本川達雄のレビュー一覧
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著者本川達雄氏による『ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学』や『ウマは走る ヒトはコケる』に続き、私には三作目。どれもとても面白い生物学の本で、著者のファンになってしまった。
魅力は、分かりやすさ。目線が素人相手への語り口だ。それと、時々本の中で自作の歌をうたったりもする。譜面つきだ。なんて愉快な時間!
同氏の本を読んできて、つくづく思うのは、生命にはその身体設計や生き方にそれぞれ“思想“があるという事。この気付きが私には凄く馴染んだのだが、つまり、防御力高めで一歩も動かんぞ、という生き物もいれば、当たって砕けろみたいな多数が死ぬ事を前提とした多産型、そうかと思うと、長寿で子供も少なめ -
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「なんだかバラバラのトピックなのにギリギリの線でうまく繋がって読ませるなぁ」と思いながらいたんですが、巻末にその種明かしが。
新書依頼→いやいやそんなの無理と思ってたけど講演録5本を文字起こしすれば一冊分になるじゃんと思いつく→出版社好感触。なんだ楽して本出せるわと思った矢先「一貫したストーリーとして読めるように書き改めてください」→大幅手直し。
なるほど。だから星座のように(無理矢理)繋がってひとつの形になってるのね。
勿論ご本人の長年の研究(ナマコ)と頭のいい人の60数年の人生観を自分の言葉で語ったものですから自ずと繋がりはするでしょうけど、結構な振り幅のトピックをうまーくまとめて心地よく -
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ネタバレ「長生き」が地球を滅ぼす
現代人の時間とエネルギー
「ゾウの時間ネズミの時間」で有名な著者がその発想を現代人の時間への考察に発展させたのが本書。
ほ乳類は15億回くらい心臓が脈打つと死ぬ。ぞうはゆっくりと心臓が脈打ち、ねずみは早く心臓が動く。一回心臓が脈打つ際に消費する仕事量は2ジュール程度なので、大体30億ジュール分の仕事を心臓が行うとほ乳類は死ぬ。故に、ぞうの時間とネズミの時間は異なるのではないか?という発想を基本として、現代人の時間を考察しています。体重と寿命は相関関係があり、人間が60KGとするとその寿命は約30年。今の日本人の平均寿命は80歳を超えているのは、大量のエネルギーをつ -
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著者本川達雄氏による別書『ゾウの時間 ネズミの時間 サイズの生物学』が面白かったので、本書も楽しみにしていた。歩く、泳ぐ、飛ぶとった生物の駆動と身体構造に絞った若干マニアック内容だが、期待通り。扱うテーマが幅広い本も面白いが、マニアックな本(こういう言い方は失礼かもしれないが)にはその面白さがある。私はどちらも好きだ。
― 骨の強度は体重が増えても変わらず、骨の太さも体重ほどには大きくならない。そのため、大きな動物ほど相対的に骨の強度が下がり、より慎重に歩くことになる。
こういう文章に、サイズに生物学の著者らしい視点や専門性が滲み出ていて嬉しくなる。大きな動物の動きがスローになるのは、骨が -
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生物は、その大きさにより、体感時間が変わる。
時間は体重の1/4乗に比例する。体重が増えると時間は長くなる。寿命を心臓の鼓動時間で割ると、哺乳類ではどの動物でも、一生の間に心臓は20億回打つという計算になる。寿命を呼吸する時間で割れば、一生の間に約5億回。これも哺乳類なら、体のサイズによらず、ほぼ同じ値。
物理的時間で測れば、ゾウはネズミより、ずっと長生きである。ネズミは数年しか生きないが、ゾウは100年近い寿命をもつ。しかし、もし心臓の拍動を時計として考えるならば、ゾウもネズミもまったく同じ長さだけ生きて死ぬことになる。
子供の頃の一年が充実して長く感じたが、大人になるにつれて、あっとい -
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”走る・泳ぐ・飛ぶ” といった動物の移動の動作が、いかに効率的で、物理の原理に沿った動きであるのか、一つ一つ解き明かしていく1冊です。書名からは生物学的なイメージを受けますが、かなり物理に踏み込んだ内容です。
