樋口明雄のレビュー一覧
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シリーズ10作目。
冬の北岳で起きた火球の目撃情報。そして尾池小屋では何者かに厨房を荒らされていた。
他にも登山者のテントが襲われ、けが人も何人か発生し、目撃情報から、「雪男」が犯人らしいと見当をつけた山岳救助隊のメンバーは狩猟会のメンバーと共にパトロールを始める。
火球や雪男の情報はYouTubeなどで拡散され、世間の話題に…
一躍人気YouTuberになる為に、冬山の登山経験もほとんどないのに北岳に入る大学生や、自分たちのエゴの為だけに雪男を仕留めようと、勝手に狩猟を始める狩猟会のメンバーなど、冬の北岳の自然をバックに様々な人物の思惑が巡り巡る展開。
正直、帯の「雪男」にはちょっと引いたし、どんな感じでこの奇怪な事件を展開していくんだろうと思ったが、意外と無理な感じもなく、物語に引き込まれた。
これまでも、どんどん事件のスケールが大きくなって来たが、今作ではとうとう他国が登場し、どうなることやらと思ったが、今回は山岳救助隊のメンバーの活躍もきちんと描かれるし、何より納富機長の登場回数が多いのは、ファンからすると嬉しい。
YouTuberの描写については、冬の富士山に登って、ライブ配信中に転落して亡くなった方のことを思い出した。
YouTubeを見ない人間として、視聴数がどんなに大事なのかは分からないが、人に迷惑をかけるような行為は絶対に許せないし、この作品をYouTuberの人が読むようなことはないと思うが、何かの注意喚起になればと願いたくなるような内容だった。 -
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シリーズ第9弾。
あとがきにもあるが、前作では舞台が北岳ではなかったので、久しぶりに舞台が北岳に戻って来た!と言う印象。
山岳救助隊が待機する山小屋のオーナーも代替わりし、これまでバイトだった松戸がオーナーとなったり、シリーズと共に時代の変化も感じる。
今作では引きこもりの少年を、ひょんなことから預かることになり、その少年の命を狙う義父の手から、必死に少年を守ろうとする夏美たち。
同時に「山ガール」として知られるアイドルが、撮影の為に北岳に登るが、その取り巻きに怪しい人物を見つける夏美。
夏美の予感は当たり、美しい北岳を舞台に凄惨な事件が起こる、と言う展開。
久しぶりに夏美と深町のパートがあり、以前から読んでいるファンには堪らないだろう。夏美が見える色の話も久しぶりに読んだ気がする。
しかし、凶悪犯が山に紛れて来る展開が最近は多く、本来自然を楽しむための山の良さが失われてしまう感じがするので、星は少な目で。
いつもより、ページ数も多く読み応えはあったけど、2つも凶悪事件が発生する展開は微妙…
前半はお馴染みのメンバーもまんべんなく登場し、平和な雰囲気だっただけに、後半の急展開にちょっとついていけなかった。 -
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〈南アルプス山岳救助隊K-9〉シリーズ。
「クリムゾンの疾走」の阿佐ヶ谷署の大柴が再登場。
南アルプス署に勾留中の窃盗被疑者の移送を命じられ、後輩刑事と共に車で移送中、何故か大型トラックに追突される。しかしこれは悪夢の始まりでしかなく…。
『大藪春彦の小説じゃねえんだ』
という大柴のセリフがあるが、私に言わせれば『新宿鮫』かよ!という印象。あっちは桜田商事(あるいは桜井商事?)だったかな。
つい最近、政治の世界で大いに盛り上がったあの問題が取り上げられているが、そこにここまで冒険要素を絡めるとは。
こんなことが、まさか現実にはないだろう…と言い切れないのも政治の世界に不信感が高まっているからか。だが、さすがにこれはやり過ぎかな。そもそもプロの仕事ならもう少し自然に見せるよう、上手くやるだろう。
神崎静奈のクールさと強さが光り、格好良かった。しかも体一つで闘うのだから、大柴でなくとも惚れてしまうだろう。
ただ『山岳救助隊』シリーズというには、今回は静奈がジレンマを抱えるように、何を以て『救助』というのか難しいところ。良い人は助けるが悪い人は助けないのか?
そもそも良い人悪い人とはどこで線引きするのか?
毎回悪役がはっきりしているこのシリーズだが、人間はそこまで白黒はっきりした生き物ではない。
派手な闘いを描いた割にはあっけなく終わったのがちょっと残念。
夏実を始め救助隊グループがあまり出て来なかったのも残念。
しかし大柴との絡みがこれからもあるのか、そちらは少し楽しみ。 -
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やはり、樋口明雄氏の書く本は面白い。
冒頭から切れ目なく続く連続した緊迫感と繰り出されるアクション。
そして、静かで切なく、自然の中で、きっちりと方をつけるエンディング。
天空の犬シリーズの読者には堪らないし、天空の犬シリーズを知らない人にもお勧めできる一冊。
冒頭出てくるのは、いつもの星野夏美と神崎静奈。
天空の犬シリーズの始まりかな?と誤認するのだが、すぐに彼女たちは山を下りる。
その後、夏美は姿を消し、美しき武闘家神崎静奈巡査の戦いが始まる。
樋口氏の書く物語の背景は、いつもとてもリアル。
日本の国という組織、政治、そして警察という組織に存在する悪。そのリアルに翻弄される現場警察官と元官僚。
像絶な戦いの後にやってくる山の景色と静寂。
天空の犬シリーズが始まった時に、神崎静奈巡査はここまで重要な役割を占めていたのだろうか?
いや、彼女はきっとシリーズの中で徐々にその姿を現していき、ついにメイと夏美のコンビ抜きの物語を成立させてしまったのだろう。
天空の犬シリーズがメイと夏美の物語であるとしたら、本作品は神崎静奈の物語だったと思う。
ごめん、バロン。君は活躍したけど、静奈さんの活躍がすごすぎる。