津村節子のレビュー一覧

  • 紅梅

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    ネタバレ

    小説…とはいえ、ほぼノンフィクションと考えていい、津村節子が、夫吉村昭の舌癌発見から看取るまでの闘病記録的私小説。

    死ぬことを克明につづった文章を読むのは、とてもストレスに感じる行為で、この本も読む前に覚悟をしたのだが、そのストレスは想像していたものとは違って、していた覚悟は別のものに変わっていった。

    俺はどう死にたいのか?妻や家族を看取る時、どういう態度と行動をとりたいのか。観念的なものもそうだが、もっと行動に落とし込んだ具体的な気持ちの持ちようを考えるきっかけを作ってくれたと感じた。

    俺も家族もいつ死に至る病気になってもおかしくないし、まして俺も妻も半世紀以上生きてきてるわけで、世間

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    2024年09月07日
  • 紅梅

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    吉村昭が好きで、よく作品を読んでいる。若いころ結核で死を宣告されたも同然の時期があり、吉村昭の死への思いはとても強い。
    その作家の最期はすさまじく、自分で呼吸器を外しての死だった。自分で安楽死した、というと語弊があるかもしれない。
    その光景を見た妻がどう感じていたのか知りたくて購入したのだが、ここに現れない様々な苦労が滲んでいて、読み進めるのがつらかった。
    あの年代だから、女性が作家として生きていることへの後ろめたさ、でも作家として生きていること、夫への思い、そしてそれらに全部寄り添ってきた夫。
    うらやましい夫婦であると同時に、吉村昭は彼の作品にあるような死生観を、そのまま自分の最期に実行させ

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    2021年04月25日
  • 紅梅

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    私が最も愛する作家、吉村昭の最期を妻が綴った手記。壮絶な最期を遂げた吉村昭の生き様が語られる。潔く死ぬというのを選んだ彼らしい最期。

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    2020年03月24日
  • 玩具

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    「芥川賞の偏差値」を読んで知りました。芥川賞の偏差値の中でも、高い評価が付いていたような記憶がありますが、そんな評価はどうでもよく、これ読むべき小説だと思う。女の機微がほんと秀逸だし、映像的でかっこいいのですよ。黒い十人の女みたいな感じで映画化してくれないかな。音楽は小西康陽先生でお願いします。
    なんでこんないい本が映像化してないのか、意味がわかりません!

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    2017年06月26日
  • 菊日和

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    ネタバレ

    「紅梅」という短編が収録されていますが、吉村昭の最期を書いた話題作とは別物です。紛らわしいなあ。

    友人に、これこれで・・・って表題作の説明をしていたら、意外に作中人物の関係や展開が複雑なことに気付いて。
    友人も「・・・それ、短篇?」って反応でした。

    読んでてボリューム不足という感じはまったくしません。
    どうでもいい薄っぺらな中身に水増しした小説が席巻している今日この頃、大変良心的な作家だなあ、と。

    ・・・。大御所を捕まえて、何を言っておるんだ、私は。

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    2016年11月15日
  • 智恵子飛ぶ

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    とても吸い込まれる話だった。とてもよかったけど、終盤に近づくにつれ、とても辛かった。
    母に借りたが、出会えてよかった本である。
    扇子をおいていって、という場面が好き。
    吉本隆明の書く、高村光太郎を読んで見たい。

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    2009年10月07日
  • 玩具

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    いっしょに住んでておたがいにおたがいの気持ちを探りあうようなことはあまりしたくないんだけどついついそうなってしまう男と女にはつきものの。男はたいていそうなると何かに逃げるというかそらすというか。そういう男心をわかりつつも。金魚に逃げられたらそりゃちょっと戸惑う。でも。ほかの女に逃げなきゃたいていそういう男はちゃんと女のこと好きだよ。と。そう思いながら読んでいても女があまりに健気で。かわいそうに。玩具っていうタイトルがとってもいいことワカリマス。

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    2011年09月15日
  • 紅梅

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    作家吉村昭の妻であり小説家でもある津村節子が、吉村の闘病から死に至るまでを小説として書いたもの。もともとそれぞれが小説家として活躍して多忙を極めた二人であり、病気が深刻化してからもその淡々としたところはあまり変わらない。しかし、病気のことを家族以外には一切伏せている事から大小様々な問題も起こる。静かに良い死に方を考える夫に対し、自分の仕事をしながら夫の代理をつめめることもある妻は、夫に優しくできないことを悔やむ。夫の体を洗ったり、足を揉んだりする描写が、表には出ない二人の愛情の一端を覗き見た気もして、こんな最後もいいかもしれない。

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    2025年04月19日
  • 紅梅

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    この本を読む前、ご主人の吉村昭さんの「冷い夏、熱い夏」を読みました。
    弟の凄絶な癌の闘病や死を書いた吉村さんが、ご本人が癌になった時、どう向き合ったのか知りたくて手に取りました。

    この本は、同じ作家であり、吉村昭さんの妻である津村節子さんの目から見た、吉村さんの癌発覚から最期の様子を記した本です。

    吉村さんは、辛い症状に苦しんでいたかもしれないけれど、病気を受け入れて、自分なりの死生観を貫いて、とても落ち着いて亡くなったのだなと思いました。

    最期の最期の行動は、衝撃的だったけれど、本人にとっては一番納得のいく方法だったと思うし、それを受け入れた奥さんと娘さんも素晴らしいと思います。

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    2021年10月04日
  • 智恵子飛ぶ

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    帰省中に持ってきた本を読み終えてしまったので、実家にあったこの一冊を勧められるがままになにげなく読み始めたのだけれど、まさかこんなに私にも縁のある話だとは思わなかったな。
    土地柄"智恵子抄"は幼い頃から知っていた。でも、そもそも智恵子がどういう女性で、夫の高村光太郎がどういう男性であったのかはまったく知らなかった。二人が、どういう夫婦であったのか。
    智恵子が「青鞜」創刊号の表紙絵を描いていたなんてびっくりだったし、生家の没落や夫への嫉妬や芸術への苦悩から精神を病んで、壮絶な晩年だったことも初めて知った。智恵子抄は、光太郎の創作の源泉であった智恵子を最後の最後まで彼がみつめつ

