宇佐川晶子のレビュー一覧
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ネタバレ読み応えありすぎのロードノベル。深い味わいがジワーっと沁みてくる文章で描かれる、主人公格4人と脇を固める個性的な登場人物の考えや生き様が実に良い。人生を旅する小説の魅力が670Pを超えるページ数にすらあふれるほどに詰まっている傑作。
分厚さと多視点の構成に敷居を高さを感じるが、難解な文章でもなくリズムも程良くて次第にはまっていく。腕がダルクなる書籍の重さはツラかったが(笑
エメットとビリー兄弟、ダチェスとウーリーの脱獄組、きっちり姐さんのサリー、ユリシーズ、タウンハウス、アバカス…かれらの生き様思想のタペストリーが編みこまれた先のラスト。好みが分かれると色んな書評に書かれているが(俺は絶対に好きじゃない)、読んだものにしかこの模様の是非は語れない。
忘れられない至高の読書時間となった。いやホンマ実に素晴らしい! -
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ネタバレロードノベルかと言われると、自信を持って頷けない部分もあるかなぁ。読書体験そのものはたしかにロードノベルだけれど(笑)
クセノスは歴史上の人物の名前のように聞こえるがクセルクセス(古代ペルシャ王)とかきセノフォン(古代ギリシャの軍人、哲学者)とかのような人名ではない。 クセノスは外国人、見知らぬ者、友人を意味する古代ギリシャの言葉だ。もっと簡単に言うなら、他者である。アバーナシー教授の言うように、 クセノスは人がほとんど気づかない、目立たない身なりをした、その辺にいる者のことだ。歴史全体を通してさまざまな姿で出現した。 夜警や従者、使者や小姓、店主、給仕あるいは放浪者として普通は無名で、得体が知れず、きわめて頻繁に忘れられているが、 クセノスは常に正しい時に正しい場所にあらわれ、出来事の過程において欠かすことのできない役割を演じる。(p.651-652)
というのがテーマなのだろうが、色々な人たちの出会いで主たる登場人物の4人の何かが変わったようにはみえない。道行き後のサリーがエメットをどのように変えたのかが知りたかったがその前で話は終る。
エンディングについては賛否が分かれそう。
どこかトレヴェニアンを思わせた。
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1932年、ミネソタ。ネイティヴアメリカンの子供たちが集団生活を送るリンカーン教護院。施設の中で、唯一の白人である孤児のオディとアルバート兄弟は、生意気な態度で日頃から院長に目を付けられていた。ある日、横暴な管理人をふとしたことから殺してしまったオディは、兄のアルバート、親友でスー族のモーズ、竜巻で母親を失い孤児になったばかりの幼いエミーと共に、教護院から逃げることを余儀なくされてしまう。オディとアルバートのおばが住んでいるというセントポールに行くため、四人はカヌーで川を下り、一路ミシシッピ川を目指す。旅の途中、出会いと別れを繰り返した四人が知った秘密とは―?
著者の作品を読むのは、「ありふれた祈り」以来。少年たちの成長物語として、強くお勧め。 -
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1932年夏、ミネソタ
物語の舞台は大恐慌時代のアメリカです
主人公は12歳の少年、オディ。
ネイティヴアメリカンの子供たちが集団生活を送るリンカーン教護院で暮らしていた。
施設の中で唯一の白人である孤児のオディと兄のアルバートは、ある事件から施設に居られなくなり、逃亡することになる。
親友でスー族のモーズと、竜巻で母親を失ったばかりの幼いエミーと共に、兄弟の叔母がいるセントルイスへ向かう。
4人はカヌーで川を下り、ミシシッピ川を目指すのだが…
ひと夏の冒険物語なんて甘い話じゃない
これは本気で命懸けなんだ
私はこの本を読み進めていくうちに、アメリカの歴史的背景についての様々を知ることになる。
彼らが受けてきた虐待、ネイティヴアメリカンに対する人種差別、大恐慌という困難で貧しい時代等…
知れば知るほど苦しかったが、旅の途中で出会う人々の優しさ、交流を通して成長していく彼らの逞しさに胸がいっぱいになる。
