森下典子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
デジデリオって誰?
雑誌の取材で、眉唾物の企画と思いながらも人の前世が見える人のインタビューを行い、自分の前世がイタリアルネサンス期に生きた夭折の彫刻家デジデリオであるといわれてしまった著者。
最初はペテンと決めつけていた前世の話も、調べていけばのめりこみ、はてはイタリアはフィレンツェに行っての大捜査。疑い100%で始めていてそこまでやるかという徹底ぶり。そうして得られたものはなんだったのか。
著者は最初から最後まで、基本「前世?そんなうさん臭そうなものはちょっと……」というスタンスを貫くが、それでも眼前に現れる奇妙な符合に心が揺れる。そんなところが実にプレーンで、そしてリアルだった。
いやもう、面白くって一気読み。
でもこの本のジャンルってなんでしょうね。
歴史?
ミステリ-?
僕はあえてノンフィクションに分類してみました。 -
Posted by ブクログ
茶道というものが、こんなに細かい手順があるなんて全く知らなかった。しかも、教えられた手順を覚えようとすると、覚えるなと怒られ、所作の意味を問うとそんなことは考えるなと言われる。手が覚えるまでひたすら意味が分からない所作を繰り返すというところが、まさに「道」という感じだ。学校教育では自分の頭で考えろと言われ続けてきたのに、茶道では考えてはダメと言われるというのは理不尽にも感じるが、著者は長年の茶道の習い事を通して、茶道の素晴らしさと奥深さに気づいていく。
また、季節ごとの和菓子、茶道具の細かな意匠など、茶道は和の美しさに溢れていて、読んでいるだけでもうっとりした。飾られる花、器、和菓子で季節の美しさを知ることができる…こんなに奥深い世界があるなんて。高尚な趣味ってこういうことをいうんだろうなぁ。一見地味に思えるけど、とんでもなく贅沢なお稽古ごとなのだということが分かった。
「雨の日は雨を聴く、雪の日は雪を見る、夏には暑さを、冬には身の切れるような寒さを味わう。…どんな日も、その日を存分に味わう。お茶とは、そういう”生き方”なのだ」と著者はいう。最後まで読むと、その意味がよく分かる。 -
Posted by ブクログ
「日々是好日」にとても感銘を受けて続編。内容的には二十四節気の流れで茶道に絡めた季節感が中心で前作に比べるとサラッと読める。でも、サラッと読むのではなく、本作は心穏やかな時に時間の流れをゆっくり感じながら読むのが正解な気がする。繊細な表現に感性が研ぎ澄まされる。何気ないしきたりや所作自体に全部意味あるのだろうな、と感じられる奥深い世界。
「長い人生を生きて、年を重ねたある日、・・・卒然と気づくのだ。私たちはものすごく不思議なことに囲まれながら、不思議だと思わずに暮らしていたということに・・・」「過ぎるより物足りない位が美しい」分かるのは歳を取ってからだろうけど、そういうのが侘び寂び、風流、粋なのだろうなあ。 -
Posted by ブクログ
旅行の移動中に、何か軽いものが読みたくなって手に取った。
著者が母と暮らす自宅の庭木の下で、野良猫が5匹の仔猫を産んでしまう。もともと猫好きではない著者が、母猫「ミミ」と長男「太郎」を手元に置くことになるまでの葛藤、きょうだい猫たちが順に里親に引き取られていくところ、そして何より猫たちの何てかわいいこと!
猫好きにとってはきっと何度もうなずいてしまうであろう猫あるあるが満載。仔猫はひたすら愛らしく、また一匹一匹がちゃんと違う性格、個性を持っている。特に母猫のミミの健気さと賢さには驚く。
猫をきっかけにしたご近所や親せき、友人とのやり取りにも心が温まる。著者にとって『日々是好日』の茶道がそうだったように、大げさにいうと人生が猫たちによって深いところで豊かになっていく。
こういう本には付きものの、生命ある存在との「お別れ」がないのも良かった。別れの悲しみではなく、猫と暮らす圧倒的な幸せ感に、後半は涙が出てしかたがなかった。 -
Posted by ブクログ
2021.4.17
初めて読むタイプのエッセイ?ドキュメンタリー?だった!不思議な巡り合わせのノンフィクション。森下さんの本はどれを読んでも本当にハズレがない。
ただ、カタカナの外国人の名前などを覚えるのが苦手なので、フィレンツェの旅の間は長いカタカナばっかりで、これ誰の名前だっけ?とかどの聖堂で誰の作品なんだっけ?とこんがらがってしまった。
こういうのって不思議だけれど本当にただただ『ご縁』だなと思うので、ここまで夢中になれる対象と出会えて、更に深く調べることもできて、更に更に本まで出せるなんて清水さんともデジデリオともなんて運命的な巡り合わせだったんだろうと思う。
まるで森下さんと一緒に自分の前世を調べているような感覚になり、散らばっていた点と点が線になっていく過程を楽しめました。
こんな出会いがあって羨ましい!