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    2021年08月20日
  • 紅梅

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    まだ身近な人が亡くなったことがないのでグサグサ刺さったわけではないけど最後はザワッときた

    こんな最後の最後まで想ってくれる人がおるなんて幸せやな、吉村さんの本も読んでみたくなった

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    2020年10月14日
  • 時の名残り(新潮文庫)

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    小説家ってほんまに大変そうで、かっこいいけどなりたいとは思わへん。
    でもネタのためであれ、詳しい話を聞きに行くとか、色んなことやってみることの大切さは最近とても実感した。学ぼうと思わないと学べへんし、学んだことはどんな雑学でも為になるねん。ちょっとズレるけどそんなこと思いながら読んでた。

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    2020年10月05日
  • 掌篇歳時記 春夏

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    24節気を3等分した72候があることを知って、日本には季節を細かく愛でる文化があったのだと再認識した.その季節感を念頭に置いて、著名な作家が短編を綴るという贅沢な本だが今回は春夏を読んだ.村田喜代子の雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)が面白かった.戦前の裕福な家庭に育った姉妹だが、それぞれにねえやがいて、様々な世話をするという、今では考えられない家庭内のやり取りが出てくる.あんな時代があったことは、映画や小説の中でしか接することはできないが、この姉妹の会話からその情景が想像できることが新しい発見をしたような感じだった.

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    2019年11月06日
  • 掌篇歳時記 春夏

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    トップバッターの 瀬戸内先生のが 一番俗っぽかったな と思うほど 瀬戸内先生 相変わらず かわいらしい人を書くんですね ほぼほぼ 幻想的で不思議な短編 ちょっと読むには 分かりにくいものもある 芥川賞作家が多いからでしょうか

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    2019年08月22日
  • 三陸の海

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    「遍路みち」「紅梅」、夫であり大作家である吉村昭氏追悼の作品、そして「三陸の海」は津村節子さんの吉村文学引き継ぎの作品でしょうか~!2013.11刊行、2015.10文庫化です。二人で東北、北海道を行商した苦しかった新婚時代、芥川賞、直木賞の候補2度、3度の死に物狂いだった頃、そして津村さんが眺めるアルバム、田野畑村8冊、長崎8冊。吉村文学の原点が田野畑村!「三陸海岸大津波」では「3.11」の40年以上も前に警鐘を。吉村氏の「星への旅」も読みたいです。津村節子さんの吉村昭さんへの深い愛が胸を打ちます!

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    2017年01月01日
  • 遍路みち

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    遍路みちは、著者の津村節子さんが、夫である吉村昭さんの死に向き合った日々をようやく、亡くなってから3年後に納めた著作である。亡くなるまでの夫婦の想い、亡くなって初めて気づいたことなど、吉村昭ファンとしては、心に残る作品であった。

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    2016年06月17日
  • 三陸の海

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    作家であり、吉村昭の妻である津村節子により吉村昭と田野畑村との深い関わりを辿る書である。

    かつて、日本のチベットと言われた陸の孤島、田野畑村。吉村昭は田野畑村を訪れ、田野畑村の鵜の巣断崖を舞台にした『星への旅』という小説を書いたことから、田野畑村との関わりが始まる。早野仙平村長と交流する中で記録文学の傑作とも言うべき、『三陸海岸大津波』を発表し、さらには『梅の蕾』という短編を発表する。

    これほど、吉村昭が田野畑村と深い関わりを持っていたことを知らなかった。『三陸海岸大津波』は東日本大震災への警鐘とも取れる大傑作であったが、『梅の蕾』も心打たれる素晴らしい短編だった。『星への旅』は未読であり

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    2015年10月18日
  • 紅梅

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    辛い。
    健康に生きるのは簡単じゃないけど、死ぬのはもっと難しい。ちゃんと向き合いたいけど、そんなこと出来るだろうか。
    津村さんの本を読んで、吉村さんの本を読んでみたくなりました。

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    2014年07月29日
  • 紅梅

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    吉村昭の最期の様子を新聞で読み、感動したものだが、その病気から臨終の様子を克明に淡々と描写していく。そして、合間合間に二人の作家の過ぎ去りし日々が語られていく。夫婦愛の物語でもあり、戦後を生きてきた夫婦の物語でもある。老境にさしかかりつつるある自分の身を振り返りながら読み進め、ずっしりと胸に響く一冊となった。

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    2013年08月10日
  • 玩具

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    65年の芥川賞受賞作を含む短編集。
    だいぶ前のですが…昔は女性の受賞者って少ないんですね。
    同人誌に小説を投稿している風変わりな夫に尽くしながら満たされない平凡な若い妻の話。
    妻の嫌いな金魚を飼ったり、何かにとりつかれたように勝手な夫…
    「名短編ここにあり」に掲載されていた吉村昭が作者の実際の夫。
    その作品のことが小説中で触れられてます。奥さん像は違うし、私小説というのではないようですが。
    作者は1928年福井県生まれ。

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    2009年10月07日