森下典子のレビュー一覧
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素晴らしい。壮大な人生訓のような、一人の生涯を垣間見るような、エッセイ。日日是好日も読んだはず、映画も見た、の続編の文庫化。24の季節とともに過ごした、森山さんの思い。
二十四節気は、歳時記など、いろいろな場面で出てきたことがあるが、この本より、二十四節気を味わう楽しさを感じられる本はないのではないか。季節とともに過ごした日々、お茶の稽古。お茶の稽古を通して味わった、が正解かな。そして出てくる稽古を頑張ること、できないから練習するということ、美味しそうな茶菓子。挿絵は写真のようにそっくりだけど、優しい味も出ていて、かつおいしそうで、しかも森山さんご本人が書いているというおどろき。
にほんにうまれてよかった、もっと、二十四節気を味わおう、日々大切に過ごそうと思えるエッセイ。20歳で稽古に通いはじめてから、約50年の日が経ち、毎週同じところに通い、自分を叱ってくれるというか正してくれる、失敗していい場、という思いにぐっときた。 -
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原作も読み、映画も観た。
どちらも好きな作品。
そして、その映画化が決まり、
撮影、公開までの日々。
ものを創るということの厳しさ、苦しさ、
喜び、たくさんの苦労によって叶えられる
夢のようもの。それが作品なのだ。
映画化が決まり、茶道指導を任されることに
不安を感じる作者に
お茶の先生はこういう。
「人にとやかく言われるのが嫌だったら、何もしないのが一番なの。何かすれば、文句をつける人は必ずいるものよ。『あのお手前は変だ』と言われたらね、『うちの先生がこうやっていました』って言えばいいの。それだけのことよ」
まるで、樹木希林さんのような。
肚が座ってる、覚悟ある、一流の人ならではの言葉。
樹木希林さんの言動も心に響いた。
かくありたいという人たちが
小説のように現れる素敵なエッセイ。 -
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年度末になると「1月は行く」「2月は逃げる」「3月は去る」という言葉を思い出します。「月日が足早に過ぎる」ことを実感する時期ですね。
さて、厳しい"寒の内"が過ぎ、心なしか日差しが強くなってきた感があります。本書は、そんな春が待ち遠しい時に相応しい1冊と言えるでしょう。
『日日是好日』(2002年刊)には、お茶を通して出会った季節の自然や草花などが、流れる時間とともにとても豊かに描写されていました。本作はその続編(2018年刊)にあたります。本作も、話の軸が著者が50年続けるお茶の稽古です。
茶道に息づく季節の移ろいを、四季を章立てにしながら「小寒」から「冬至」まで二十四節気に沿って分け、匂い、音、肌ざわりで感じた季節を、繊細かつ情感豊かに綴っています。そこには、巡る季節の中の一瞬の「今」が記されています。
日本の四季の美しさや微妙な季節の変化を、これだけ豊かな言葉・文章で表現されると、勝手に脳内が活性化しイメージが膨らみます。普段の自分が、いかに現実世界の具体物に囲まれ、即物的な思考が多いかつくづく思い知らされます。
本書を常に手元に置き、2週に一度巡ってくる二十四節気に合わせ、読み返すのもいいかもしれません。そうすれば、怠惰な身も心を少し自戒し凛とした姿勢を保てるでしょうか? え、無理? -
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日日是好日の原作者が映画化が決まって撮影、公開までの一連の流れを詳細に書いていて、映画ができるまでのことがよくわかった。
大きい流儀のお茶なので、茶道監修みたいな役になった時のプレッシャーをいろいろ書いていたが、それは流儀のギョウテイ先生とかに頼めなかったんかな。
映画と茶の似てるとことして、見えないところも手を抜かないというか、ものすごい労力をかけてワンシーンも出てこないものとかがあって、それが表に出る雰囲気を作るんだなと。