彼らが出会った人々は、自身も困難な生活をしているにも関わらず、手を差し伸べ、導き、家族の大切さを教えてくれた。
どの登場人物も魅力的で、まるで私の目の前に存在するかのように生き生きと描かれているのが印象的。
これはおよそ90年も前のアメリカの物語だが、現代の日本に住む私達にとっても決して遠い国の話ではないと思った。
*大切な場面で、オディのハーモニカが出てくるのだけど、それらの曲をYouTubeで聴いてみました
より物語に入り込めるのでオススメです* -
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ネタバレ「夏の霜」ブレイク・クラウチ
人工知能モノ。最初は世界観が飲み込めなかったが、ゲームだとわかり、そこからは新しい人工知能の誕生にワクワクした。主人公が女性でレズビアンなのがイマドキ。でも子育てや夫婦?仲がうまくいかないところは普遍的。
主人公と一緒になってマックスに騙された。ブライアンを殺すところはゲームと一緒だったな。
“喉の奥に金属の味がする。”の絶望感が良かった。
AIに愛された人類はAIのようにされてしまうのか。
「エマージェンシー・スキン」N・K・ジェミシン
宇宙人モノ。はるか昔に分化した地球人類だが。
温度差がシュールで笑ってしまう。一大隠密プロジェクトのはずが、地球の人には筒抜けで、任務に気負っていた主人公がだんだん馬鹿らしくなっていく気持ちに同調できた。
与えられた環境と支配の声に疑問を持たずに言いなりになるなということなんだろうな。
「方舟」ベロニカ・ロス
終末モノとして、最後に残った人間の動向が面白い。植物学者。新種のランの発見。それまでの会話と父と母の記憶で、残るのではなく旅立とうと決心したのが良かったな。希望が生まれた瞬間。
「目的地に到着しました」エイモア・トールズ
デザイナーズベイビーモノ。
家族単位での個人のモノとして考えてたら国家が軍事的に介入していたというオチというか、設定。
自分が子供に望むように国家が国民に望んでいる。
IFを3つ見られたのが面白かったし、成長段階を分けていたのも面白かった。奥さんはこれから過渡期で変化前、自分は変化後。変化によってどうなるかわからない不安定さも良かった。
「最後の会話」ポール・トレンブイ
クローン人間像モノ。アンが、アンのホームビデオは何回も見たが最後は数回しか見てないということは、そこまで成長出来たものも数が少ないのかな、と考えた。記憶を引き継いでも、彼は彼であるが自分自身ではないという感覚が面白いな。
でもアンが必死になってクローンを作り出すのはわかってしまう。
「乱数ジェネレーター」アンディ・ウィアー
量子コンピューターモノ。
面白かった。カジノに限定しての攻防と最後の駆け引き。短いながらも緩急あって面白かった。さすが。 -
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ネタバレこれは超絶好きなやつ。
アメリカ中西部を舞台とする、悲運にまみれた少年少女達が旅路の中で過酷な現実をくぐり抜けつつ逞しく、そして眩しいほど真っ当に成長してゆく物語。
いわゆるロードノベル。
似たような雰囲気の作品でぱっと思いつくのは『東の果て、夜へ』なのだけれど、あれは前半がいまいちだったのに対して、本作はもう最初から最後まで胸を掴まれっぱなし。
いじらしい展開、残酷なまでの運命の悲劇という点では『われら闇より天を見る』の色合いも持っているが、あちらよりも幾分穏やかな心持ちで少年少女の顛末を見守ることができる。
時は1932年ミネソタ。
幼くして父母を失った兄弟(兄アルバートと弟オディ)は当時先住民達の浄化政策としてアメリカ各地に設立された寄宿施設のひとつであるリンカーン救護院に身を寄せることになる。
行儀よく生活するアルバートをよそに、オディはイタズラや懲りない言動で心無い悪徳職員に目をつけられ、余計な難癖を自ら呼び寄せるような日々を過ごす。
徐々にではあるが悪化の一途を辿る生活の中、一縷の光が見えたと思いきや、絶望的な嵐に見舞われ大切な人とつかの間の希望を失う。
さらにはふとしたはずみで悪徳職員を殺めてしまう。
