樋口明雄のレビュー一覧
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<南アルプス山岳救助隊K-9>シリーズの10冊目。
今度も巻頭に北岳付近の地図はないが、今回は山を舞台にした160頁程度のお話が2篇。
最初の話には「風の渓」に出て来たアイドル安西友梨香が再び登場。ちょっとしたなりゆきで山を舞台に作品を構想中という作家の鷹森と一緒に北岳の頂上を目指すことになる…。
アイドルにせよ作家にせよ、その世界でトップにあり続けるのは大変ね。
傍若無人な作家先生が実はあんなんでしたというのはあまり面白みはなかったが、しっかり者で過去も乗り越えた友梨香は芸能界だけでなくどこででもきっと活躍できることでしょう。
次の話は息子を山で亡くした両親vs.山岳救助隊のお話。
誰かのせいにしたい気持ちは分からないでもないが、息子が助からなかったのは救助が遅れたからと恨まれても、隊員としてはなかなか辛い状況ね。
真摯に仕事に向き合う関隊員と彼の思いを理解している新妻の心根が塞いだ両親の心を溶かしていくところが良かった。
2つの話とも展開はありがちだが、読み心地は山の空気に似て爽やかだった。 -
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<南アルプス山岳救助隊K-9>シリーズの9冊目。
巻頭に北岳付近の地図がないと思ったら今度も山から離れてのアクションか。
「クリムゾンの疾走」に出て来た大柴が再び登場。本庁から南アルプス署で拘留中の窃盗被疑者の移送を命じられた大柴が事件に巻き込まれ、一方、休暇で山を下りていた静奈がそれを知りバロンとともに現場へ向かうという展開。
大柴は飛び来る銃弾を間一髪でかわし続け、静奈は一足遅れを繰り返し、ようやく追いついてからは車を捨てて山を縦走する逃避行。追手は後ろから前から上からと、来るわ来るわ。それをひとりずつ屠っていく静奈の強いこと強いこと。
テンポよくサクサクと読めたが、話としてはちょっと雑。
幹線道路を閉鎖したり、バスの運転手が巻き添えで亡くなったり、主人が匿ってくれた家で奥さんが警察に通報したり、あれだけ市民を巻き込んでおいて何もなかったことにされているというのも、フィクションなりのリアリティに欠ける。
「クリムゾンの疾走」の感想に『このシリーズでは北岳で犬たちが活躍する話を読みたいね』と書いたが、今回は尚更にそう思った。 -
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北岳に行きたい理由が2つありました。1つは昨年叶ったんですが北岳にしか咲かないとゆう希少種の「キタダケソウ」をみるため日帰りピストンしました。花の時期が早いので6月の開山と同時に行ってきましたがもう終盤を迎えてましたが見れてラッキーでした。下界は晴れていたのですが2500m以上はガスに覆われ10m位の視界のなか、強風にミゾレまじりの雨が冷たくって、煽られながらも凛として咲く姿の可愛いらしい花でした。今度行くときは晴天の眺望のよいときに行きたいと思いました。
そして2つ目は、北岳~間ノ岳の「天空の縦走路」を歩きたい。3000mの稜線歩きが楽しめる日本最高地の縦走路があるのです。ここを歩いてみたいと長年の憧れだけどタイミングがあわず叶えられずにいます。花の季節には数々の高山植物が咲き誇り、雄大な眺望は近景に甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、鳳凰三山、南ア南部の山々に、遠方は中アに北アも、勿論富士山もみえる。ここも日帰りで考えているのですが私の脚で10~12時間の行程になるのでなかなか実行できずにいるのです。とゆうのは、時間制限があるからなんです。登山口の広河原までは車で行けず芦安より乗合タクシーを利用し5時の始発に乗って広河原着が6時、最終が16時30分なので10時間30分以内にピストンできなければ日帰り無理なんです。
それに5時の始発に乗るには4時には並んでないとダメだから逆算すると前日の23時には自宅を出発してないと間に合わないんです。
帰りは無茶疲れて眠くなるのでSAで仮眠をとりながら帰宅すると。日帰りと言えども全行程24時間かかるとゆうタイトスケジュール。長野あたりに移住したいってつくづく考えてしまいます。山小屋利用して1泊2日で考えればわりと実現可能なのですけど。
