津村節子のレビュー一覧
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ネタバレ小説…とはいえ、ほぼノンフィクションと考えていい、津村節子が、夫吉村昭の舌癌発見から看取るまでの闘病記録的私小説。
死ぬことを克明につづった文章を読むのは、とてもストレスに感じる行為で、この本も読む前に覚悟をしたのだが、そのストレスは想像していたものとは違って、していた覚悟は別のものに変わっていった。
俺はどう死にたいのか?妻や家族を看取る時、どういう態度と行動をとりたいのか。観念的なものもそうだが、もっと行動に落とし込んだ具体的な気持ちの持ちようを考えるきっかけを作ってくれたと感じた。
俺も家族もいつ死に至る病気になってもおかしくないし、まして俺も妻も半世紀以上生きてきてるわけで、世間 -
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吉村昭が好きで、よく作品を読んでいる。若いころ結核で死を宣告されたも同然の時期があり、吉村昭の死への思いはとても強い。
その作家の最期はすさまじく、自分で呼吸器を外しての死だった。自分で安楽死した、というと語弊があるかもしれない。
その光景を見た妻がどう感じていたのか知りたくて購入したのだが、ここに現れない様々な苦労が滲んでいて、読み進めるのがつらかった。
あの年代だから、女性が作家として生きていることへの後ろめたさ、でも作家として生きていること、夫への思い、そしてそれらに全部寄り添ってきた夫。
うらやましい夫婦であると同時に、吉村昭は彼の作品にあるような死生観を、そのまま自分の最期に実行させ -
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この本を読む前、ご主人の吉村昭さんの「冷い夏、熱い夏」を読みました。
弟の凄絶な癌の闘病や死を書いた吉村さんが、ご本人が癌になった時、どう向き合ったのか知りたくて手に取りました。
この本は、同じ作家であり、吉村昭さんの妻である津村節子さんの目から見た、吉村さんの癌発覚から最期の様子を記した本です。
吉村さんは、辛い症状に苦しんでいたかもしれないけれど、病気を受け入れて、自分なりの死生観を貫いて、とても落ち着いて亡くなったのだなと思いました。
最期の最期の行動は、衝撃的だったけれど、本人にとっては一番納得のいく方法だったと思うし、それを受け入れた奥さんと娘さんも素晴らしいと思います。
日 -
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帰省中に持ってきた本を読み終えてしまったので、実家にあったこの一冊を勧められるがままになにげなく読み始めたのだけれど、まさかこんなに私にも縁のある話だとは思わなかったな。
土地柄"智恵子抄"は幼い頃から知っていた。でも、そもそも智恵子がどういう女性で、夫の高村光太郎がどういう男性であったのかはまったく知らなかった。二人が、どういう夫婦であったのか。
智恵子が「青鞜」創刊号の表紙絵を描いていたなんてびっくりだったし、生家の没落や夫への嫉妬や芸術への苦悩から精神を病んで、壮絶な晩年だったことも初めて知った。智恵子抄は、光太郎の創作の源泉であった智恵子を最後の最後まで彼がみつめつ -
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作家であり、吉村昭の妻である津村節子により吉村昭と田野畑村との深い関わりを辿る書である。
かつて、日本のチベットと言われた陸の孤島、田野畑村。吉村昭は田野畑村を訪れ、田野畑村の鵜の巣断崖を舞台にした『星への旅』という小説を書いたことから、田野畑村との関わりが始まる。早野仙平村長と交流する中で記録文学の傑作とも言うべき、『三陸海岸大津波』を発表し、さらには『梅の蕾』という短編を発表する。
これほど、吉村昭が田野畑村と深い関わりを持っていたことを知らなかった。『三陸海岸大津波』は東日本大震災への警鐘とも取れる大傑作であったが、『梅の蕾』も心打たれる素晴らしい短編だった。『星への旅』は未読であり