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豊かな海をはぐくむサンゴ礁にも、日夜潮だまりで砂を噛むナマコにも、あらゆる生きものには大切な意味がある。それぞれに独特な形、サイズとエネルギーと時間の相関関係、そして生物学的寿命をはるかに超えて生きる人間がもたらす、生態系への深刻な影響……。技術と便利さを追求する数学・物理学的発想ではなく、生物学的発想で現代社会を見つめ直す画期的論考。
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Posted by ブクログ
生物学からみた文明論。還暦をすぎたら、本書を入門書に生物学を学ぶのがよい。生態学のところで、サンゴと褐虫藻の共生の描写は、とても美しい。生物のサイズと時間の関係は、目からうろこの感動を覚えました。アロメトリ式(べき乗の式)がちょっと面倒でした。心臓の鼓動15億回、生涯に消費されるエネルギーは30億...続きを読むジュール。これがほとんどの生物において共通しているとは。
◯自然から意味を剥奪してしまって、単なる事実に還元してしまったのが、科学というものです。それはそれで結構な物の見方ですが、それでは子供たちや一般の人々は、どうしても、とっつきにくくなってしまうでしょう。(116p) ◯四角で硬い直線的なものが機能的で良いという美意識に、私たちは慣らされすぎているの...続きを読むではないでしょうか。(136p) ◯伊勢神宮は20年ごとに式年遷宮を行って、そっくりのものに建て替える。こうして1300年たった今も木の香も新しく、現役で機能しています。(177p)
本川達雄著「生物学的文明論」新潮新書(2011) *今の世は、マネーが万事のお金の世。この貨幣経済の背景にあるのも、数学・物理学的発想です。つまり数学・物理学的発想が、この便利で豊かな社会を創り、同時に環境問題などの大問題を生み出しているというのが生物学で世の中を見る著者のスタンスです。 *珊瑚礁に...続きを読むはさまざまな生物がすんでいます。生物多様性が非常に高い場所です。面積では世界の海の「0.1%しか占めていませんが、海水魚の三分の一は珊瑚礁の種です。漁業でも、世界の漁獲高の10%を珊瑚礁が占めています。それだけ生物多様性が高い珊瑚礁なのですが今は世界でも四分の一だけが健全なもので、のこり四分の三は危機的状況にあります。 *生物多様性という言葉には「多」という形容詞が入っているが、多い事がいいことなんだ、だったらどれだけの多さが必要なのか、どれだけ減少したら問題になるのか、量の問題としてとらえたくなるかもしれませんが、そうではなく、多様だということはそれぞれの生物がかけがえない、質がみな違うのだと、質の問題としてとらえたほうが良いです。(1)多様性とは、つまりかけがえのない生物達が互いに関係を持ち合って複雑に絡み合ったシステムをつくっているものです。(2)また、多様な生物たちとつながっていなければ人間はいきていけない、そもそも生物は単独では生きて行けない。という考え方が大切です。 *質と量という話がありましたが、科学は基本的に質を扱わない物です。量だけで考える。すると数式が使えて極めて客観的に見える学問になってくる。経済学もそうです。すべてのものは同じ質であり、違いは多いか少ないかだけ。つまり価値をはかるモノサシはただ一本。すると量の多い方がより豊だ、より良いのだという価値観になりやすい。だからより幸せと思えばどんどん量を増やす。 *科学的発想の問題点はまだあります。科学は普遍性を大切にします。いつでもどこでもあてはまる法則、それが科学では重要です。ところが性粒は個別主義でご当地主義です。異なる環境ごとにそれに適応した異なる種がいます。そしてそういう種は、進化の長い歴史の産物なのであり、歴史には偶然がからんできます。だから多様な生物はそれぞれが特殊なのであって、普遍性を大切にする科学の目からみるとそんなものは重要性が低いと思われがちです。かけがえのないとは特殊だということです。長い歴史をもった特殊なもの、そういう物に価値があるという発想が、生物多様性を大切にする根底にあるものです。 *さらに科学について一言いえば、科学は世界を単純かして眺める物です。世界の構成要素も単純化し、要素間の関係も単純化します。科学が質を問わないのは、構成要素を単純化するためです。