「ゾウとネズミではお互いの時間の感覚が異なっている」という本川氏の本を読んで目からウロコが落ちたのが10数年前のことです。人間は生物学的寿命をはるかに超える年月を、エネルギーをより多く消費することで生きていることを知り、人間も少しは謙虚に生きる必要があると思いました。
人間の本来の寿命は40歳程度のようです、織田信長が「人生50年」と言ったのも頷けます。
医療技術の発達や「飢えの心配のない世界」で長く生きることのできる現代に感謝し、自然や他の生き物と共生する方法を考える時期に来ているのではないかと思いました。
また、この本を通して、私たちに身近に存在する「水」の持つ特異性(分子量が低いのに室温で液体、氷が水よりも軽い)を再確認しました。本当は高校時代に学習したはずでしたが。
子供の頃と今と比較して、時間の経過する感覚が違うことに関して、この本にヒントがありました、”時間の質が違う中での経験できることに違いがあり、生きている質そのものにも時間によって違いが生じてくる(p197)、体重当りのエネルギー消費量は20歳まで急速に減ってそれ以降はゆるやかに減る、20歳を1(時間の進む速度)とすると、10歳は0.6、40歳で1.1、70歳で1.2(p209)”
以下は気になったポイントです。
・海水が透明ということは、水中に食用となる有機物の粒子もあまり含まれていないことを意味する、サンゴ礁やそれを取り巻いている外洋の海水中には、栄養となるものが乏しい(p15)
・肥料の三大要素が、窒素・リン・カリウム、海水中にカリウムがたくさん含まれているので、残りのリンと窒素は、サンゴは動物性プランクトンを食べることで補う(p25)
・サンゴ礁が危機に瀕していることは、藻類が繁殖すること、生活排水等に養分(リンや窒素)が含まれているため、大型の藻類が育ってサンゴを覆い隠して光を奪ってしまう(p51)
・サンゴの白化は、夏に海水温が高くなると、サンゴの体から共生している褐虫藻が抜け出るから(p53)
・南北問題の一つとして、生物多様性条約(目的:遺伝資源の利用から生じる利益を公正に分配する)がある。生物の提供国である貧しい南の国にも、新薬からあがった利益を提供しようとするものだが、アメリカは承認していない(p67)
・科学が質を問わないのは、構成要素を単純化するから、ところが生態系は質の異なる非常に多くの生物たちが相互に複雑な関係を結んでいて科学が苦手とする相手である(p71)
・木は何十メートルもの高さに生長するが、体の高い部分まで水を運び上げるのにも水が必要。植物は水を押し上げるポンプの原動力として水の蒸散を使っている、蒸散する際に、下の水を上へと引っ張り上げる(p76)
・水の沸点が高いのも特徴、水の分子は18なので、通常はマイナス80度程度のはず。室温では気体になっているのが普通だが、水は分子同士が引きあっているから気体になりにくく、室温でも液体のまま(p82)
・氷が水より軽いということも水素結合が関係している、水が液体の状態でも水素結合により分子同士が結びついて構造をつくっており、この構造が氷の構造よりも密に分子が詰まっているから(p85)
・生まれたばかりの赤ん坊は体の80%が「水」だが、成人では60%になる、細胞内部が40%、外部が20%、水分含有量は20歳を過ぎても減少し続けるが、細胞外の水は30代以降はほぼ一定で、内部にある水が減る(p87)
・動物の進化として、球から変形して、強さを保ちながらも表面積を確保するために、丸い断面のまま細長くなる円柱形になった、中心に一本、太い神経やラインを通せば、円周上の各点は中心から等距離で輸送が楽(p108)
・体重は体の長さの3乗に比例し、面積は2乗に比例する、なのでゾウは足の裏の面積を大きくして体重を分散させる(p140)
・エネルギーの元は、炭水化物・脂肪・タンパク質であり種類によって得られるエネルギー量が異なるが、どの栄養分を燃やしても、同量の酸素を使えば、ほぼ同量のエネルギーが得られる。なので酸素消費量を知ると、エネルギー使用量が算出できる(p144)
・基礎代謝率(安静状態のエネルギー消費量)と体重の関係は、基礎代謝率は体重の4分の3乗に比例する、つまり、体重が10倍になると、基礎代謝率が5.6倍(p147)
・4分の3乗とは、システムのサイズが大きくなると、そのシステムを構成している1匹のエネルギー消費量が減るということ、あまり働かなくなる、大きい組織の中の構成員はサボっている(p153)
・恒温動物は変温動物の30倍ものエネルギーを使っている、一方で一日平均のエネルギー消費量は、約15倍、違いが半減したのは、安静時のエネルギーの使い方が異なる、恒温動物は変温動物よりも15倍たくさん食べる(p157)
・サイズの大きい動物ほど心臓一拍の時間が長くなる、心臓の時間は体重の4分の1乗に比例する、つまり、体重が10倍になると、時間は1.8倍ゆっくりになる(p167)
・30グラムのハツカネズミと3トンの象は体重が10万倍異なるので、時間は18倍違う(=18倍ゆっくり進んでいる)、18倍のスローモーションの映像を見ると、画面は殆ど止まって見える、逆に18倍速くすると、何が起きているのかわからない程度に速く動く(p168)
・時間は体重の4分の1乗に比例、体重あたりのエネルギー消費量が体重の4分の1に反比例、両者をかけあわせると一定値がでてくる、すると一生の間に使うエネルギーは30億ジュール(心臓は15億回鼓動する)となる寿命が計算できる、ヒトの場合は、41歳となる(p171、205)
・個々の生物の時間とは、心臓が繰り返し打っている1回分の時間のこと(p173)
・生物は伊勢神宮方式、ガタがきたら元通りにならないので捨てて新しくそっくりのものを作ってしまう、それが子供を作るということ(p177)
・時間は動物によって変わる、つまり、エネルギー消費量に比例して時間が速くなる、例として、車やコンピュータを使うと時間が速くなる(p183)
・人間は、体が使うエネルギーの、40倍ものエネルギーを使っている(p191)
・速い時間と「ゆっくり」の時間とでは、時間の質が違う、そしてその時間の中での経験できることに違いがあり、生きている質そのものにも時間によって違いが生じてくる(p197)
・寿命が延びた原因として、1)子供や青年が死ななくなった(60年代までの延び)、2)老人が死ななくなった(70年代以降の延び)であり、医療の進歩のおかげであり、体そのものが丈夫になったわけではない(p207)
・時間の進む速度が年齢によって遅くなる(時間がゆっくりになる割合が大きくなる)、これは子供の時間は速く、老人の時間はゆっくりだということを意味する(p209)
・老人と子供は同じ期間でも、その間に子供は2.5倍もエネルギーを使う(時間が2.5倍速い)ので、あとから振り返ると、できごとがぎっしり詰まっていて夏休みは長く感じる。時間は、その中に入っている時と、あとから振り返るときでは、感覚が逆になる(p210)
2012年10月17日作成