宇佐川晶子のレビュー一覧
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1932年の米国、白人で孤児のオディとアルバート兄弟は、ネイティブアメリカンの子どものための教護院で暮らしている。暴力的な管理人にムチ打たれ、もとは監獄の独房だった反省室に入れられたり、過酷な労働をさせられたりしていた。そんな管理人に殺されそうになった時、逆に管理人を殺してしまう。兄弟は仲の良いモーズと竜巻で母親を亡くした幼いエミーとともに、教護院から逃げ出す。4人はカヌーで川を下り、兄弟の唯一の親戚であるおばの住むセントルイスうを目指す。
エミーを誘拐した犯人として警察に追われながら4人は様々な出会いを経て川を下る。著者自身が「ハックルベリー・フィンの冒険」のアップデート版と書いているが危 -
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ネタバレおなじみの探偵たちにまた会える。
「三匹の盲目のねずみ」大ヒットした劇「ねずみとり」の原作だそうで。確かに「ねずみとり」の方がこなれた感じがしたかも。
「奇妙な冗談」若いカップルがミス・マープルにした相談は、マシューおじさんが遺したはずの宝物の場所。自分の知り合いのヘンリーおじさんについて楽しそうに語るミス・マープルが示した、マシューおじさんの遺産とは。思い出話で若い人をうんざりさせるミス・マープルを思い浮かべると思わず微笑んでしまう。ハッピーな結末も素晴らしい。
「昔ながらの殺人事件」スペンロー夫人が殺された。警察から話を聞かれたミス・マープルは、いつものように思いを巡らし、そしてちょ -
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ケイティにとって、ニューヨークでの、1937年の大晦日からの1年間は特別でかけがえのないものであった。
読書を愛するケイティが、イヴ、ティンカー、ハンク、ウォレス、アン等(個人的にディッキーとビッツィも挙げておきたい)、印象に残る個性的な友人たちと織り成す想い出は、当時の時代性や文化の壮麗な描写とのバランスも相まって、上品なチャーミングさと冷静なクレバーさが(あと、奔放さも)混在した素晴らしさの中に、シリアスさもきっちり含まれており、なぜ、特別な一年なのかが、読んでいく内に明らかになるストーリー展開も素晴らしいです。
私みたいに、当時のニューヨークの文化をあまり知らなくても、親切な解説に、 -
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主人公の伯爵がホテルに軟禁されて過ごす32年間を綴った物語。細かい描写や彼の紳士的で気遣いができるキャラクターを表すシーンが非常に多く、またモスクワの最高級ホテルであるメトロポールを舞台にしていることから、600ページに及ぶ長編小説とはいえ、まるで映画を観ているかのようなストーリーだった。世界からやってくるVIPたち、ゲストから給仕となり最高級のおもてなしをしていく伯爵の姿、煌びやかなクリスマスの内装や、素晴らしい料理の数々。設定が本当に素敵。
私は正直ロシアに関連する歴史に疎いので、舞台となっている皇帝時代からスターリンの時代がきて、そこから更に新しい時代へ進む過程がどのようなものだったの -
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革命を経て、帝国から共産国へ変わったロシア(ソ連)。貴族だからという理由での銃殺刑を免れ、モスクワの名門ホテルに生涯軟禁されることなった元伯爵の物語。
宝塚に、「神々の土地」という芝居の演目がある。おそらくいま最もヅカファンから支持されている座付き作家上田久美子さんの作品で、30年以上宝塚ファンの私がもしかしたら一番好きかもしれない演目である。帝政崩壊・革命のきっかけともなったラスプーチン暗殺の実行者として知られる、時の皇帝ニコライ二世の従弟 ドミトリー・パヴロヴィチ・ロマノフが主人公のモデルになっている、美しく重厚な作品だ。ストーリーが登場人物を動かすのではなく、登場人物がストーリーを作って -
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「天にましますわれらが父よ、この食べ物と、これらの友と、わたしたちの家族への恵みにたいし、感謝します。イエスの御名において、アーメン」それだけだった。それで全部だった。実にありふれた祈りで、記憶にとどめるほどの理由もないくらいだった。だが、あれから四十年、その祈りを私は一字一句おぼえている。「ありがとう、ジェイク」母が言い、わたしは母の顔つきに変化が生じているのに気付いた。父は魅入られたような、ほとんど幸せともいえそうな顔をしていた。「ありがとう、息子よ」そしてわたしは、畏敬の念に近いものを持って弟を見、心の中で思った。神よ、感謝します。