森下典子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
昔、少しだけお茶を習っていたことがある。毎回お手前の順番を覚えるのに必死で、やっと覚えたと思っても、すぐにまた別のお手前に……その繰り返しだった。
お稽古に通うのは好きだったが、少しずつ知識が増えるうちに、茶の湯の世界はどこまでも奥深く、自分はそのほんの一端を齧っているに過ぎないのだと気づかされたことを、この作品を読んで思い出した。
何十年もお稽古をしている著者でさえ、お茶の世界ではほんの子どもに過ぎないと書いているのだから、すべてを体得しようとしたら、一体どれだけの時間がかかるのだろう。
それでも、続けていれば少しずつ見えてくるもの、聞こえてくるものがある。同じことを毎年繰り返しながら、季節の移ろいを敏感に感じられるようになっていく。
なんと贅沢な時間だろうか。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ自分が習ってきたお茶のことを淡々と語っている。
しかも、けっこう挫折して辞めようともしている。
しかし、その度にお茶の魅力を発見し、踏みとどまり、20年以上続けてきた著者。
著者がお茶の魅力を語るなかに共通していたことに、『自然を感じる』ということがある。
今、私たちは意図的にやらないと、ただぼんやりと雨の音を聞いたりすることがない。
お茶は、様々な作法を通して、自然を感じ、繋がる体験なのかもしれない。
私は山に行って歩いていると、割とぼんやりとしている。
「あの石は踏んだら危なそう」「この声、何の鳥だろう?」「山頂のススキはどんな感じかな?」
色々と、そのばその場で思うまま考えている。
そして山歩きが終わると、なんだかスッキリしている。
町中であれこれ考えているのとは、まるで違う。
思うに、町中で考えていることは、過去や未来のことばかりで、どうにもならないことだ。
しかし自然の中にいると、ただその場で思うことを考える。
だから、安心できるのだと思う。
自然と繋がる感覚。
今の人間には、もっとそれが必要なのだ。 -
Posted by ブクログ
前作の“日日是好日”がとても好印象だったので。
普通に(無意識に)暮らしていると季節を暑い寒いしか感じてないなー私、と思った。街中やスーパー等で作られた季節しか気が付けないのは勿体無い気がした。
最近訪れた松江のお菓子『菜種の里』や、最近読み進めていた星野道夫さんの展示会が登場していて、ふんわりと嬉しく思った。
イギリスの1ヶ月も咲き続ける桜の話と、
高齢の親を看取った稽古仲間への武田先生の年季の入った大人な挨拶と、
高校時代の同級生の「もっと遠くからものを見る視線を持ちたい」というメールと、
生まれ持った自分自身と闘いながら生きている、という悩みについての話と、
「できるなら稽古しなくてよろしい。できないから稽古するんですっ」という武田先生の叱責と。
著者の森下典子さんが描いた挿絵が素敵でした。
-
Posted by ブクログ
中学生の時に茶道の授業があったり、部活動の大会で先輩が読んでいたこともあって、最初は懐かしーくらいの気持ちで読んでいた。
茶道の世界が主な舞台だし、それに関連付けたエピソードが軸ではあるけれど、これから私が踏み込もうとしている世界や、もっと大きく見ると人生についてのエッセイだと思った。
五感と心が忙しなく、しかし疲れることなく動いた時間だった。
今を生きている人全員に当てはまって、それぞれにあった解釈ができるのではないだろうか。
個人的、色んな人に読んで欲しい&定期的に読み返すであろう作品No.1になった気がする。
あと、また茶道を始めたい(笑) -
Posted by ブクログ
ネットで紹介されていて気になって手に取った本。
著者の森下さんが、前世が見える女性から森下さんの前世だと告げられたイタリアの彫刻家について調べるためにフィレンツェとポルトを旅した冒険記。
森下さんというと、「日日是好日」で長く茶道をされている方というイメージだったので、イタリアのこともお好きで暮らしたいとまで思われていたのかとまず驚く。
そして、とにかく森下さんの行動力がすごい。
スピリチュアルを全て否定はしないけど、前世には懐疑的な私だけれど、引き込まれて一気読みしてしまった。
日本の片隅の六畳間の和室で読みながら、ルネサンス期のフィレンツェとポルトに旅をした気分。
前世の真偽はさておき、森下さんの引き寄せ力が凄まじい。
よくぞ500年前の異国の人物についてここまで調べ上げられたと驚く。
ルネサンスというと華やかなイメージだったけど、その時代の背景や「メメントモリ」の言葉の意味を知り、勉強になった。
この体験は、森下さんにとって一生の宝物になったのでは、と思う。
しかし、5度目の生で、デジの他にも鑑真和上の弟子だったこともある森下さんがすごすぎ。
そういえば、私も若い頃ってわりと頻繁にデジャヴを感じていた気がするけど、最近全くないな。 -
Posted by ブクログ
季節を大切に、目の前の季節をしっかり感じて
これから生活していきたい。そう思わされた一冊。
来年の手帳は六曜や二十四節気が書かれた手帳を
購入して、季節をしっかり感じたい。
-お金や洋服などがなくなって自分の身一つになったとき、「持っているもの」はなにか-
と問われると今の自分にはないような気がするから、身一つになったときこれを持っていますと胸を張って言えるものを持ちたい。
あと、いくつになっても、指摘して指導してもらえるってありがたいことだから、いつまでも謙虚に、人の話や指摘を受け入れられる人間でありたい。
とにかく素敵で、もっと自分を大切に、丁寧に
暮らしていきたいと思わされる一冊。 -
Posted by ブクログ
誰かに感想を伝えたいとは思えませんでした。茶道に対する固定観念、先入観が打ち壊されたのは間違いないのです。ですが、この奥深さを知ってしまったことで、言葉に変換して茶道の魅力を衰滅させてしまうことを恐れてしまったのです。
この本が新潮文庫から出ているのはもしかするとここで語られる茶道の魅力というのが即ち道を究めることすべてに当てはまる魅力だったからなのかもしれません。茶道を知っていくと、こんなことがあったというのが書かれているのを見て僕も茶道を初めたい!と思うのと同時に、小説を読む魅力も茶道が持っている魅力と近いのかもしれないと思いました。興味のない人から見れば、なんで小説?と思われがちな我々ですが、小説を読む魅力を一言にまとめると本来の魅力がさらさらとこぼれ落ちて結局相手に上手く伝わらないのです。そういう経験のある方は是非読んでみてください。