あらすじ
田舎暮らしにスローライフはあり得ない! ――東京から自然あふれる地方に移住して20年の小説家が満を持して贈る、田舎暮らしのノウハウとダークサイド。土地探しから家の建築、移住費用、田舎ならではの生活必需品、地元民との関係、次から次へと襲いかかってくる都会ではあり得ないトラブルまで、軽妙な筆致で克明に綴るキレイゴト抜きの「田舎暮らし毒本」。本書を読まずして移住するべからず!
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Posted by ブクログ
田舎暮らしの大変さへの理解はあると思っていたが、猟師、電気柵、井戸水、放射能汚染された薪という問題は想像を超える角度と影響度で恐れ入った。
田舎を一緒くたには出来ないが、土地がどこであれ別の形で大変な問題にぶち当たるのだろう。
宮崎の美々津に住む知人や、山山口で知り合った移住者からも似た話を聞いていたし、梨の都留に住む恩人からもつい最近大変だったというエピソードを聞いているので場所や時代が変わっても苦労は変わらないというのは本当のようだ。
都会的で自由主義で個人主義な生活スタイルのままでは壁に当たるというのは大前提で、その上で地方ならでは、田舎ならでは、持ち家ならではの問題に翻弄されるのを覚悟する必要はある。
私は八丈島で青春時代を過ごしていて、当時は自然豊かで人柄も良く最高な土地だと思っていたが、後になって父に聞くと、地元の人は恐い人が多いと話していたし、大人になった今、地元で働く友人に聞けば、安定して稼げて時間も作れる仕事が全くない、と苦労している。
子供目線と大人の目線では、同じ田舎でも全く異なった世界が見えるようだ。
都会生活で得られるものは、利便性、新しい情報や人や仕事と出会えるチャンス、それに数字だ。
いわば、ゴールが大きくなる。一方でそこまでのプロセスは過酷、ないし空虚になりがち。
一方で地方生活では逆転して、プロセスに「生」を感じる、本能的な精神的満足感を得られやすいのに対し、ゴールの絶対値は低くなり、また重視もされなくなる。
過酷な目前の生活に奮闘するために地域というチームで戦う必要があり、それが故に連帯が稠密になる。そんな中では協調性、安定性が重視され、遠いゴールを見る余裕はない。
自分のタイプが、都会向きなのか田舎向きなのか。それは、自分がどのポイントにアドレナリンを感じるのか、またはそもそもアドレナリンを感じたいのか否かによって変わってきそうだ。
我が家でいえば、私と妻が対照的で、それが都市タイプ、田舎タイプで対立する。
妻が競争好きで、しのぎを削り合って自分を極限まで高めることを好み、最前線に身を置くことを楽しむ。そして興味のある人としかつるもうとしない。興味のないことや人に費やす時間は10分でも耐えられないという。
他方私は競争嫌いで、土、緑、空気、様々な人や動物や植物と触れることを好む。無機質な環境、広告、煙草の煙がストレスで、周りに音を立てないように気を遣うことが苦しい。ITを生業としているためか、その反動でオーガニックで生々しくて泥臭く野性的な環境を心身が求める。
以前青梅で畑仕事を手伝った時や、最近近所の夏祭りを手伝った時の充実感には幸福を感じた。
お互いがそれぞれ100%都市向き、田舎向きとは言えないが、生活プロセスの”楽しめる度”が高い環境は、夫婦ですらおそらく異なる。(結局は私が折れて渋々都内に住んでいるわけだが。)
著者が何年も移住先の町で近隣住民に挨拶を返してもらえなかったのが、10~20年経過してようやく打ち解けたというのは、世代が変わったのが一つの要因じゃないだろうか。
歳月を経て比較的頑なな高齢者が退場し、一方で自分が接してきた若い人たちが表舞台に立つようになった。そうした新陳代謝は無関係ではないと思う。
山梨や長野は、都内にアクセスしやすいというメリットがあり、移住者が少なくない。別荘地、旅行地としても人気がある。そんな環境は、比較的住民意識の近代化・現代化が、例えば東北、北陸、山陰などと比べれば柔軟であると想像する。
田舎には新しい風が必要だと思うし、一方で田舎の特色や伝統、それ以前の、その土地での生きる術、そういったものを移住者や旅行者は尊重することは欠かせない。
著者は、その双方の結節点を体験を以て発信できるキーパーソンだろう。
今後、限界集落のメンテナンスや地方の創生は、国防や、都市への一極集中による歪みの軽減という意味で軽視できない。
著者の知見とその発信は、もっと価値を持ってよいはずだ。
Posted by ブクログ
コロナ禍で増加する田舎暮らしの理想と現実。山梨県北杜市に20年以上暮らす作家のリアルな現実。
移住に関する費用、維持費や景観、近所付き合いなど。憧れの田舎暮らしについてまわるトラブルを具体的に記す。なかなか思ったような生活ができず、挫折する人も多いことが良く分かる。
Posted by ブクログ
大好きな作家さんの北杜市移住生活を描いたノンフィクション。ログハウス、薪ストーブ…、あこがれる人は多いが現実は甘くない。前半は移住のノウハウがいっぱいで、後半はなかなかお目にかかれないトラブル談。もともと田舎に住んでいる自分は春先から草刈り、庭木の剪定、薪づくりに忙しい。作業後のビールを楽しみに。