表面的にはいい子ぶっているが誰よりも弟思いで機械にめっぽう強い兄アルバート、親友で先住民をルーツとするモーズ、嵐で母を失った不思議な力を持つ妹的存在のエミーと共に、セントルイスへと続くギレアド川を下り逃亡する生活が始まるさすらいの4人。
もうとにかく行く先々で出会う困難、過ち、悟り、裏切り、真実との対面、ときに甘酸っぱい恋の展開が秀逸。
彼らの境遇を寓意で包み込み、美しく核心的な”おはなし”に仕立て上げるオディの語り、オディが奏でるハーモニカから溢れる音楽が物語の魅力をさらに引き立てている。
『名探偵のいけにえ』で感じた、史実をベースとするフィクションに対するエクスキューズの違和感についても、「私が語った話のうち、ある部分は真実であり、あとは…そう、薔薇の茂みに咲いた花と呼んでおこう。」なんて巧みな表現をしてくれており、何もかも満足。
この物語を執筆するきっかけとなった『ありふれた祈り』もおすすめ。 -
Posted by ブクログ
1932年、ネイティヴアメリカンの子どもたちが集団生活を送るリンカーン教護院の施設から逃げたオディと兄のアルバートにモーズとエミーの4人。
彼らが、オディとアルバートのおばさんが住むセントポールを目指して、カヌーで川を下り旅に出る。
劣悪で過酷な労働を強いられた苦痛から逃れ、新しい人生へと希望を持っていた旅であったが、行く先々でもさまざまな試練があった。
冒険ということばよりももっと深くて重くてそして、貴重で価値がある体験のようだ。
いろんな家族や大人たちと出会うたびに彼らにとっては敵なのか見方なのかを探りながら、助けたり援助してもらったり、そして導いてもらいながら成長していく姿は感動でしかない。
終盤からは予想外の展開になり、読む速度も増す。4人の絆の深さに凄さを感じながら時には対立し、離別するのかと思ったがラストは良かった。
時折挟むオディの物語やハーモニカのメロディが情緒を増して人生の旅という感じがした。
どんなに厳しい環境であっても諦めずに進んで行くという力強さやお互いの思いやりなどの優しさ、信頼関係などたくさんのことを気づかされた。
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素敵★5 幼く貧しい少年少女たちの逃避行… 人生と家族について学び多き物語 #このやさしき大地
■あらすじ
1932年のアメリカの小さな街。ある教護院でネイティブアメリカンや孤児たちが、貧しくも辛い労働を強いられる暮らしをしていた。主人公の兄弟と友人たちは、問題を起こしてしまい教護院から逃げることを余儀なくされてしまう。
彼らは自分たちの家族を見つけるため、密かにカヌーで川を下っていく…
■きっと読みたくなるレビュー
めっちゃいい話★5
さすがはアメリカ産のミステリー、物語として完成度がバチクソ高い。彼らの人生をずっと傍から見ていたくなるような素敵な小説でした。
本作の良いところをあげるとキリがないのですが、もっとも私の心を打ったのは家族と仲間の描き方。主人公の少年少女たちはもちろん、この物語に出てくるすべての人たちが大事にしている価値観。
こんな不遇の時代、辛く貧しい環境だからこそ、大切な人と寄り添って、それこそ必死に生きていく。いま我々が生きている豊かで個人至上主義の時代では忘れがちな、とても重要なことを教えてくれます。
そして主人公である少年少女たちへの想い…
彼らを応援したり、生活を支えるなど何かをしてあげるというよりも、私はただ手を握ってあげたくなりました。
〇児童虐待
私がこれを許せない理由は二つ。
・暴力と恐怖によって子どもたちの主義主張を奪い、未来が閉ざされてしまうから
・力の強い者が全て正しいという理屈を子どもたちが学んでしまうから
古の時代も、現代も、これから未来も、絶対に許したくない。
〇人種差別
アメリカのリアルな歴史を学ばせていただきました。
何処の国でもある社会問題ですが、偏った価値観に縛られずに、話し合い助け合うことが不可欠です。
〇経済格差
いつの世にも存在する、その時代や環境に馴染まない人たち。
特に現代では顕著な、自分だけが得をすれば良いという考え方…手を取り合って生きていけないものなんでしょうか。
〇豊かなキャラクター
登場人物の全員が個性をもって生き生きと描かれていてスゴイ。
強みや弱み、後悔している過去、恨み… ひとりひとりの人生をまるっと感じることができました。
