミステリー。
    とある男の死。自殺か他殺か、殺人だとしたら犯人は誰か、犯行動機はなんなのか。
    気になるところだけど、普通のミステリーじゃない本作では、いきなり保安官が証拠品の指紋をぬぐいとる。
    ミステリーより人間ドラマや社会問題の方に重点が置かれている。

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    2026年03月07日
  • 真実の眠る川

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    1958年、ミネソタ州ブラックアース郡を流れるアラバスター川で、地主の遺体が発見された。保安官のブロディは遺体の状況から事故か自殺を想定するが、殺人の噂が町を席巻する。そして、元使用人のノアが容疑者として逮捕されるが……。
    第一次及び第二次大戦の帰還兵が心に抱えた傷、先住民や異国人への偏見や差別、家族の問題など様々なサブストーリーが本篇以上に丹念に描かれていく。二部構成でポケミス二段組、本文486ページの大作だ。
    『ありふれた祈り』の姉妹篇ということだが、ストーリーにはなんの繋がりもないので未読でも大丈夫だ。重厚なミステリであり、再生の物語だった。

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    2026年02月23日
  • 真実の眠る川

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    ミステリ要素より、戦争の精神的な後遺症とか人種差別とか、あえてその時代や地域を選んだ重いテーマを扱った作品。

    人という生き物が抱える矛盾や複雑な内面がよく描かれているし、不条理に決してひれ伏すことのない、不屈な心に胸打たれ思わず落涙も。

    読み始めは人物名が覚えられないかもしれないけど、しだいにほぼすべての登場人物に意味があり、事情があるのだとわかってくる。

    既読の「帰還兵はなぜ自殺するのか」を思い出したり、マンガ「BASARA」の暴力に屈しない人々を思い出したり。
    バイユーの話も出てきたので、ワニ町!とテンションが上がったが、さすがにあの底抜けに明るいシリーズの雰囲気とは程遠かった。

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    2026年02月14日
  • 真実の眠る川

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    舞台は第二次世界大戦の影響が未だ残るミネソタの田舎町。そこで起こった殺人事件により、ブロディ保安官は自身のおぞましい戦争の記憶が呼び起こされ、罪悪感に苛まれる。町に暮らす他の人々も、過去に負った傷を抱えて生きている。
    それでも人は他者を許すことが出来るし、やがて辛い記憶や後悔といった執着も手放していけるのかもしれない。人間の強さや優しさに溢れた小説だった。

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    2026年02月11日
  • 真実の眠る川

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    1958年、ミネソタの田舎町。町を流れる川で、撃たれた地主の死体が発見された。保安官ブロディの捜査により、先住民の血を引く元使用人ノアが殺人の容疑者として浮かぶ。町は憎悪で緊張が高まるが、その中でノアと知り合った少年スコットは、尊敬する彼が犯人だとは信じられない。だが、ノアは無実を主張しようとはしなかった。なぜか? 第二次大戦がいまだ影を落とす町で、過去の傷を抱えて生きる人たちが直面する真相とは……。

    「ありふれた祈り」「このやさしき大地」の域には惜しくも届かず。読み応えは十分。

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    2026年01月20日
  • 揺れる輪郭

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    ネタバレ

    語り手の「私」が、入れ子の話(ノート)の語り手である「わたし」の別人格として描かれている人物と最後に出会うというメタ的なお話。最後のページ(p.346)の終わりから4行目の「わたし」は「私」ではないのか?と思いつつ。
    作中のサイコセラピスト、アーサー・コリンズ・ブライスウェイトはまさにやりたい放題だが、言っていることは至極まっとうに思えてならなかった。

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    2025年08月25日
  • 約束

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    南アフリカがどういう国の歴史と国民性なのかが物語の柱になってる。アモールのサロメと重なる無垢さとアントンとルーカスの落ちぶれ方と怒り、肥えた女弁護士が象徴なんだろう。これだけ背景が違うのにアントンのように志を立てるもののぐだぐだと何もせず歳だけとり、「小説を書く」といいながら書き上げられないと自責にかられるというのは世界共通なんだなと思うのと共に、ブッカー賞受賞作だから文学寄りにみられるけど登場人物同士が終始気まずかったり宗教ジョークが多かったり、原著だともっと悪趣味コメディなノリなんじゃないかという気がする。

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    2025年07月14日
  • リンカーン・ハイウェイ

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    もうね、前半はハラハラしっぱなしだったんですよ。
    車は?お金は?なんでそんなことするんだい(怒)ってね。
    私は、真面目な人がバカを見る的なことが、どうにも嫌みたいw
    でも話が進むにつれ、因果応報といいますか、良い人には救いの手が差し伸べられて意外な展開で助けられていく様に、私までもが救われる思いでした。
    最後はちょっと悲しい思いもしましたけども、ね。

    ユリシーズの「本当に見捨てられたと感じてはじめて、人は次になにが起きるかは自分次第なのだという事実を受け入れられるんだ」付近のセリフ、痺れました!

