樋口明雄のレビュー一覧
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南アルプス山岳救助隊K-9シリーズ11作目。
いつものように、夏美と神崎の2名の山岳救助隊警察官・ハンドラーが遭遇する様々な事件。
天空の犬も流石に11作目ともなると、シリーズ初期の作品とは異なり、夏美とメイだけが主人公になることはない。
山岳救助隊の面々が、様々な場面で遭遇する日常の事件。そこに各メンバーの個性を活かした展開がある。
本作は2つのエピソードを合わせた中編集。
朝の電車で読み始めたのに、帰りの電車までもたないという面白さ。
私は北岳に入ったことがないけれど、八ヶ岳付近にはしばしば通っている。
今回も、本書を読みつつ、脳裏に山の景色が浮かんできた。
次の作品を読めるようになる日 -
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〈南アルプス山岳救助隊K-9〉シリーズ第11作。
長いシリーズとなったが救助隊の面々、特に夏実や静奈の状況には変わりはない。二人とも思い人あるいは思われ人はいるが、進展する様子もない。じれったいような気もするがこのままでも良いようにも思う。特に静奈と大柴はこのまま友情関係というか同志関係で良いのではないかとも思っている。
今回は2編。
「リタイア」
以前「風の渓」で出会ったアイドル・安西友梨香と、初老の作家・鷹森壮十郎がそれぞれの思いを胸に北岳に登る。途中まで夏実が同行するも、遭難の連絡により離脱。「風の渓」で遭遇した事件のトラウマを引き摺る友梨香と登山初心者の鷹森。これで何も起こらない筈は -
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<南アルプス山岳救助隊K-9>シリーズの5冊目。
順番に読もうと思っていたが、なかなか中古本屋で見かけないので、この前見つけた文庫最新作のこの本に行ってみる。
しかし“火球に乗って北岳に落ちてきた雪男”とは、『三流SFホラー映画じゃあるまいし』P.45 といった出だし。
勿論、三流…ではなく真っ当な展開になるのだが、防衛省が出張ってきた段階でネタバレかな。
それにしても、不明生物を観光立地のマスコットにしようとする職員も、猟果に拘る猟師も、一発当てんとするYouTuberも碌なやつはいないな。
そうでなくては話が成り立たないのではあるが、そうした愚かな人間たちを“雪男”が哀れむ体の作りにな -
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〈南アルプス山岳救助隊K-9〉シリーズ第10作。
今回はなんと『北岳に雪男出現?』の巻。
冒頭は大学生が登山中に目撃した流れ星。その後、山小屋の厨房が破られて食料が荒らされた現場から謎の白い毛玉が。そして山岳カメラマンが望遠レンズで捉えたのは白い毛に覆われた、人に似た大型の猿のような姿。この生物は何なのか、宇宙から来たのか?
荒唐無稽な話かと思ったら、そこは樋口さんのこと現実性ある話にしてくれた。
謎の生物は登山者のテントを襲ったり、特別天然記念物のライチョウを襲ったり、いつ人的被害が出てもおかしくない状況。
北岳はついに入山規制がされ、本格的に謎の生物捜索となるのだが、勿論そう簡単にはい -
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<南アルプス山岳救助隊K-9>シリーズ。
今回は二つの物語が同時進行していく。
一つは両親からの虐待ですっかり心を閉ざしている少年・悠人の話。
唯一彼を気にかけている伯母に連れられて南アルプスにやって来た縁で、一時的に両俣小屋に預けられることになった悠人。一日中ゲームをしているだけだったのだが、釣りをきっかけに小屋の管理人・加賀美叔子始めアルバイトスタッフたちとも心を通わせるようになっていく。
だが悠人の父親の会社が破産し、ヤクザとつながりのある父親は悠人にとんでもない危害を加えようとしている。
もう一つはハッカー・桜井和馬の話。
表向きは引きこもり、だが実はハッキングで多額の金を稼いで -
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シリーズ10作目。
冬の北岳で起きた火球の目撃情報。そして尾池小屋では何者かに厨房を荒らされていた。
他にも登山者のテントが襲われ、けが人も何人か発生し、目撃情報から、「雪男」が犯人らしいと見当をつけた山岳救助隊のメンバーは狩猟会のメンバーと共にパトロールを始める。
火球や雪男の情報はYouTubeなどで拡散され、世間の話題に…
一躍人気YouTuberになる為に、冬山の登山経験もほとんどないのに北岳に入る大学生や、自分たちのエゴの為だけに雪男を仕留めようと、勝手に狩猟を始める狩猟会のメンバーなど、冬の北岳の自然をバックに様々な人物の思惑が巡り巡る展開。
正直、帯の「雪男」にはちょっと引いたし -
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シリーズ第9弾。
あとがきにもあるが、前作では舞台が北岳ではなかったので、久しぶりに舞台が北岳に戻って来た!と言う印象。
山岳救助隊が待機する山小屋のオーナーも代替わりし、これまでバイトだった松戸がオーナーとなったり、シリーズと共に時代の変化も感じる。
今作では引きこもりの少年を、ひょんなことから預かることになり、その少年の命を狙う義父の手から、必死に少年を守ろうとする夏美たち。
同時に「山ガール」として知られるアイドルが、撮影の為に北岳に登るが、その取り巻きに怪しい人物を見つける夏美。
夏美の予感は当たり、美しい北岳を舞台に凄惨な事件が起こる、と言う展開。
久しぶりに夏美と深町のパートがあり -
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〈南アルプス山岳救助隊K-9〉シリーズ。
「クリムゾンの疾走」の阿佐ヶ谷署の大柴が再登場。
南アルプス署に勾留中の窃盗被疑者の移送を命じられ、後輩刑事と共に車で移送中、何故か大型トラックに追突される。しかしこれは悪夢の始まりでしかなく…。
『大藪春彦の小説じゃねえんだ』
という大柴のセリフがあるが、私に言わせれば『新宿鮫』かよ!という印象。あっちは桜田商事(あるいは桜井商事?)だったかな。
つい最近、政治の世界で大いに盛り上がったあの問題が取り上げられているが、そこにここまで冒険要素を絡めるとは。
こんなことが、まさか現実にはないだろう…と言い切れないのも政治の世界に不信感が高まっている -
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やはり、樋口明雄氏の書く本は面白い。
冒頭から切れ目なく続く連続した緊迫感と繰り出されるアクション。
そして、静かで切なく、自然の中で、きっちりと方をつけるエンディング。
天空の犬シリーズの読者には堪らないし、天空の犬シリーズを知らない人にもお勧めできる一冊。
冒頭出てくるのは、いつもの星野夏美と神崎静奈。
天空の犬シリーズの始まりかな?と誤認するのだが、すぐに彼女たちは山を下りる。
その後、夏美は姿を消し、美しき武闘家神崎静奈巡査の戦いが始まる。
樋口氏の書く物語の背景は、いつもとてもリアル。
日本の国という組織、政治、そして警察という組織に存在する悪。そのリアルに翻弄される現場警察官と元