前置き長くなりましたが、
北岳まわりにある5つの山小屋のルポ、ジャケ借りで収穫した本です。
各山小屋の特徴とか実態が書かれてました。遭難者が出た時の対応とか苦労話、マナーの悪い客のこと等々
広河原エリアは南アの玄関口として上高地や八ヶ岳のような観光リゾート化を推進してるのだから、客の不満話よりもサービスの向上にむけて努力するのが肝心に思えるんです。コロナの影響もあったので山小屋の経営が厳しいのは充分解ってますが、宿泊料金だって1泊12000円と値上りましたし高額なわりに食事はチープだし、売店で飲み物買うにしても1本500円とか、トイレも、水も有料なのが現状なんです。時代に迎合するのでもなく、ただそこに凛として存在しているような小屋があれば嬉しく思います。キタダケソウのように・・・
その中で行ってみたいと思った山小屋がありました。両俣小屋です。メインルートから大きく外れてた仙丈ヶ岳との谷間にある小さな小屋で山慣れた人じゃないと行けないような所にあります。北岳登山のマイナールートである左俣ルートが荒廃して通行止になっているので利用する登山者は減ってきてるとのことなのですが小屋番は星美知子さん、女性の方です。それに猫2匹だとか。30人程収容できる広さで夏場の繁忙期にはバイトも雇うようですが基本1人できりもりしてるとか。それと経歴に興味津々。文学部を中退し出版業界で働いたことから、後に桂木優のペンネームで『41人の嵐』とゆうノンフィクションを執筆されたことがあるとか。これは1度読まないといけない。彼女1950年生れなのでなんと今年で73歳。
ネットで両俣小屋を検索してみたら昨年11月に更新されたページがあり去年までは営業されてた様子でまた来シーズン元気でお会いしましょうと張紙されてるフォトがありました。
この山小屋は、星さんが現役のうちに是非とも訪れてみたく思いました。 -
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南アルプス山岳救助隊シリーズ。
南アルプス北岳の山岳救助隊の夏実と救助犬メイを主人公としたシリーズだが、今作では救助犬はあまり登場せず、中編2作が収められている。
以前、山で夏実たちに救助された女性アイドルが、再び北岳を訪れ、過去の事件のトラウマや自分の仕事と向き合う1篇。『リタイア』
山で命を救えなかった隊員の関と、その遺族の悲しみや苦しみから生じた事件を描いた1篇。『孤高の果て』
読み慣れたシリーズなので、安心して読める。
『孤高の果て』では八ヶ岳の野生鳥獣保全管理官がクマの生態調査にやってくるなど、他作品の人物も登場して楽しめる。
山を訪れる人間の身勝手さや、山の厳しさも伝わるが、長編ではないため、さらりとした印象でもあった。 -
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樋口明雄『サイレント・ブルー』光文社文庫。
珍しい地下水問題をテーマにした社会派小説。
水と空気はタダという日本の常識は覆されつつある。山を荒らせば、良い水を得ることが出来なくなり、二酸化炭素排出や大気汚染は世界規模で問題になっている。
環境問題を描いたチャレンジャブルな小説である点は評価できるが、腹落ちするような結末ではないのが残念。
家族と共に八ヶ岳南麓に移住して来た秋津俊介は別荘地のログハウスでレストランを開業する。病気がちの息子も元気になり、レストラン経営も順調だったが、ある日、別荘地の井戸に異変が起きる。
井戸の水が茶色く濁り、その後、水位が下がり、水が出なくなったのだ。井戸に異変が起きた頃、地元の水企業が近くで大規模なボーリングで取水を開始していた。
しかし、企業側は井戸が枯れた原因と企業の取水とに因果関係は無いと主張する。
本体価格860円
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南アルプス山岳救助隊K-9シリーズ11作目。
いつものように、夏美と神崎の2名の山岳救助隊警察官・ハンドラーが遭遇する様々な事件。
天空の犬も流石に11作目ともなると、シリーズ初期の作品とは異なり、夏美とメイだけが主人公になることはない。
山岳救助隊の面々が、様々な場面で遭遇する日常の事件。そこに各メンバーの個性を活かした展開がある。
