樋口明雄のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
〈南アルプス山岳救助隊K-9〉シリーズ。
「クリムゾンの疾走」の阿佐ヶ谷署の大柴が再登場。
南アルプス署に勾留中の窃盗被疑者の移送を命じられ、後輩刑事と共に車で移送中、何故か大型トラックに追突される。しかしこれは悪夢の始まりでしかなく…。
『大藪春彦の小説じゃねえんだ』
という大柴のセリフがあるが、私に言わせれば『新宿鮫』かよ!という印象。あっちは桜田商事(あるいは桜井商事?)だったかな。
つい最近、政治の世界で大いに盛り上がったあの問題が取り上げられているが、そこにここまで冒険要素を絡めるとは。
こんなことが、まさか現実にはないだろう…と言い切れないのも政治の世界に不信感が高まっているからか。だが、さすがにこれはやり過ぎかな。そもそもプロの仕事ならもう少し自然に見せるよう、上手くやるだろう。
神崎静奈のクールさと強さが光り、格好良かった。しかも体一つで闘うのだから、大柴でなくとも惚れてしまうだろう。
ただ『山岳救助隊』シリーズというには、今回は静奈がジレンマを抱えるように、何を以て『救助』というのか難しいところ。良い人は助けるが悪い人は助けないのか?
そもそも良い人悪い人とはどこで線引きするのか?
毎回悪役がはっきりしているこのシリーズだが、人間はそこまで白黒はっきりした生き物ではない。
派手な闘いを描いた割にはあっけなく終わったのがちょっと残念。
夏実を始め救助隊グループがあまり出て来なかったのも残念。
しかし大柴との絡みがこれからもあるのか、そちらは少し楽しみ。 -
Posted by ブクログ
やはり、樋口明雄氏の書く本は面白い。
冒頭から切れ目なく続く連続した緊迫感と繰り出されるアクション。
そして、静かで切なく、自然の中で、きっちりと方をつけるエンディング。
天空の犬シリーズの読者には堪らないし、天空の犬シリーズを知らない人にもお勧めできる一冊。
冒頭出てくるのは、いつもの星野夏美と神崎静奈。
天空の犬シリーズの始まりかな?と誤認するのだが、すぐに彼女たちは山を下りる。
その後、夏美は姿を消し、美しき武闘家神崎静奈巡査の戦いが始まる。
樋口氏の書く物語の背景は、いつもとてもリアル。
日本の国という組織、政治、そして警察という組織に存在する悪。そのリアルに翻弄される現場警察官と元官僚。
像絶な戦いの後にやってくる山の景色と静寂。
天空の犬シリーズが始まった時に、神崎静奈巡査はここまで重要な役割を占めていたのだろうか?
いや、彼女はきっとシリーズの中で徐々にその姿を現していき、ついにメイと夏美のコンビ抜きの物語を成立させてしまったのだろう。
天空の犬シリーズがメイと夏美の物語であるとしたら、本作品は神崎静奈の物語だったと思う。
ごめん、バロン。君は活躍したけど、静奈さんの活躍がすごすぎる。