〇仲間との関係性
それぞれが大事にしている価値観や信条。仲間を大切に思いながらも少しずつすれ違っていく。子どもたちが新しい人との出会いや環境変化によって、どれほど影響をあたえ、成長に寄与するのか。
微妙な心の揺れが胸を打ち、ただみんな幸せになって欲しいと願いました。
■推しポイント
人は何のために生きているんでしょうか。
本作の主人公である彼らは、川を下りながら、街を転々とし、様々な人々と出会い、別れながら生き抜いていく。そこには楽しいことばかりでなく、むしろ辛いことや悲しいことばかりで、涙を流すことも多い。
しかし人が苦労しながら暮らしているこの大地は、きっと優しさに包まれている。何故なら、苦労している人のとなりにも、また人がいるから。
やっぱり私は、人の笑顔を見るために生きていたいな。 -
Posted by ブクログ
二段組はとにかくボリューミー。
オディたち四人の成長物語だけど、おとなに振り回されたかわいそうな子どもたちのはなしとも思った。
結局、オディはどの場面がいちばん幸せだったんだろう。
過去を回想したはなしなわけだけど、みんなで黒い魔女から逃げてカヌーにのって川を下った冒険の日々は忘れがたい思い出として、孫たちに語り続けていたんだから、やはりアルバート、モーズ、エミーの四人でいたときが辛くても幸せだったんだろうと思った。
黒い魔女がオディの本当の母親を恨んでいたから復讐のためにそばに置いていたり、本当に腹が立つこともたくさんあるけど、気に入ったのは多種多様な人たちが出てくるところ。
ユダヤ人コミュニティーのはなし、インディアンのつながり、宗教のこと、どれもアメリカぽいなーと面白く読めたところは良かった。 -
Posted by ブクログ
読書備忘録696号。
★★★★★。
翻訳される海外文学作品は、評価が高いから翻訳されている訳であり、やはりアタリが多い。
アメリカの中北部州ミネソタ州を舞台に少年が大人になっていく様を描いた秀作。
ミネソタ州はミシシッピ川があり、トム・ソーヤやハックルベリー・フィンが大冒険を繰り広げたり、大草原の小さな家でインガルス一家が住むウォールナットグローブがある。笑
すなわち、豊かな自然に恵まれた牧歌的な風景がすごく似合う舞台。
そんなミネソタ州のミネソタ・リバーのほとりの町ニューブレーメンで13歳の少年フランク・ドラムが初めて人の死、しかも最愛の家族の死に直面する残酷なひと夏の物語。そしてミステリでもある。
その年の夏、死の連鎖は知り合いの少年ボビー・コールがミネソタ・リバーに掛かるユニオンパシフィック鉄道の構脚橋で列車に轢かれるところから始まる。
そして、その事故死は、見知らぬ旅人の自然死を経て、最愛の姉アリエルの殺人事件に繋がり、連鎖して自殺と広がっていく。
物語は、主人公のフランクが当時の1961年夏を40年後の視点から回想する語り形式で進む。
まだ第二次世界大戦の傷跡が人々の心に残っている時代。戦争から戻り牧師となった父、牧師となったことに不満を持つ母、吃音が激しく人前では一切喋らないが聡明な弟ジェイク、そして音楽の才能がありジュリアード音楽院に進学予定だった最愛の姉アリエル。
教会で、父の手足となり働く戦友のガス、巡査のドイル、母の昔の恋人エミールとその家族たち。
ニューブレーメンという小さな町に暮らす人々がフランクの目を通して、生き生きと、日々懸命に生きる。
そして物語の大きな柱は中盤に突如訪れる。最愛の姉アリエルが家に帰らない。懸命に捜索する家族。そしてフランクはミネソタリバーに浮かぶアリエルの発見者となる。事故なのか事件なのか。悲嘆に暮れる家族の元に、検死の結果として殺されたことが伝えられる。
誰が何の目的でアリエルを殺したのか。町のごろつきや差別に苦しむインディアンに容疑者として浮かび上がる。しかし、フランクがたどり着いた真相は驚くべきものであった・・・。
少年であるが故、行動の不自由さ、それを巧みに潜り抜けて真相に近づいていくストーリーは、間違いなく珠玉のミステリー小説である。
牧歌的な風景の中で起きた死の連鎖、そして少年が必死で背伸びして青年になっていく通過儀礼的残酷なひと夏の物語には引き込まれました。
この作者の作品「このやさしき大地」も読む予定。そのうちに。舞台は当然ミネソタでしょう。笑