本作は2つのエピソードを合わせた中編集。
朝の電車で読み始めたのに、帰りの電車までもたないという面白さ。
私は北岳に入ったことがないけれど、八ヶ岳付近にはしばしば通っている。
今回も、本書を読みつつ、脳裏に山の景色が浮かんできた。
次の作品を読めるようになる日が、待ち遠しいものだ。 -
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〈南アルプス山岳救助隊K-9〉シリーズ第11作。
長いシリーズとなったが救助隊の面々、特に夏実や静奈の状況には変わりはない。二人とも思い人あるいは思われ人はいるが、進展する様子もない。じれったいような気もするがこのままでも良いようにも思う。特に静奈と大柴はこのまま友情関係というか同志関係で良いのではないかとも思っている。
今回は2編。
「リタイア」
以前「風の渓」で出会ったアイドル・安西友梨香と、初老の作家・鷹森壮十郎がそれぞれの思いを胸に北岳に登る。途中まで夏実が同行するも、遭難の連絡により離脱。「風の渓」で遭遇した事件のトラウマを引き摺る友梨香と登山初心者の鷹森。これで何も起こらない筈はない。
タイトルが意味する通りの結末となるのか、それとも別の結末になるのかを楽しみに読んだ。ヘビースモーカーは気に入らないが、意外に頑張る鷹森は良かった。
江草隊長はまだリハビリ中で休職中。
「孤高の果て」
単独登山中に遭難死した大学生の父親が、『あんたらが息子を殺したんだ』と逆恨みする。これまでもこうしたことはあったとの静奈の邂逅だが、今回は南アルプス警察署への訴状が届く。
これまであまりスポットを浴びていなかった関真輝雄隊員の回。『いい大学』の医学部を出たという彼が、人を助けたいという思いで選んだ山岳救助の仕事。彼が助けた命はたくさんあるはずだが、むしろ心に残るのは助けられなかった命の方なのだろう。
大学生の両親のやったことは許されないことだが、気持ちは分からなくもない。しかしその思いを正面から受け止めた関と彼の妻が良かった。ちょっとあっけない終わり方ではあったが。
前の話でリハビリ中だった江草隊長が普通に仕事をしている。どちらも書下ろし作品らしいが、こちらの話の方はずいぶん前に書かれたものなのだろうか。
大柴が上手いこと絡んでくれて良かった。
関の妹・千晶は環境省の野生鳥獣保全管理官ということで、今後も関わりがあるかも知れない。
※シリーズ作品一覧 ★はレビュー登録あり
①「天空の犬」
②「ハルカの空」
③「ブロッケンの悪魔」
④「火竜の山」→「炎の岳」に改名 ★
⑤「レスキュードッグ・ストーリーズ」★
⑥「白い標的」★
⑦「クリムゾンの疾走」★
⑧「逃亡山脈」★
⑨「風の渓(たに)」★
⑩「異形の山」★
⑪「それぞれの山」本書 ★ -
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<南アルプス山岳救助隊K-9>シリーズの5冊目。
順番に読もうと思っていたが、なかなか中古本屋で見かけないので、この前見つけた文庫最新作のこの本に行ってみる。
しかし“火球に乗って北岳に落ちてきた雪男”とは、『三流SFホラー映画じゃあるまいし』P.45 といった出だし。
勿論、三流…ではなく真っ当な展開になるのだが、防衛省が出張ってきた段階でネタバレかな。
それにしても、不明生物を観光立地のマスコットにしようとする職員も、猟果に拘る猟師も、一発当てんとするYouTuberも碌なやつはいないな。
そうでなくては話が成り立たないのではあるが、そうした愚かな人間たちを“雪男”が哀れむ体の作りになって、今回は川上犬リキが頑張ったけど、全体としてアクションはあまり盛り上がらず。
とは言え、まあまあ楽しく読んだけど、終章がちょっと安易。あれだけ政治的要素が懸念される事案なら、YouTubeに投稿される前された後、ひと悶着ふた悶着あるだろうよ。
夏実と静奈が表彰される大活躍をした事件はどの巻かな? -
Posted by ブクログ
〈南アルプス山岳救助隊K-9〉シリーズ第10作。
今回はなんと『北岳に雪男出現?』の巻。
冒頭は大学生が登山中に目撃した流れ星。その後、山小屋の厨房が破られて食料が荒らされた現場から謎の白い毛玉が。そして山岳カメラマンが望遠レンズで捉えたのは白い毛に覆われた、人に似た大型の猿のような姿。この生物は何なのか、宇宙から来たのか?
