宇佐川晶子のレビュー一覧
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二段組はとにかくボリューミー。
オディたち四人の成長物語だけど、おとなに振り回されたかわいそうな子どもたちのはなしとも思った。
結局、オディはどの場面がいちばん幸せだったんだろう。
過去を回想したはなしなわけだけど、みんなで黒い魔女から逃げてカヌーにのって川を下った冒険の日々は忘れがたい思い出として、孫たちに語り続けていたんだから、やはりアルバート、モーズ、エミーの四人でいたときが辛くても幸せだったんだろうと思った。
黒い魔女がオディの本当の母親を恨んでいたから復讐のためにそばに置いていたり、本当に腹が立つこともたくさんあるけど、気に入ったのは多種多様な人たちが出てくるところ。
ユダヤ人コミュ -
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読書備忘録696号。
★★★★★。
翻訳される海外文学作品は、評価が高いから翻訳されている訳であり、やはりアタリが多い。
アメリカの中北部州ミネソタ州を舞台に少年が大人になっていく様を描いた秀作。
ミネソタ州はミシシッピ川があり、トム・ソーヤやハックリベリー・フィンが大冒険を繰り広げたり、大草原の小さな家でインガルス一家が住むウォールナットグローブがある。笑
すなわち、豊かな自然に恵まれた牧歌的な風景がすごく似合う舞台。
そんなミネソタ州のミネソタ・リバーのほとりの町ニューブレーメンで13歳の少年フランク・ドラムが初めて人の死、しかも最愛の家族の死に直面する残酷なひと夏の物語。そしてミステ -
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革命政府に無期限の軟禁刑を下され、高級ホテル「メトロポール」の屋根裏で、一生暮らさねばならなくなった、「アレクサンドル・ロストフ」伯爵。
しかし、心技体ともに貴族としての誇り高き精神を持ち続ける彼の人生は、表向きは以前と変わらぬような、落ち着いた華やかさを見せているように感じるが、振り返ってみると、山あり谷ありの波乱万丈なものであり、大切な人との別れや、自分の人生を投げ出してしまいそうな時もあったが、気付いたら、やはり彼自身の人間性により、変わらぬ優雅さを纏って人生を歩む姿に、彼の、安易に譲ることのできない生き様を感じられたような気がしました。
そして、その人生は、たとえ私が体験できないよ -
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ネタバレわーお。
親の因果が子に報い…じゃないけど。
賢明なるカトリック両王とは言ってもやっぱり人の親。良かれと思って…異国に嫁ぐ娘の幸先を案じただけだったのに。巡りめぐって結局は、娘を不幸に、孫娘を苦境に、そしてイングランドを混迷に…。一見やりたい放題なヘンリー8世だけど、所詮は歴史の歯車でしかなかったのね。
これぞクロニクルの醍醐味…いやこのシリーズ、主人公はクロムウェルだから、ヘンリー8世の治世の全貌ですらないけどな。
長い長い三部作、ここにたどり着くのか。
歴史って、こんなにも懐深く豊かなものか。
久々に鳥肌が立ったわ…ってとこから先が長かったですわ。 -
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恋愛小説であり、移民二世で労働者階級出身の聡明なヒロインがマンハッタンでいかにのし上がっていくかを描くサクセスストーリーでもあり、何より、魅力たっぷりな登場人物たちとの出会いや別れを描いたこの本は爽やかな青春小説だと思う。
きらびやかで華やかで底抜けに明るいニューヨークとそこに生きる人々を描きながら、破滅を予感させるようなストーリー進行は「華麗なるギャツビー」を彷彿とさせる。
個人的にはとっても映像化してほしい作品。見たいシーンがたくさんある。
大晦日にティンカーが子供と一緒に雪合戦に興じるところ、ケイトがウォレスに銃の扱いを教えてもらうところ、普段は冷静沈着なケイトが取り乱しカフェでティン -
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ロシア革命の混乱期、爵位を持つ多くの白系ロシア人が国外へ逃亡し、異国にあって極貧の生活を余儀なくされたことはよく知られている。
この物語の主人公であるロストフ伯爵も、革命政府のもと裁判を受け、銃殺刑こそ免れたものの、それまで暮らしていたホテルからの禁足を命じられる。もし、一歩でもホテルから出ようものなら銃殺だと脅されて。本書は32歳から始まった伯爵の軟禁生活を、最終章の64歳まで描き切る。このように書くと、いかにも悲しみと苦しみに満ちた物語を想像するかもしれないが、そんなことは全くない。実に愛すべき、ユーモアと出会いに満ちた物語である。
それは、ひとえに主人公のロストフ伯爵がとても魅力的で -
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2019年の緊急事態宣言時に購入
閉ざされて世界で生きることになった男の話を、あえて、むしろ救いを求めて読む。でも「感動するぞ!」と意気込まないとやってられない様な状態に世界が一変した為、感覚のバランス(この本を買った理由と価格に引っ張られ過大評価しないか)が保てなくなり、また非常に仕事が忙しくなったため中断
2020年、再挑戦
1922年、モスクワ。
革命政府に無期限の軟禁刑を下されたロストフ伯爵。
高級ホテルのスイートに住んでいたが、これからはその屋根裏で暮らさねばならない。
ホテルを一歩出れば銃殺刑が待っている。
ホテルでの軟禁生活が始まったばかりの頃に出てくる
「自分の境遇の -
購入済み
誤訳を発見
収録作品の一編、「愛の探偵たち」の中に誤訳を発見しました。「ということは--六時五分から二十分までのあいだに、サー・ジェイムズは」(紙の本と違って、引用箇所のページ数をかけませんが、97%の箇所)という一節です。作中に、6:05という時刻が問題になる箇所はなかったので、変だなと思って、英語原文と比べてみたところ、原文は、
'Then at – say five-and-twenty past six, Sir James was ...'
でした。「六時五分から二十分までのあいだに」ではなく、「六時二十五分頃には」とすべきところです。 -
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ネタバレロードムービーのような小説を読みたくて、この本を手に取った。西部劇のようなタイトル。しかしこれはアメリカの荒野を馬車で渡ったような二世紀位前(?)の話ではなく、現代のメキシコの観光都市アカプルコから命からがら逃げてアメリカとの国境を渡った母と八歳の息子の話。
彼らに何があったのか。
主人公のリディアという女性は書店を経営し、夫は記者で、最近メキシコ最大の麻薬密売組織(カルテル)「ロス・ハルディネロス」とそのボスであるハビエルのことを暴露する記事を書いたため、ある日、目の前で夫や母親を含む親族13人を殺害され、助かったのは自分と八歳の息子だけだった。
リディアはハビエルが自分と息子の命も