あとは原作を知らなくても映画ができるまでの1つの物語として楽しめると思うし、やっぱ感動させる書き方だな、文章上手だなとも思う。 -
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前作の日々是好日は、本も映画も楽しんだ。茶道を嗜むライターの女性のエッセイだ。その続編があるということを文庫化を機に最近知り、早速求めた。本作は、物書きを生業とする著者が、何十年にもわたってお茶の習い事をするなかで観察してきた日本の24節気の美しさを書き留めたもの。四季のある日本で暮らす喜びや素晴らしさを改めて感じる。
その初々しくみずみずしい観察眼と言語化にしばし忘れるのだが、著者の茶道歴は数十年。結構年配の方のはずである。しかし、四季の移ろいのなかに発見する輝きや切なさには、説教臭さや達観ががなく若々しい。
著者は言う。日本人は毎年、訪れる季節ごとの感覚を忘れ、そして1年後にまたその感覚と新鮮に再会しなおす。そう、不思議なことに、変化に富んだ季節のある国だからか、その時々の空気に触れて記憶が呼び醒まされるまで、日本人はその季節の感覚を器用に忘れ続けている気がする。だから、忙しさにかまけていなければ、日々は新たな季節との出会いや再会の喜びと儚さと切なさに満ちている。そう気がつくと、毎日が楽しく愛おしい。 -
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ネタバレまず、そのタイトルに惹きつけられる。漢字の「愛しい」ではなく、ひらがなの「いとしいたべもの」。前作『こいしいたべもの』から続く、繊細で柔らかな物語の予感に、ページをめくる前からワクワクが止まらなかった。
読み進めて確信したのは、これは単なる食レポではないということだ。一つのお菓子を起点に、五感をフル活用して記憶の扉を開けていく「体験」の記録なのだ。
特に森下さんの感性に深く共鳴したのが、桜餅の話だった。
桜の香りに誘われて辿り着いたのは、五十歳にして気づいた「小学校のランドセルの革の匂い」だったという。あの頃の不安と期待が混じり合ったソワソワする感覚こそが、著者にとっての「春の正体」だったのだ。私の中にも、まだ言葉にならない「モヤモヤとした懐かしい香り」がどこかに眠っている気がする。それをこれからの人生を使って解き明かしていけたら、どんなに素敵だろう。
そして、今の私の生活に最も強く響いたのが「潮干狩りでアースする」のエピソードだ。
実は今、人間関係が理由で仕事を辞めた直後なのだが、著者の「モヤモヤをどこかで晴らしたい」という切実な思いは、あまりに今の自分に重なるものがあった。
砂浜で裸足になり、足の裏からストレスを逃がしていく「アース」。
幸い、今の私は仕事を離れてスッキリとリフレッシュできている。けれど、またいつか心が波立ったときのために、森下さんが海で見つけたような「自分なりのアースする方法」を、これからの生活に取り入れていきたい。
どの物語も、最後の一文は必ず現代に戻って、心地よい「余白」を残してくれる。その余白の中で、私は自分のこれまでとこれからを静かに見つめ直すことができた。
「記憶」を慈しみ、「今」を癒やす方法を見つけること。
仕事をやめ、新しい一歩を踏み出そうとしているこの時期に、この本は美味しい食べ物を通して、大切な生き方のヒントを私に授けてくれた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレルネッサンスの天才彫刻家を追ってと言うサブタイトルに惹かれて、最初、手に取りました。学生の時、ルネッサンス時代の芸術にとても興味が惹かれ、特にラファエロの絵については自由研究でレポートを書いたなぁって懐かしく思いながら。
残念ながら、デジデリオについては初めて目にした彫刻家だったけれど、著者の森下さんが、きっかけはどうであれ、彼女が納得するために彼について調べて行くその内容に、自分も引き込まれるように読んでしまいました。まるで彼が生きていたその自分もいるような感覚で。とても不思議な話だけど、信じたいという内容でした。
久しぶりに読み返した再読記録です。