生物の骨格はカルシウムなどから構成されるので、強度には上限があります。筋肉の収縮の速度も上限があります。それらの制約の中で、”いかに速く、効率よく”走るには、”ストライドを延ばす”か”ピッチを上げる”しかないのですが、それを実現するために実に巧妙に動物は対応していることをテコの原理、モーメント、エネルギー保存などを用いて説明されています。
水中を”泳ぐ”場合、体重を支える必要がありません -
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1992年初版発行でかなり古いんだけど、新鮮に面白かった。
たぶん有名な本すぎて、どこかで紹介を聞いたことがあるんだとおもう。「サイズが違うと生体時間が違う」という話は私も知っていた。でもそれが実際にどういうことなのかは本書を読んで初めてわかった。
体重と代謝が比例すること、体重と生体サイクルが一定の比例をみせること、そこから各々の生体時間の比較ができること。サイズの比較の話だけじゃなくて哺乳類の骨の強度の話、昆虫の外骨格の話、14章の棘皮動物のデザインの話まで新しく知ることばかりで面白かった。具体的な数字は失礼ながら結構読み飛ばしたけど、それでも生物学の入門書としていいとおもう。
同じ視点の -
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著者は生物学者だが、タイトル通り哲学的な話題を物理学なども幅広く交えて「現代人の生き方」を問いかける内容。
本書を書いた時点で68歳という年齢が大きく影響しているであろう。「エネルギーを大量に使って時間を買っている」現代の時間の流れを批判的に捉えている。著者の専門分野であるナマコの他、様々な動物の生態や今より機械に囲まれていなかった時代の日本人の生活などと比較し、システムを作る技術者(やそれを商売にする人達)によって生物としての人間本来のリズムが妨げられていると述べている。
やや極論に走っているところも感じられるが、資本の論理に世の中全体が巻き込まれているという批判は賛同できる。 -
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生物の構造は円柱が多いという点に着目した生物学
小学5年生の教科書にも載っているそうだ
高校の生物でやった内容を知っていればスラスラ読める
第1章 生きものは円柱形
第2章 生きものは水みずしい
第3章 生きものはやわらかい
第4章 生きものの建築法
第5章 動物は動く
第6章 サイズと動き
第7章 時間のデザイン
生物が球形を基本にするのは、生物の主成分が水であり
表面張力の関係からというのは容易に想像できる
では、なぜ円柱なのか?と問われると、もうちょっと違った角度からのアイデアが必要になる
小さければ小さいなりに、大きければ大きくなるための構造が必要であり
必要に応じて柔軟性 -
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30年前の初版時からタイトルは知っていたがようやく一読。
哺乳類ではどの動物も一生の間に20億回心臓を打って死んでいくそうだ。それぞれのリズムでその一生を生きていく。大きい方が長生きで、体重当たりのエネルギー消費量は少なく、個体数は少ない。小さい方はエネルギー消費量は多いが、個体数は多く、一世代の時間が短く、その分突然変異の生まれる確率は高い。
そう考えると、サイズ的にゾウと同等のエネルギーを消費する現代人類は何とも分不相応だろうか。または桁違いな存在だろうか。
その他、極小生物、植物、昆虫、サンゴ、ウニ、ヒトデ等々の驚きの生態、構造を教えてくれる。いくぶん古い本ではあるが、目に見えない極小の -
Posted by ブクログ
畳みかけるように次々と展開するため、ワクワクしてページをめくる手をなかなか止められない
おまけに著者の想像力豊かな表現力が大変素晴らしく、いちいち拍手をしたくなるのだが…
今回そちらを強調したいので、その部分に(面白表現)と記載してみた
(こういうのって楽しい♪)
動物は体のサイズに応じて違う単位の時間をもっている
ゾウはゾウの時間
ネズミはネズミの時間があるという
一生の間に心臓が打つ総数や体重あたりの総エネルギー使用量はサイズによらず同じ
生物における時間を物理的な時間と区別して、生理的時間と呼ぶ
物理的時間でいえばゾウはネズミよりずっと長生き
しかし心臓の拍数を時計として考え