ところが生態系は、質の異なる非常に多くの生物達が相互に複雑な関係を結んで出来上がっている物です。 *科学の立場では、見る物と見られる物の間がきっぱりと分かれています。私という見る主体があり、見られる物という客体が別にあるのです。私という主体は、物たちの遥か上方から、いわば神様の視点で物と見て操作します。私と物との間には、距離がありますから、こちらが何をやってもやられた相手がやり返して来て、こっちが危険に陥るなんでことは考えなくてよい。こういうタイトに慣れてしまうと、自然に対して何をやっても自由だし安全だと考えがちになります。それが、自然から大きなしっぺ返しを受ける今のような自体をつくってしまいました。 *考えようによっては、企業と生物は良く似ている。生物とは生き残って子孫を増やすという目的を持ってエネルギーを使いながら、身体や群体という複雑なシステムを動かし維持している物です。そして企業だって、生き残って利益をあげるという目的をもって、エネルギーを使いながら複雑なシステムを動かし維持している物と言えるでしょう。つまり、生物も企業も「目的をもって、エネルギーを使って動いている複雑系」という点では同じとみなせます。だからそれらにおいて、システムのサイズとその構成員の活動度との間ににたような関係が見られても不思議ではないと思います。サイズの生物学は、人間のつくるシステムにもヒントを与えてくれそうです。 *政治や経済のいろいろなことがらについてアロメトリー式をつくってみると面白いと思います。GDPの四分の三乗に比例するもの、三分の二乗に比例する物などの例が出てくるでしょう。 *恒温動物は、エネルギーを投入することにより、即座に早く正確に動けるようにあんり、現在の反映に至っています。ただし、非常に多くのエネルギーを必要とします。一方で変温動物は逆です。つまり、同じもと出て高性能の機械を1台つくるか、それほどでもないものを何台もつくるかという選択です。どちらも選択してもちゃんと生き残っています。ただし、単純に肉の生産装置としてみるならば、変温動物のほうが効率が良いのは確かです。 *いろんなサイズのほ乳類で、心臓一泊分の時間をはかった人がおり、それによると「動物の時間は体重の4分の1乗に比例する」と一般化できそうです。象の時間、ネズミの時間というのがあります。体重の四分の一乗ですから、体重が10万倍違えば、時間は18倍違うという計算になります。象では時間がネズミよりも18台ゆっくりと進んでいるのかもしれません。 *心臓時計は、15億回で泊る。動物は、一呼吸の間にほぼ4回、脈をうちます。これは象でもネズミでも成り立ちます。こうすると、ネズミの寿命は2〜3年、インド象は70年近く生きる物です。時計の時間で比べれば、象は桁違いに長生きですが、一緒に心臓がうつ数はどちらも同じ15億回なのです。体重辺りのエネルギー消費量が、体重の四分の一に反比例している事実が有る結果、心臓一泊の時間をとり、これに体重辺りのエネルギー消費量を掛けると答えは2ジュール。つまり、生涯エネルギーは30億ジュール。一緒の間に、象もネズミも心臓は15億回うち、どちらも30億ジュールの仕事をして死ぬということになります。 *個体一生の時間は、一方向に流れて行き、もとに戻りません。でも世代交代という視点でみれは時間はくるくると回ってもとに戻ります。生物の時間には二面性があります。つまり、一回きりの個体の命、そして親から子へとずっと受け継がれて行く継続する命。 *動物においては、時間の測道と、体重辺りのエネルギー消費量とが比例しています。これを人に当てはめると、体重辺りのエネルギー量は、赤ん坊は非常い大きく、成長するに従って、20歳まで急速に減って行き、20歳を過ぎてからは緩やかに減り続けていきます。これは、子供の時間は早く、老人の時間はゆっくりだということを意味します。エネルギー消費量は、子供の2.5分の1ですから老人の時間は子供の時間の2.5倍ゆっくりだということになります。まてよ、年を取ってきたら、1日も一年も早くたつ。時間が早くなるんじゃないの?と思いますが。なぜ実感は逆になるのでしょうか?時間は、その中に入っているときとあとから振り返った時とでは、感覚が逆になるのではと思っている。 *広い意味での生殖活動。生物は子供を生んでなんぼというものです。子供を生んでずっと子孫が続いていく。そのようにできているのが生物です。身体も行動もそうできるようになっています。生物にとって、生殖活動がきわめて大きな意味を持ちます。