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    2025年07月10日
  • 罪人を召し出せ

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    ネタバレ

    さりげなく書かれた言葉の裏にウルジーの仇討ちが込められていてハッとし、アンブーリン処刑の描写はまるで目の前で起きているかの様に頭に浮かんだ。ウルフホール同様、文章が巧みで舌を巻く。

    着実に地位を築く一方、風向きが変われば一瞬で崩壊しそうな綱渡りにこの先どうなるのだろうとわくわくしつつあとがきを読んだら最大のネタバレを喰らってしまった……え、周知の事実なの!?あらためて自身の無知を痛感。今度からあとがきは全シリーズを読破するまで決して読むまい。

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    2025年06月04日
  • このやさしき大地

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    孤児のオディ、アルバート、モーズ、エミー。
    彼らは、救護院から逃げることを余儀なくされ、叔母の家を目指す。
    オディがときおりふくハーモニカのシーン。自分を癒やしたり、人との距離を縮めたり、仲間を楽しませたり。音楽の力に助けられて、優しい空気が流れてた。
    後半ちょっと、おどろくような仕掛けもあって、一本の映画を見ているような充足感。

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    2025年05月05日
  • このやさしき大地

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    いい!久しぶりの2段組、翻訳ものにビビッていたが、グイグイいけました。カヌーでの旅とアメリカ合衆国の歴史に
    触れて、大きなイメージの題名に納得がいきました。

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    2025年03月20日
  • ウルフ・ホール 下

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    著者がその時代を生きていたのかと思うほど、当時の人々の生活や心情が丹念に生き生きと描かれている。また節々に見える情景描写はどれ一つとして同じものがなく、短文ながらまざまざと心に浮かび美しい。様々な思いが含まれる会話も巧みで思わず舌を巻く。

    ただ起承転結のコントラストがあまりなく単調で、文脈も箇条書きに感じる様な…独特すぎてなかなか世界観に入り込めなかった。それ故に舞台の台本を読み解くかの様に俯瞰してしまい、主人公へ感情移入しどきどきしながら心を寄り添わせて読むことが最後まで出来なかった。後とにかく同じ名前の人物が多くて大混乱。当時の名前の選択肢狭くないか?

    好みの作風と真逆なので自分の中に

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    2025年05月08日
  • 愛の探偵たち

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    *:.。.*:+☆ 年末ひとり英国ミステリフェア(こそっと開催)*:.。.*:+☆
    今年も「クリスマスにはクリスティーを! 」の季節がやってきました♪
    ということで、こちらの短編集をチョイス。

    ノンシリーズ1編、マープルもの4編、ポアロもの2編、クィン氏もの1編・・の、計8編が収録されております。

    解説の方が、本書を「美味しいショートケーキの詰め合わせ」と例えていましたが、まさにその通りで色々な"お味"が楽しめる一冊。

    中でも個人的注目作品は「三匹の盲目のねずみ」ですね。
    こちらは戯曲『ねずみとり』の原作とのことで、雪に閉ざされた宿に泊まっている得体の知れない客たち

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    2024年12月25日
  • 愛の探偵たち

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    イギリスの作家アガサ・クリスティの中短篇ミステリ作品集『愛の探偵たち(原題:Three Blind Mice and Other Stories)』を読みました。
    アガサ・クリスティの作品は、2か月前に読んだ『ポケットにライ麦を』以来ですね。

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    雪に閉ざされたゲストハウスに電話が。
    ロンドンで起きた殺人事件の関係で警察が向かっているという。やがて刑事がやってきて……マザー・グースの調べにのって起こる連続殺人劇、戯曲「ねずみとり」の原作を始め、ポアロ、ミス・マープル、クィンら名探偵たちの推理がきらめく珠玉の短篇集。
    (解説 西澤保彦)
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    2024年12月15日
  • 愛の探偵たち

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    ノンシリーズが1話、ミス・マープルが4話、ポアロが2話、ハーリ・クィンが1話収録。「謎のクィン氏」は好きな短編集なので、ハーリ・クィンものが入っているのは嬉しい。でも一番好きなのはポアロものの「四階のフラット」かな。ノンシリーズの「三匹の盲目のねずみ」も良かった。

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    2024年11月08日
  • ウルフ・ホール 下

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    ネタバレ

    教会から王へ権力が変わる流れ、王様や貴族の暮らし、当時の人々の暮らしぶりがわかる。

    クロムウェルが法のもとに教会の権力から王も人民も裁く政治を整えていく、これが民主主義の基盤を作っていったのかも。

    タイトルにまだピンと来ていないので、まだ十分に理解できていないのだと思う。

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    2024年09月05日
  • フォワード 未来を視る6つのSF

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    アンディ・ウィアー目当てで手に取ったが、傑作揃いで良かった。とくに、「夏の霜」の自己進化を続け次第に意図が読めなくなっていくAIの表現、「目的地に到着しました」の主人公の絶望を推測させる書き方が好きだった。楽しみにしてた「乱数ジェネレーター」はとにかく映像映えしそうな…いや内容的にはしないんだけど…そう感じてしまうような迫力のある舌戦で、まだまだ彼の作品が読んでみたくなるものだった。

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    2024年07月15日
  • このやさしき大地

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    ネタバレ

    ・あらすじ
    1932年大恐慌時代のミネソタ州が舞台。
    孤児であるアルバートとオディ(オデュッセウス)の兄弟はリンカーン救護院というネイティブインディアンの子供たちが集団生活を送る施設で暮らしていた。
    横暴な施設長や管理人から支配され、鞭を振るわれる日々。
    そんな中オディは横暴な管理人を殺してしまい、兄のアルバート、スー族のモーズ、孤児になったばかりのエミーとカヌーにのってミシシッピ川を下り兄弟のおばがいるセントポールを目指す旅に出る。

    ・感想
    「ありふれた祈り」の姉妹作らしく「祈り、信じ、ゆるすことの大切さ」という明確なテーマがあった。
     
     川を下る中で様々な人々(家族)と関わりあい12歳

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    2024年05月04日