荒唐無稽な話かと思ったら、そこは樋口さんのこと現実性ある話にしてくれた。
謎の生物は登山者のテントを襲ったり、特別天然記念物のライチョウを襲ったり、いつ人的被害が出てもおかしくない状況。
北岳はついに入山規制がされ、本格的に謎の生物捜索となるのだが、勿論そう簡単にはいかない。
注目を浴びたいYouTuberにやはり名を挙げたいハンターコンビが北岳に入っている。
そして進藤たちが山小屋で見つけた謎の外国人も怪しい。
今回頑張ったのは進藤がコンビを組む川上犬リキ(とヘリのパイロット陣)。小さな体で雪山を駆け臭いを辿り、自分の数十倍はあろうかという謎の生物にも立ち向かう。無理をしないで!とハラハラしたが、本当に勇敢だ。
テーマとしてはいくつかあるが、その一つ(他はネタバレになるので書けない)広河原山荘管理人・滝沢謙一が考える『命を奪うことの意味』。『食料を得る』だけではなく『生態系の維持という意味において重要な仕事』である狩猟に携わることによってより命をいただくことの重みを考えなければならない。川辺のように単なる『猟欲』で行ってはいけない。
夏実は終始謎の生物の駆除に反対していたが、単なる感情論ではなかった。どんな人間であれ救助するという彼らのぶれない姿勢が通じる相手かどうか、それは読まれてのお楽しみ。
静奈のアクシデントシーンが僅かだったのは残念だが、たまにはこういう回も良いだろう。夏実と深町の仲良しシーンがあったし。
個人的には江草隊長の体調が心配だが何とかリハビリ頑張って復職して欲しい。山岳救助隊みんなのお父さんだから。
それにしてもこのご時世にあの国が登場するとは。
※シリーズ作品一覧
(★はレビュー登録あり)
①「天空の犬」
②「ハルカの空」
③「ブロッケンの悪魔」
④「火竜の山」(文庫化の際「炎の岳」に改題)★
⑤「レスキュードッグ・ストーリーズ」★
⑥「白い標的」★
⑦「クリムゾンの疾走」★
⑧「逃亡山脈」★
⑨「風の渓」★
⑩ 本作 ★ -
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<南アルプス山岳救助隊K-9>シリーズ。
今回は二つの物語が同時進行していく。
一つは両親からの虐待ですっかり心を閉ざしている少年・悠人の話。
唯一彼を気にかけている伯母に連れられて南アルプスにやって来た縁で、一時的に両俣小屋に預けられることになった悠人。一日中ゲームをしているだけだったのだが、釣りをきっかけに小屋の管理人・加賀美叔子始めアルバイトスタッフたちとも心を通わせるようになっていく。
だが悠人の父親の会社が破産し、ヤクザとつながりのある父親は悠人にとんでもない危害を加えようとしている。
もう一つはハッカー・桜井和馬の話。
表向きは引きこもり、だが実はハッキングで多額の金を稼いでいた彼だが、ついにその犯罪がばれてしまう。
警察に追われ焦るあまりに刑事をナイフで刺してしまった和馬は、憧れのアイドルで今は山ガールとして売り出している安西友梨香が撮影をしている南アルプスへ向かう。
ここまででページの半分が終了。ずいぶん長い前置きだったが、二つの危機が同時に南アルプスへ集結したところからは樋口さんお得意の怒涛の展開だ。
今回はシリーズ作品では初めてだと思うが、ツキノワグマが二度も出てくる。
一度目は両俣小屋の管理人・加賀美叔子を襲い、二度目は物語の終盤で登場。二度目は果敢にボーダーコリーのメイが応戦する。小さなメイではどうにもならないのではと思うが、なんと勇敢なことか。
当たり前のことだが、このシリーズを読んでいると自然はただ美しいだけではないことを思い知らされる。
そして深町が大変なことになってハラハラした。まだ夏実との関係も進んでいないのに、まさかここで退場はないだろうと思いつつも心配しながら読み進めた。
だがそのことがあってかどうなのか、夏実が深町のことを人から『恋人』と言われても否定しないあたり、彼女の中で心境の変化があったのか。それとも実は知らないうちに関係が進んでいたのか。
もう一つ、静奈が今回も格好良く敵をバッタバッタとなぎ倒していくのも見せ場で良かったが、肩の小屋の管理人・小林も両俣小屋の管理人・加賀美叔子も頼もしかった。
特に叔子は携帯はもちろん、無線も肩の小屋にしか通じないという山深い場所で女性一人で小屋を切り盛りするというのは大変な覚悟と苦労だろうが、それだけの器量と度胸があって素敵なキャラクターだった。
今回も気持ちよくテンポよく読ませてもらった。
※備忘録としてシリーズ作品を挙げておきます。
「天空の犬」(2012年)(文庫化2013年)
「ハルカの空」(2014年)(文庫化2015年)
「ブロッケンの悪魔」(2016年)(文庫化2017年)
「火竜の山」(2017年)(文庫では「炎の岳」に改題2018年)
「レスキュードッグ・ストーリーズ」(文庫化も2018年)
「白い標的」(2017年)(文庫化2018年)
「クリムゾンの失踪」(文庫2018年)
「逃亡山脈」(文庫2019年)
「風の渓」(本書 文庫2020年)
「異形の山」(文庫2021年)
もし間違いあれば教えてください。