ですので老後においてもそれは大切です。しかし、なまなましい生殖活動ができなくなるのが老いです。そこで直接的な生殖活動はできなくても、次世代のためにはたらくことを、これを広い意味での生殖活動ととらえる。これに老後の意味を見つけてきたい。具体的には、老人が子育てを支援し、若者が子育てを行いやすくする環境を整える。身体も脳も日々よく使い自立した生活をして老化をおくらせ、できるだけ次世代の足を引っ張らないようにする。年金があるのだから利益なしで世のために働く。儲からないから誰もやらないが本当は大切な仕事がたくさんあるはずだ。 *今の世は万事お金であり、お金を稼ぐために忙しくビジネスにいそしんでいます。なんでそうするのかに生物学的に応えれば、利己的遺伝子がそうさせているのです。うまいものをたべ、精力をつけ、格好つけてよい子を産みそうな相手をほれさせ、いい家に住んで安全に子を育てながら良い学校にいかせて自分の子孫の反映を図る。これらすべては、利己的遺伝子の欲求です。生殖活動を卒業したとは、このような利己的遺伝子の支配から解放されたことを意味します。だから定年後にまで利己的な価値観や、それから出てくる経済至上主義に縛られる事はないでしょう。つまり、定年後はそれまでとは時間が異なる事を認識する必要があります。ビジネスとはエネルギーを注ぎ込んで時間を早くして、金を儲ける事です。現代社会の時間が以上に速いのは、ビジネスの時間が基調となっているからです。ビジネスではもたもたしていれば負けてしまいます。心を滅ぼしてでも金を稼がなければいけないのが若いときです。でも定年後は、そんな忙しい時間につきあう必要はなくなるのです。人間らしい時間速度にもどれる定年後。この特権を利用しない手はないでしょう。
推薦理由: 1992年に出版されて大きな話題となり、今や必読書と言われている『ゾウの時間ネズミの時間』の著者が、生物学者の立場から述べた文明論であり、環境破壊や資源枯渇などの問題の解決策として、多様性を大切にする生物学的価値判断を提案している。 我々人間も生物のひとつであり、「私」を引き継いでい...続きを読むく子も孫も、自分の周りの環境もみな「私」の一部だと理解すれば、利己的な開発で地球環境を破壊する事はないはずだという言葉には納得させられる。 内容の紹介、感想など: 物質的に豊かな社会を築くために科学や技術を発展させてきた人類は、現在、環境破壊による生物多様性の損失や資源枯渇などの深刻な問題に直面している。これまでの文明は、全てを「量」で扱う数学、科学、経済学的発想にもとづいて、「量が多い=豊か」という価値判断で豊かさを追求してきたが、これからは、「様々な質がある=多様である=豊か」という基準で豊かさを判断する生物学的発想が必要である。 豊かな海を育んでいるサンゴの生態は、エコシステムの素晴らしさと生物多様性の重要性を教えてくれ、砂の上に転がっているだけのナマコの驚くべき生態は、多様な生物はそれぞれにかけがえの無い独自の個性を持つことを示してくれる。生物が基本的に円筒形である理由、生物には多くの水が含まれている理由など、興味深い話題も豊富に盛り込まれている。 そして、『ゾウの時間ネズミの時間』で述べられている「サイズの生物学」については、本書でも改めて述べられている。ネズミの寿命は3年、ゾウは70年。それでも、生涯で使うエネルギーは30億ジュールで同じであり、その一生に心臓が拍動するのは同じ15億回である。拍動も行動も素早いネズミとゆっくりのゾウは、それぞれ別の生物的時間を生きているという説明は、改めて読んでも大変興味深く、物事を色々な視点で見ることの大切さを教えてくれる。『ゾウの時間ネズミの時間』と合わせて是非読んで欲しい。
人間とネズミや微生物の間に流れる時間は等しいものであるが、『体感時間』には大きな違いがあるという話にはわかっているようでわからないとても面白い話であった。生物学の観点から様々な物事をみることの面白さを知れました。
生物学の視点を通して現代社会に生きる人間のあり方を見つめ直す。なかなか良いことを仰っている。 サスティナブル社会を考えていくのに生物の知恵を知るのは重要。
