【感想・ネタバレ】「長生き」が地球を滅ぼす―現代人の時間とエネルギーのレビュー

あらすじ

生物的時間。この新しい時間の見方を使って現代社会を眺めてみると、少子化、高齢化、エネルギー問題等々、今日の日本が抱えている問題は、すべて時間の捉え方が偏っていることに起因すると著者は主張する。
良く生きるとは、良い時間を生きること。良い時間をつくりだすために、そして現代人を「時間の奴隷」状態から解放するために、歌う生物学者が提起する、時間観のコペルニクス的転回の書!
安定した食糧供給、安全で清潔な都市づくり、頼れる医療、これらは莫大なエネルギーを使用することにより成り立っています。エネルギーをふんだんに使っているからこそ、このような長寿社会が可能になっているのです。だからこれを、エネルギーという代価を支払って寿命という時間を買い取っているのだ、と見ることもできるでしょう。私たち現代人の寿命は、決して自然のままの動物としての寿命ではありません。現代文明がエネルギーを使ってつくり出した人工的な寿命なのです。(本文より)

本タイトルは、レイアウト固定型の商品です。
・フリースクロール(リフロー)型でないので、文字サイズの変更、フォントの変更ができません
・マーカーは付けられません
・テキスト検索はできません
・推奨端末はPCかタブレットです(スマートフォンは推奨いたしません)
以上ご確認のうえご購入ください。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

この20年ばかり本を読み終わって、その内容を忘れない様に「レビュー」と称して、本の中の気になったポイントを書き出す作業をしています。自分の言葉に置き換えないと意味がないという方もいらっしゃいますが、本の内容を着実に描くことで、後から見返して、それに対して自分の意見を持つことができるので、私はこの方法を続けていこうと思っています。
さて、この本は12年ほど前にレビューを書いたことになっていますが、初めて読んだのは、2005年位だったと記憶しています。本を読んで自分の「人生観」が変わったと思える記憶に残る本です。

以下は気になったポイントです。

・今日の日本が直面している大問題は、すべて時間の問題として捉えることができる、だから正しい時間の見方が必要、時間とエネルギーが関係し、時間がエネルギー消費量(酸素消費量)によって変わる(p13)
(コメント)各々の生物の時間が酸素消費量によって変わる

・一生の間に心臓の打つ回数は15億回、70年生きる象も1年で死ぬネズミも同じ15億回である(p14)
(コメント)これは衝撃的な事実でした、心臓打つ回数は同じ

・満員電車の中では、まわりの人は物とみなす(寝ている)と、人口密度はぐっと下がる、それにより、異常な時間や移動距離を感じなくて済む(p26)
(コメント)電車の中で、寝る、スマホに夢中になるは、ストレスがかかるのを防ぐためかな

・時間は決して不変ではなく、動物が違えば時間も変わる、時間はエネルギーと密接に関係している、これは生物的時間である(p28)ハツカネズミは1分間に600-700回心拍する、サイズの小さい動物は心周期は短く、サイズが大きくなるにつれて長くなる(p33)
・体重が2倍になると、時間が1.2倍長くなる、体重が10倍で1.8倍、これが1/4乗に比例する世界、これは殆どの動物の世界に当てはまる(p36、41)
(コメント)動物が違えば時間も変わる、凄い指摘です

・子供の時代は大人よりも心臓の動きが速い、大人になると時間が長くなる(p48)
・体重あたりのエネルギー消費量は、子供では高く、老いてくると減る、つまり、子供の時間は速く進み、大人の時間は遅い(p141)
・老人のほうが子供に比べてエネルギー消費量が1/2-1/3であり、時間は2-3倍ゆっくりである(p190)
(コメント)子供と大人と時間が異なる

・私たちは対数で世界を認識している、桁が違って(10倍になって)はじめて、これは本当に違うと感じる(p121)
(コメント)2倍ではなく10倍で違いを認識する

・江戸時代まで時間の進み方が変わる時計を使っていた、日の出と日没を基準としてその間を当分していたので、一刻の時間の長さが変わっていた(p139)
(コメント)不定時法、こちらが自然と生きる人間には合っているかも