本川達雄(1948年~)氏は、東大理学部生物学科卒、東大助手、琉球大学助教授、デューク大学客員助教授、東工大教授を経て、東工大名誉教授。専攻は動物生理学で、棘皮動物、特にナマコを主な研究対象にしている。「アロメトリー」(動物の各部分の大きさや機能を示す数値の間に成立する「べき乗」の関係)という、日本...続きを読むでなじみの少ない学問分野を平易に解説した『ゾウの時間、ネズミの時間』(1992年)はベストセラーとなった。 本書は、著者が大学の一般教養科目で行ってきた生物学の講義をベースに、NHKラジオで連続講演を行った内容をまとめ、2011年に出版されたもの。著者の専門分野の研究内容を取り上げつつも、エッセイ風のとても読み易い文体・内容となっている。 目次は以下である。 第1章:サンゴ礁とリサイクル 第2章:サンゴ礁と共生 第3章:生物多様性と生態系 第4章:生物と水の関係 第5章:生物の形と意味 第6章:生物のデザインと技術 第7章:生物のサイズとエネルギー 第8章:生物の時間と絶対時間 第9章:「時間環境」という環境問題 第10章:ヒトの寿命と人間の寿命 第11章:ナマコの教訓 前半の共生、生物多様性、水資源、生物の形などの話も面白いのだが、私が特に興味深く読んだのは、後半の「スケーリング」(動物の、大きさが変わったら、体の各部分の大きさや機能がどのように変わるのかを調べる学問で、上記の「アロメトリー」とは、そこから導き出された一定の関係式のこと)を手掛かりにして、著者が展開した、以下のような生命観・文明論的な言説である。(私は『ゾウの時間、ネズミの時間』は既に読んでおり、そこにこそ本書の付加価値が見出せるし、著者が書名を「~文明論」とした意図もそこにあると思われる) ◆時間とエネルギー消費量の関係(エネルギー消費量に比例して時間が速くなる)から、生物は皆(ゾウもネズミもヒトも)、一生の間に心臓は15億回打ち、30億ジュール分のエネルギーを消費して死ぬ。それに基づけば「ヒト」の本来の寿命は40年で、事実、江戸時代の寿命は40歳代である。よって、ここ数十年で寿命は急激に伸びたが、それは技術が作り出した「人工生命体」とも言えるものである。 ◆上記の1サイクルは全ての動物に均しく、親→子→孫という世代交代の繰り返しの単位が寿命と見ることができ、それは真っ直ぐに流れ去っていく物理学の直線的時間とは別の、生物の「回る時間」と捉えられる。 ◆上記より、直接的生殖活動を終えた老後においては、広い意味での生殖活動、即ち、次世代のために活動をすることに意味を見出すべき。 ◆現代人は、社会活動において、エネルギーを使って(便利なものを作り、動かして)時間を速めているという意味で既に「超高速時間動物」となり、更に、エネルギーを使って環境条件を一定に保つ(クーラーや24時間営業のコンビニなど)という意味で恒温動物ならぬ「恒環境動物」となりつつある。 ◆現代人の大きなストレスの原因のひとつは、昔から変わらない体の時間と、桁違いに速くなっている社会生活の時間のギャップによるものと考えられる。社会的時間の考え方を見直すことができれば、精神的な健全性を取り戻すと同時に、温暖化・エネルギー問題の解決にもつながる。 生物とは如何なるものか、生物的に生きるとはどういうことかを、改めて考えさせてくれる良書と思う。 (2022年8月了)
生物からみた人間への視点、生物の多様性と偉大さ、リサイクル性、ゾウの時間とネズミの時間の進み方の違い、世のために働くとはどういうことかと色々なことが書かれている一冊であった。体重の3/4乗、時間は体重の1/4乗、生物学的時間、生物は円柱形、水の大切さ、食物連鎖、生物学的に考えるとはどういうことか?3...続きを読む000万種の生物、水で化学反応、ATP、共生等我々が生物から見習うところは実に多くあると感じた。
固いタイトルとは裏腹に、読みやすくて分かりやすい良著。 「生物学的発想で現代社会を批判的に見た」という著者の試みは成功していると思う。 後半は、著者が「説教じみてしまいました」と少し反省するほど批判に熱が帯びてきているけれど、まぁそれもアリ。
生物の持つデザイン、量(数学・物理学的)よりも質(生物学的)という提言や相対的な時間の考えに納得。中盤は生物の時間・寿命から、ヒトの人生に関するやや哲学的な話に感心した。後半は、また著者の研究対象であるナマコを例にとって締め括られたが、ヒトとして進化してしまった以上、ナマコのような生活もできないし…...続きを読む…本書を読みながら思い出した。若い頃、空力デザインの国産車が没個性的で嫌いで、角ばった四駆に惹かれ20年近く乗り継いだ。これも工業的思考に毒されていたのかなぁ?
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