・代謝速度を時間の速度と考えると、ヒトの1秒と、ネズミの0.15秒、ゾウの2.7秒が同じ重みである、ネズミの1時間はゾウの18時間、現代人の1日は縄文人の1か月になる、エネルギーをたくさん使って仕事したものの代謝時間は短く、逆も真である(p141)
(コメント)現代人の1日は縄文人の1か月になる、これを当てはめると、10年間の自分と現在はどうなるのだろうか

・意味のあるおまけの人生を送るには、1)時間の見方を変える、2)老人にも働く義務があることを考える(p222)
(コメント)働くことは大事

2012年3月10日作成

0
2012年03月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「長生き」が地球を滅ぼす
現代人の時間とエネルギー

「ゾウの時間ネズミの時間」で有名な著者がその発想を現代人の時間への考察に発展させたのが本書。
ほ乳類は15億回くらい心臓が脈打つと死ぬ。ぞうはゆっくりと心臓が脈打ち、ねずみは早く心臓が動く。一回心臓が脈打つ際に消費する仕事量は2ジュール程度なので、大体30億ジュール分の仕事を心臓が行うとほ乳類は死ぬ。故に、ぞうの時間とネズミの時間は異なるのではないか?という発想を基本として、現代人の時間を考察しています。体重と寿命は相関関係があり、人間が60KGとするとその寿命は約30年。今の日本人の平均寿命は80歳を超えているのは、大量のエネルギーをつぎ込んで、環境を変えることによって実現している。
これが著者の結論。
生命は外部からエネルギーを得ることによってエントロピーに抗している存在で、自分の子孫を作ることによって、ガタが来た体を捨てて、新しい体に移行する。自分の子孫を成人させた時点で役目を終わって死んで行くのが生き物の摂理だが、人間はそれに反して大量のエネルギーを子孫から搾取することによって長寿を実現している。故に、年をとったらエネルギーを使わず子孫に残すために早めに退場すべき。また、生きているうちに使うエネルギーも節約すべし。(現代日本人は生きるために必要なエネルギーの40倍のエネルギーを1人あたり使っている。昭和30年代くらいだと10倍位なのでその位まで節エネルギーすべし) また、おまけの時間を子孫のために使うべし。
これが著者の意見。
”長生きはよいこと”という大前提に疑問を呈し、”長生きは子孫や他の生き物からの搾取で実現されている!”という発想は斬新です。よくぞここまで書きましたね。といった感じ。
竹蔵もおまけの時間の真っ最中。なかなか早く死ぬのは難しそうなので、子孫のために有意義なことを心がけねばと思いました。

竹蔵

0
2025年08月04日

Posted by ブクログ

代謝速度から時間を考えるのがおもしろい。体が小さいほど動きが速いが寿命が短く、大きいほど動きが遅いが寿命が長い。子供と大人の時間感覚も代謝速度で説明でき、昆虫の成虫の命も代謝時間で考えれば短くはないという。

動物の時間は体重の1/4乗に比例し、体重あたりの代謝量は、体重の1/4乗に反比例する。時間と比代謝率は反比例するので、速度と比代謝率は正比例する。細胞のサイズは動物のサイズによらないため、細胞単位でも大きい動物では代謝量が小さい。

成人男子の標準代謝量は73ワット、サラリーマンの食事のエネルギー量は121ワット。日本人ひとり当たりの外部エネルギーの消費量は5450ワット(2002年)。これを恒温動物の体重に逆算すると、ゾウなみになる。

ヒトサイズの動物の寿命は26歳。縄文時代から室町時代までは、15歳以上の平均寿命で30歳ほど、江戸時代で45歳。明治から戦前までの幼児を含む寿命は43〜47歳。縄文中期の日本の人口は50万人ほどだった。人口密度は1.3人/km2で、ヒトサイズの哺乳類の密度とほぼ一致していた。

変温動物は摂食エネルギーの30%が肉になるが、恒温動物では2.5%。

0
2018年10月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「ゾウの時間、ネズミの時間」の人。基本、エネルギーの話なので、前半の数式の嵐に挫けそうだったけど、人生後半の生き方についてが面白かった。心臓が15億回打ったら終わり、50歳から上は前人未到の歴史だから「おまけ」で、そのおまけをどう生きるか。

0
2013年03月25日

「学術・語学」ランキング